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日本がW杯優勝を狙える領域に達するには…。権田修一「結局は本田圭佑さんが言っていた個の成長」がカギ

元川悦子スポーツジャーナリスト
宮本恒靖・佐藤寿人の両代表レジェンドと語り合った権田修一(筆者撮影)

「高いレベルにチャレンジしないといけない」と語る権田は来季どこへ?

 リオネル・メッシ(PSG)擁するアルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じた2022年カタールワールドカップ(W杯)から1週間。欧州リーグも再開し、前田大然(セルティック)や上田綺世(セルクル・ブルージュ)らがすでに新たなる戦いに身を投じている。

 一方で国内組はオフ期間。現役引退も含めて今後の身の振り方を思案していた長友佑都が来季もFC東京でプレーする可能性が高くなる一方で、谷口彰悟が9年間過ごした川崎フロンターレを今季限りで退団し、カタール1部に参戦。25日にクラブ主催の送別会に参加し、間もなく新天地に向けて出発するという。

 こうした中、権田修一(清水)も去就問題に揺れる1人。「僕は4年後、もう1回W杯を目指したくなった。目指す以上は4年間、本当に高いレベルでやれるチャレンジをしていかないといけないなと素直に思っています」とクロアチアに敗れた翌日にも語っていた。その「高いレベル」というのは、おそらくJ2ではないだろう。清水エスパルスとの契約もあるだけに、今後の動向が気になるところだ。

25日のトークショーでW杯決勝を絶賛

 渦中の権田が25日、日本サッカー協会主催のトークイベントに参加。代表レジェンドで今回のW杯開催地・カタールにも赴いた宮本恒靖(JFA理事)、佐藤寿人(解説者)両氏とともに大会を振り返った。

 壮絶な打ち合いの末、アルゼンチンがフランスをPK戦で下したファイナルについては「あの決勝を見てサッカーが面白くないって思う人がいるのかなと。僕ら日本の試合も見て面白い試合だったけど、それでサッカーを好きになった人があの決勝を見たら、今後10年間はサッカー界は安泰だろうなと思うくらいの試合でした。それと同時に僕らがこの場で戦うためにどうするべきかを考えさせられる大会でした」と彼はユーモアを交えながらも真剣な表情でコメントした。

 メッシとキリアン・エムバペ(PSG)という突き抜けた両雄がゴールを奪い合う展開は魅力的だったが、ベスト4に進んだモロッコもクロアチアも個の力は日本より秀でていた。それを権田も認めたうえで、個のレベルアップの重要性を改めて強調していた。

ドイツ戦勝利に仲間と歓喜し、結束の強さを感じさせた権田らだが、それだけでは足りない
ドイツ戦勝利に仲間と歓喜し、結束の強さを感じさせた権田らだが、それだけでは足りない写真:ロイター/アフロ

「モロッコを見ると、能力の高い選手がホントに多かった。そういう選手たちがああやって1つになって戦えば、強いのは当然。逆に僕ら日本人は1つになる国民性、ストロングを持っている。だとしたら、僕を含めて個の部分をもう一段、もう二段上げていかないといけないと思うんです。

 2014年ブラジルW杯の時にすごく印象に残っているのは、本田圭佑さんなんかが『個の力を上げよう』と言っていたこと。結局、そこに立ち返るんですよね。個が成長していくと、人間的にも成熟して、まとまるのが難しくなる。そういう状況でも今回見せられた日本人のよさである1つになって戦うことができれば、より強い集団になれると思います」

モロッコやフランスも一体感を重視。ならば日本はどうすべき?

 権田の話は確かに的を射ている。モロッコはハキム・ツィエク(チェルシー)のようにヴァイッド・ハリルホジッチ前監督と確執のあった選手もW杯では結束力を重んじ、最大限の働きを見せた。フランスにしても、ディディエ・デシャン監督が規律を重視する指揮官だったこともあり、過去に問題行動の多かったウスマン・デンベレ(バルセロナ)らもハードワークと献身性を忘れなかった。

 こうした上位国と同じ土俵で日本が戦おうと思うなら、彼ら以上の一体感を示すことはもちろん、個の部分でも同等かそれに近いレベルまで引き上げないとW杯優勝はいつまで立っても狙えないということになる。

 頂点への道はまだ遠く険しいが、権田は8年前よりも目に見える前進を感じた様子だ。

「ブラジル(W杯)の時は初戦でコートジボワールに負けて、全てうまくいかなくなってしまった。でも今回はコスタリカに負けた後、1つになれたのでスペインに勝つことができた。個の成長を追い求めると同時にチームとしてのストロングを残していくことも大事だと思います」と彼は力を込める。

「クロアチアに負けたところからスタートできる」と森保監督の続投を歓迎

 その作業を進めるうえで、森保一監督の続投はプラス要素が多いとも見ているという。

「僕らはクロアチアに負けたところからがスタートだし、また1からチームを作り直すことをやらなくていいのが監督続投の最大の利点。ここからベスト8、4、決勝にどうやっていくのかという積み上げをやりつつ、難しいアジア予選を勝ち抜いていくことが必要になってきます。

 コーチが入れ替われば難しさも出てくるでしょうし、そこを全員が理解して、今回の大会で何が足りなかったかを選手もアップデートしていくことが大事。『監督や協会がやってくれるでしょ』ではなく、選手自身が『ロシアやカタールでこういうことがあったから』と生かしていくべきだと思います」と権田は選手自身の自発的な行動やアクションが今まで以上に求められてくると考えている。

「長友さんは太陽のような人」。後継者出現を望む

 これまでのチームにはW杯4度出場の川島永嗣(ストラスブール)や長友佑都がいたが、川島は代表の一線から退くことを表明。長友も39歳まで日の丸を背負い続けていられるか分からない。特に長友に関しては、フィールドプレーヤー最年長でありながら、あれだけ率先して声を出し、髪の毛を染めてまでチーム内外を盛り上げ続けた。ある意味、道化になってまで自分をさらけ出して雰囲気を作れる人間はそうそういない。今の若い世代には見当たらないだけに、そういった人材の出現も不可欠なテーマだ。

「長友さんはホントに太陽みたいな人。(あの年齢で)髪赤くします? 成田空港に来た時から帽子で隠して、最初金にして赤ですよ。それに自分だって90分出たいのに、前半だけで交代して、ベンチの前でチームの勝利のためだけに振舞ってましたからね。食事の時もずっとポジティブでみんなを明るい方向に導いていた。ホントに長友さんが全てかなと思います」と最大級の賛辞を送っていた。

次なる長友を期待したい堂安律(右)と板倉滉(左)
次なる長友を期待したい堂安律(右)と板倉滉(左)写真:ロイター/アフロ

 今大会に参戦した若い世代の中では堂安律(フライブルク)や板倉滉(ボルシアMG)、町野修斗(湘南)らにポテンシャルがありそうだが、長友ほどの度胸はまだ見られない。何を言われても、どんな批判を受けてもエネルギーにできる、いい意味での“メンタルモンスター”がどんどん増えないと、日本代表の個の力は上がらないし、チーム力もレベルアップしない。

 2010年から日本代表にいる権田はさまざまな個性的な面々を見てきた分、伝えられることも多いはず。GKは年齢に左右されないし、今後も日の丸を背負い続ける可能性が大なのだから、ぜひともそういう雰囲気を次の代表チームに伝えてほしい。そして彼自身も個の力を引き上げ、率先して新たな代表をリードできる存在に飛躍してもらいたいものである。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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