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日本代表・畠山健介が2度目のワールドカップを「勝つのは難しい」と捉えるわけ【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジャパンのチームリーダーの1人、畠山。いまはコンディション調整に専念か。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

今春、海外でプレーするリーチ マイケルに代わって日本代表のキャプテンを務めてきた畠山健介が、自身2度目のワールドカップへ決意を新たにした。代表チームのオフ期間中である7月3日、単独取材に応じた。

6日以降は、春先からの主要滞在先である宮崎で合宿を再開させる。12日からの北米遠征では、カナダ代表、アメリカ代表、フィジー代表などとのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)に挑む。ワールドカップでは予選プールで南アフリカ代表、スコットランド代表、サモア代表、アメリカ代表とぶつかる。

サントリー所属の畠山は、身長178センチ、体重115キロの29歳。宮城県気仙沼市生まれで、仙台育英高校時代から高校、学生、19歳以下、21歳以下、23歳以下と、その当時に活動していたさまざまな年代別代表に選ばれ続けてきた。大柄な体格ながら躍動感ある走りを繰り出し、早稲田大学入学後は「空飛ぶ横綱」の異名をとった。3度の学生王者にも輝いた。

スクラムで相手と最前列でぶつかり合う右プロップのポジションを務め、フル代表では国同士の真剣勝負にあたるテストマッチには63試合に出場(現代表メンバーでは2番目の多さ)。いまは能弁な性格でチームのコミュニケーションを円滑に進め、本来のキャプテンであるリーチ マイケルからは「彼が一番、チームの力になっている」と信頼される。

2010年度から2年間サントリーの監督を務めた現代表指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)とは、これまで約5年強、ともに仕事をしてきたこととなる。

以下、一問一答。

――春から代理キャプテンでした。

「チーム自体はリーダーグループ(フルバック五郎丸歩副キャプテンら、複数のリーダー陣)の皆で動かしているのですが、そのなかでも貴重な経験をさせてもらいました。チームをどう見なければいけないか(を、考えて行動する)。それをトップカテゴリーでするのは、はなかなかできないこと。役職がなかったら与えられたポジションの役割にフォーカスするだけでいいと思うんですけど、リーダーグループになるとどうチームを(いい状態に)持っていかなければいけないかをグラウンド内外で考えます。選手の要望をスタッフに伝えて、そのなかでのやりとりが生まれたり」

――合宿はハード。休みたい選手もいる。

「かといって時間が限られているから、やることはやらなければいけない。そのなかで、どう折り合いをつけるか…。やる時はやって、休む時にどう休ませてもらうかをリーダーグループで考えて、やってみて、改めて選手から意見をもらって…その連続ですね」

――オフにボーリング大会をしたようですが、それもその一環ですか。

「あれは僕らから提案したわけではないですけど、リフレッシュというか、疲れた選手もいるなかで何かできないか、と、エディーに相談したことはあります」

――9月からはワールドカップです。予選プールでの対戦相手は、イメージしますか。

「ワールドカップについては、8月にメンバーを発表して現地に行くなかで新しく出てくること(課題など)があるとは思う。だから、まずPNCでどう戦うかが重要になってきます。ただ、いまの段階で対戦相手の情報は入れています。週ごとに南アフリカを想定、スコットランドを想定、サモアを想定…という準備もしてきた。どう戦うか、選手、スタッフの間で少しずつ共有できてきている」

――畠山選手と同じサントリー所属の外国人選手も、相手国代表として期待されます。例えば、南アフリカ代表70キャップ(テストマッチ出場数)のスクラムハーフ、フーリー=デュプレア。故障中ながら候補入りしました。

「サントリーでプレーする外国人選手は、対戦相手とてしはやっかい。個人ごとの対策、対応は必要だと思います。特にデュプレアは、南アフリカ代表でもキーになる。そこへプレッシャーをかけ、ストレスを与える」

