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嵐・櫻井弟が公式戦初先発 全選手取材NG? 金澤ヘッドコーチが答える【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

人気アイドルグループ・嵐の櫻井翔の弟で、慶応義塾大学ラグビー部(慶大)3年の桜井修が公式戦初先発を果たした。大学側からの要望などで全選手への取材が禁止されるなか、金澤篤ヘッドコーチ(HC)が試合の談話を残した。

関東大学対抗戦Aで昨季4位の慶大は、5月6日、神奈川・慶大グラウンドで関東大学春季大会グループBの山梨学院大学戦を33―21で制した。この日、桜井はスクラムハーフ(※)として先発も、怪我のため後半19分に負傷交代した。チームは10日、慶大グラウンドで大東文化大学(大東大)とぶつかる。

かねてから本人は取材に応じない方針だったが、この日は全選手へのインタビューまでも禁止とされた。2日に中央大学を29-24で制した折(慶大グラウンド)も同様だったようで、関係者の話を総合すると、「学校側からの要望もある」「ラグビー関係ではないメディアが立入禁止エリアに入った」との事情があった。

試合後、就任1年目の金澤HCが記者の問いかけに応じた。

――すみません、よろしいでしょうか。

「(笑顔で)はい。あのことについては、コメントできませんよ」

――(当方質問)まずは、試合を振り返っていただいてよろしいでしょうか。

「いやぁ…。観ている皆さんも感じられたと思うんですけど、慶応らしさが出なかったな、と。ほぼ1週間のうちに3試合と、きつい状態なんですけど。低いタックルと運動量。そのらしさを出そうといっていながら出ていないというのが、正直な感想ですね。向こうがゆっくりプレーしていたように見えましたが、ペナルティー(自軍ボール獲得直後)だけはこちらでコントロールができる。ここで速いテンポに…。そう話していたのですが、できなかったです。厳しい(辛い)時は、相手も厳しい。厳しい時に、どれだけ厳しい選択をするか。選手もわかっているとは思います。練習をしていくしかない」

――12-0でリードした前半はともかく、21-21で終えた後半は…。

「前半、後半、というより…。柱を貫けていなくて、リズムが崩れているんだと思うんですよね。例えばきょう、相手の外国人選手(2名先発)にやられた。ただ、そんなことよりも(次のプレーで)自分たちのやる柱を貫くべき。そこがふらふらすると…」

――(当方質問)柱、具体的に。

「しっかりとレッグタックル(相手の太腿を掴むタックル)に入るということ、ボールを動かす運動量。これは僕が勝手に思っていることですが、相手の山梨学院はゆっくり、しっかりプレーする。ラインアウト(※3)のセット(位置取り)を観ても。対してウチは、速いテンポでやりたかったのに、ゆっくりなテンポでやっていた。それでは、違いが出ない。ウチには小さい選手が多いので(速さで)違いを出したいのですが」

――(当方質問)テンポを出すには。

「自分たちがコントロールできるところで、いかに自分たちの形を出すか、です。先ほど言ったペナルティーのところでも、ゆっくり(タッチラインの外へ)出してゆっくりスタートするのではなく、速く出して速く(ラインアウトの)セットする、と。春、唯一コントロールできるのはペナルティーだと言っていたのに、それができなかった。これも結局、自分のコーチング(の責任)なんですが」

――そのテンポのコントロールをするうえでのキーポジションに…。

「(スクラム)ハーフですね」

――そこで公式戦初先発した桜井選手は、いかがでしたか。

「相手のプレッシャーを受けていたなと思います。ナンバーエイト(松村凛太郎)も初先発でしたが、彼らにはいい経験になった。きょう、メンバーを落としたわけではありません。ただ春は、上の25~30人の誰を出してもやりたいラグビーができるように強化していかなくてはいけない。(シーズンが本格化する)秋に勝つには、それが必要だと思っています」

――桜井選手がその「25~30人」に入った理由。

「プレーの安定感が強みだと思っています。それが彼の強み」

――(当方質問)全体を観ながら、プレーを選択している印象です。

「そうですね。それは、できていると思います」

――(当方質問)その後にあった、控え組同士の「B」の試合(慶大が78-5で勝利)。慶応高校出身の1年生、辻雄康選手が健闘していました。

「2試合連続でBに出たんですが、特にボールキャリー(球を持って走るプレー)のところで強みを出していた。もっと運動量を増やさないといけないし、もっとディフェンスもできると思う。これに満足せずにやって欲しい」

――次の相手の大東大は、より手応えがあります。

「そうですね。外国人がすごいとは聞いていますけど…。相手云々より、自分たちの強みを出すことです。やっている側も観ている方も、『今年の慶応のラグビーってこれだよね』と言えるように。タックルと運動量だけだと、自分は思っています」

――桜井選手の怪我は。

「ひねったとは聞いていますが、最終的なところは聞いていないです。(負傷後も)しばらくはプレーしてたので」

――彼のコメントは。

「現状、難しいと思います。それがずっとになるのかは、わかりませんが。普通の大学生ですから、ラグビー以外のことで、というのは…。できるだけ尊重していただきたいなと。自分は、プレーへのコメントはします」

――ラグビーに関する取材をしても…。

「見出しには(兄のことが)出ますからね。ただ、ラグビーをしている限り、他の選手が記事になる事だってある。そこまで、そう(極端な規制を)しているわけでないので」

――(当方質問)現状、他の選手への取材も禁止と伺っていますが。

「…それは、誰が言っていましたか? 試合が終われば、現実的には選手が何かしらコメントをしますよね。公式戦ですから…。ここは、僕も確認しておきます。いちHCなので、自分の一存では何とも言えませんが…。選手によっては気にしていただけることを嬉しいと感じる人もいるでしょうし、注目していただけることはありがたいと思うので」

※1 慶応義塾大学ラグビー部…1899年に創部された日本ラグビーのルーツ校。所属の関東大学ラグビー対抗戦Aでは通算5回、全国大学選手権では通算3回の優勝を記録している。

※2 スクラムハーフ…セットプレー(プレーの起点)や密集のふもとからボールを受け取り、周辺のスペースへ駆け込んだり後方の味方へパスをさばくのが仕事。おもに背番号「9」をつける。小回りや判断力、長いパスを放る技術などが求められる。日本人で初めてスーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)の選手となった日本代表の田中史朗もこのポジションを務める。

※3 ラインアウト…タッチラインの外にボールが出た直後の、試合を再開させるプレー。空中に投げ入れられたボールを競り合う。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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