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シントトロイデンで2トップ結成。岡崎&香川「ダブルシンジ」の逆転W杯選出はあるのか?

元川悦子スポーツジャーナリスト
新天地デビュー戦で激しく競り合う岡崎慎司(写真提供=シントトロイデン)

岡崎&香川コンビが初めて同じクラブで共闘

 8月19日の日本時間深夜にベルギー1部・シントトロイデン加入が正式発表された元日本代表FW岡崎慎司。東京五輪代表・林大地の負傷離脱で、FWの緊急補強が急務の課題となったクラブ側にコンディションや実績を認められての契約となった。

「年齢で判断されることが多い中で、自分を必要とするクラブでプレーできるのは幸せ。クラブやファン、そしてチームメイトのために自分の全てを尽くしたい」と意気込みを新たにした岡崎は、20日のオーステンデ戦ですぐさま新天地デビューを果たした。

 背番号30をつける36歳の点取屋はいきなりスタメンに名を連ねた。しかも代表で長年、共闘してきた香川真司との2トップ。岡崎本人も新鮮だったに違いない。欧州経験豊富な2人がいかにして攻撃陣をけん引するか、大いに注目された。

 最初は横並びでスタートしたが、徐々に岡崎が最前線に陣取り、香川がセカンドトップ的に動くという形が増えていく。ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代にもトップとトップ下というタテ関係でプレーしていた2人だけに、その方がスムーズに連係を構築しやすいのだろう。

立石CEOも岡崎のコンディションに太鼓判

 そんな中、岡崎は武器の鋭い飛び出しを見せるようになる。開始6分には最終ラインからのロングフィードに呼応。一気にゴール前を突き、豊富な運動量と動き出しの速さをアピールする。さらに9分には左サイドからのクロスに迫力あるヘッドをお見舞い。どちらも得点には至らなかったが、立石敬之CEOが「彼の現在のコンディションを評価した」という言葉通りのキレをアピールした。

 新戦力がもたらした活力も大きかったのか、シントトロイデンは前半17分、右CKからトニー・ライストナーが右足で先制。貴重な1点を手に入れる。これで岡崎と香川もより積極的にプレーできるようになったのではないだろうか。前半こそ目立ったシーンはなかったものの、後半突入後は2人の絡みから右の橋岡大樹に展開してゴールを窺うチャンスが増えていく。

 岡崎がタメを作り、リターンを受けた香川が大きな展開でサイドを活性化させるというプレーは有効。ゴールという結果には結びつかなかったものの、チームの新たな攻撃オプションになったのは事実だ。香川が86分、岡崎がフルタイム出場を果たし、チームが1-0で今季初勝利を挙げたことを含めて、今後に期待の持てるゲームだったと見てよさそうだ。

フルタイム出場で健在ぶりをアピールした岡崎(写真提供=シントトロイデン)
フルタイム出場で健在ぶりをアピールした岡崎(写真提供=シントトロイデン)

W杯逆転選出を諦めない!

 この日の一挙手一投足を踏まえ、「岡崎と香川の『ダブルシンジ』がカタールワールドカップ(W杯)代表に逆転滑り込みする可能性」を期待する人もいるのではないか。実際、本人たちも諦めてはいないはずだ。2018年ロシアW杯を最後に長谷部誠(フランクフルト)や本田圭佑が代表に区切りをつける傍らで、2人は「カタールを目指したい」と公言し、最高峰レベルの欧州でのプレーにこだわり続けてきたからだ。

 岡崎がウエスカ、香川がサラゴサに在籍していた2019~2020年にかけては、居住地が近かったこともあり、トレーニング器具を共有し、お互いの自宅を行き来しながらフィジカル強化に勤しんだとも聞く。だからこそ、今回、初めて同じクラブに在籍し、共闘することになったことで大きなモチベーションと闘争心を得ているに違いない。

可能性が高いのはポストプレーヤーの手薄なFWの岡崎か?

 オーステンデ戦での彼らの状態と森保ジャパンの現状を照らし合わせると、代表復帰の確率がより高いのは岡崎の方だろう。いきなりの公式戦で90分フル出場し、最後まで運動量を落とすことなく走り回れるコンディションを維持していることは大きい。

 加えて、前線での飛び出し、ゴール前の存在感も健在だ。今の日本代表は敵を背負ってターゲットになれる人材が大迫勇也(神戸)以外にはなかなか見つからないが、大型DFと駆け引きに秀でる岡崎には十分にその役割をこなせる。

 大迫が依然としてケガがちであるうえ、W杯本大会でドイツ、スペインという強豪と対戦することを踏まえても、両国でキャリアを積み重ねてきた大ベテランの仕事ぶりは見逃せない。黒子としてチームを支えられる岡崎は、やはり見逃せない存在なのだ。

 FWのライバルと目される浅野拓磨(ボーフム)や上田綺世(セルクル・ブルージュ)が今季リーグでいまだノーゴールというのも追い風かもしれない。9月のアメリカ・エクアドル2連戦(デュッセルドルフ)メンバー発表(14日予定)前の3試合で岡崎が連続ゴールを奪い、異彩を放つようなことがあれば、森保一監督も再招集に踏み切りたくなるだろう。

 指揮官も24日から渡欧し、欧州組視察をスタートさせるだけに、状況によっては真っ先にシントトロイデンに足を運ぶことも考えられる。そこで強烈なインパクトを残すことができれば、ひょっとするかもしれないのだ。

香川も復調傾向。ただ、ポジション的に厳しいか?

 一方の香川だが、現代表の基本フォーメーションが4-3-3であることを考えると、ポジション的に難しそうだ。香川もインサイドハーフはボルシア・ドルトムント時代に体験済みではあるが、あれから5~6年という時間が経過しているし、森保監督が求める守備の強度を出せるかどうか未知数と言わざるを得ない。

 代表は時間帯や相手に応じて4-2-3-1を採ることもあるが、トップ下には昨季UEFAヨーロッパリーグ(EL)王者の鎌田大地(フランクフルト)と今季赴いたレアル・ソシエダでデビューゴールを奪った久保建英がいる。現在の彼らの活躍ぶりと成長度を考えると香川の序列はやや低い。

香川も鋭い動きを取り戻しつつある(写真提供=シントトロイデン)
香川も鋭い動きを取り戻しつつある(写真提供=シントトロイデン)

 オーステンデ戦でのパフォーマンスは今季開幕以降、ベストと言えるレベルではあったが、それでもまだゴールに直結する仕事が足りない。それは高い理想を追い続ける香川自身が誰よりもよく分かっているはず。今は地に足をつけて、一歩一歩、前に進んでいくしかないだろう。

 いずれにしても、2人にとってカタールW杯は大いなる夢。それを貪欲に追い求めていく姿勢は必ず若い世代にも好影響を与えるはずだ。岡崎と香川がなりふり構わず泥臭く突き進めば突き進むほど、同じポジションの若手は「自分たちも負けてはいられない」という自覚を強めるに違いない。そういう意味で、「ダブルシンジ」にはどんどん結果を残してほしいもの。

 ここからのベテランの逆襲を楽しみに待ちたい。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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