――ワールドカップ開催年の代表合宿。畠山選手にとっては、4年前のニュージーランド大会出場時に続き2度目の経験となります。4年前のワールドカップは1引き分け3敗。思い出すことはありますか。

「特にないですね。選手と話していて、聞かれれば答えます。食事中とかに、回想しながら経験談を話すことはあります。ただ、ふと1人になった時にフラッシュバックすることはないです」

――いまのことに集中する。

「もちろん、(前回大会の)反省を踏まえたうえで『こうしなきゃ』と考えることはあります。思い出として思い出したりはしないだけで、教科書として見直す。前回もいまと同じ準備をしていたつもりなんですけど、振り返ったら『あ、あれは違ったな』と思うことは多いです。…もちろん、やりながら『これは違う』と思うのは勇気がいることですし、やっている間はそれを信じてやるのですが。スクラムでもっとこうすれば…というものがあって、いざ(次の)本番、その場に立てばそれをやってみたいと思うことは多々あります。フィジカルをもっと上げなくては…と思うこともある。ストレングスのパーセンテージは上げなきゃいけない。今年の6月、僕は別メニュー調整が多かったんですけど、チームは試合がないなかで過酷な鍛錬をした。いい準備ができている。ただ…ワールドカップで勝つのは難しいな、とも感じます」

――対戦相手の強さ、大会の緊張感を、前回の時より現実的に捉えているゆえの発言でしょうか。

「ワールドカップは、難しい大会ですから」

――ジョーンズHCは「選手はナーバスになっている」と。

「選手がお互いにナーバスになっている、ということはありません。競争しながら、いい状態。合宿が長いことで疲れてはいると思いますけど、そのなかでは頑張っている方だと思います」

――この先の合宿。南半球最高峰のスーパーラグビーでプレーしてきたメンバーが合流します。

「彼らは責任感も強いので、もっとプレーしたいと思う選手もいるでしょう。ただ、ハイレベルな戦いで疲れはたまっていると思う。まずしっかり休んで欲しいです。ダラっと寝る、というのではなく、軽い調整から入って身体をメンテナンスして、ワールドカップに万全の状態で入ってくれれば、と。『6月、俺たちはこんなにやった。お前らもやれ』とは思わないです」

――リーチキャプテンは、チーフスのレギュラーとしてプレーしました。

「もともと、スーパーラグビーでやりたい気持ちの強い選手でしたからね。彼自身が努力していたでしょうし、起用してくれたチーフスのスタッフに感謝もしているでしょうし。リーチはリーチで頑張るとは思いますが、その分、マークもされる。彼だけになってしまわないように、他の選手もハードワークする必要がある」

――日本で初めてスーパーラグビープレーヤーとなった田中史朗も、6日のプレーオフ決勝以降に合流します。

「フミさんも、しっかり休んで欲しいです。(笑みを浮かべながら)色々あるでしょうけど、日本代表に100パーセント気持ちが切り替えられるように。…まぁ、一緒にやっている時間が長い仲間ですからね。昔から知っているフミさんです。彼を神格化している人がいるのかどうかはわかりませんが、より近くで彼とやっている選手で、そういう目で見ている人は割と少ないんじゃないですかね。親しみやすいという言い方をしてしまえば、格好が良すぎると思いますけど。ただ、相変わらずラグビーに対しての姿勢は感じます」

――改めて、6日から合宿ですが。

「ワールドカップは、出たいですから。出て、活躍したいですから。前回は出ることが目標で、活躍することにフォーカスは当てられていなかった。それで、チームとしても個人としてもいい結果は残せなかった。今度はチームが掲げている目標に対して何らかの貢献ができれば、と日々考えてやっていきます。そのためにこの1週間も、十分に休めたとは思う。まずは、合宿から頑張っていく」

――以前から、「今度の大会の結果次第で全てが決まる」といった話をされていました。

「2019年の日本大会を成功させられるかも、僕個人についても、方向性が定まるのは2015年のワールドカップ後。本当に、今年の結果次第です。どうせなら、いい方向に傾きたいと思いますね」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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