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W杯「死の組」突破の秘密兵器はドイツもスペインも熟知するベテラン・ジョーカー?

元川悦子スポーツジャーナリスト
ロシアW杯出場を決めた4年半前の岡崎慎司と乾貴士(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

初戦・ドイツ戦で勝ち点を取れるか否かが全て

 スペイン・コスタリカとニュージーランドの勝者・ドイツ・日本…。

 4月1日(日本時間2日未明)に行われた2022年カタールワールドカップ(W杯)本戦抽選会で、ご存じの通り、日本代表はスペインとドイツが同居するグループEに入った。

 国内メディアは「死の組」と見る傾向が強いが、強豪2カ国側から見ると「序列のハッキリした組」ということになるかもしれない。だからこそ、日本としては11月23日の初戦・ドイツ戦が極めて重要になる。そこで勝ち点を奪えなければ大会が終わるくらいの覚悟を持って挑むことが肝要だ。

 コロナ禍ということで、登録メンバーが23人から26人に拡大し、交代枠も5人というのが本決まりになりそうな状況下で、やはり重要なのは森保一監督のチーム編成だ。

カギを握る森保監督のメンバー編成

 最終予選で軸を担った権田修一(清水)、吉田麻也(サンプドリア)、遠藤航(シュツットガルト)、伊東純也(ゲンク)、大迫勇也(神戸)らはそのままベースになると見られるが、彼らだけでは足りない。4年前の2018年ロシアW杯でも3戦目のポーランド戦(ボルゴグラード)で西野朗監督が大幅なメンバー入れ替えを断行し、1次リーグ突破を図ると同時にラウンド16以降の戦いに備えたが、そういうことが確実にできなければ、ベスト8という高い領域にはたどり着けない。

 3月29日のベトナム戦(埼玉)で、24日のオーストラリア戦(シドニー)からスタメンを9人入れ替え、チーム力が大幅に低下した現状では、ドイツとスペインが同居する組で2位以内を確保するのは難易度が高すぎる。だからこそ、充実した戦力を確保することを第一に考えるしかない。

 ここまでの流れを踏まえると、久保建英(マジョルカ)や三笘薫(サンジロワーズ)、上田綺世(鹿島)ら東京五輪世代の底上げは最重要テーマと言っていい。だが、何が起こるか分からないW杯本戦では、ベテランの力も重要。すでに森保ジャパンには30代の川島永嗣(ストラスブール)、長友佑都(FC東京)、吉田、大迫、酒井宏樹(浦和)といった常連組がいるが、それ以外にも視野を広げてメンバー再考を求めたいところだ。

ドイツ・スペインを知り尽くす岡崎慎司

 そこで浮上するのが、ドイツとスペイン両国でプレー経験があり、実績のある人材の必要性だ。その最たる存在が岡崎慎司(カルタヘナ)。彼はドイツ1部のシュツットガルトとマインツで合計5シーズンを過ごし、13-14・15-16シーズンには2年連続2ケタ得点を達成。ドイツの屈強な守備陣を巧みにかわしてゴールを重ねていた。

 スペインでも2019年夏からプレー。ウエスカ時代は2部と1部で1年ずつ戦い、今季は再び2部のカルタヘナで奮闘している。現時点ではリーグ27試合出場2ゴールと華々しい数字を残しているわけではなく、本人も「ゴールを量産して代表に呼び戻されるつもりだった」と昨年末のインタビュー時に語っていた。「これじゃあ、自分を呼べとは言えない」ともコメントしていたが、彼自身の状態が悪いというわけでは決してない。

 森保監督が絶対的1トップと位置づける大迫がここ数年、ケガがちで、状態が不安視されることから、代役になりうる人材を用意しておかなければいけないのは確か。すでに最終予選では浅野拓磨(ボーフム)や上田、前田大然(セルティック)らが1トップ起用されているが、百戦錬磨のDF陣相手にタメを作る仕事を求めるなら、岡崎は計算できる人材だ。ワンポイントで出しても流れを変えるだけの闘争心と泥臭さがある。W杯2得点という実績も心強い。ベンチに置いておくだけでも対戦相手の脅威になりそうだ。

ロシアW杯2ゴールの乾貴士も再浮上の可能性?

 もう1人の秘密兵器として期待したいのが乾貴士(C大阪)。彼もまたドイツのボーフム、フランクフルト、スペインのエイバル、ベティス、アラベスといったクラブで経験値を積み重ねていて、両国を熟知する人材なのは間違いない。

「イニエスタ(神戸)とはバルセロナの時には対戦したことがあるけど、日本ではまだない。顔を合わせるのが楽しみ」と2月のインタビュー時にも話していて、世界トップと同じ目線を持っている点も頼もしい。森保監督らコーチングスタッフがW杯出場や欧州でのプレー経験がない分、大国に対して過度なリスペクトをしてしまいがちだが、選手の方が堂々としていれば、浮足立つことはない。乾にはそれだけの度胸と図太さがある。

 直近の4月2日の川崎フロンターレ戦の2ゴールを見ても、ゴール前の鋭さが衰えていないのは明らかだ。とりわけ、チョン・ソンリョンに真正面に立たれた前半28分の得点シーンでは鋭い判断に股抜きシュートを選択。「ちょっとコースがありませんでしたけど、よく入ってくれたと思います」と本人も認める難しいフィニッシュを決め切ったのである。

 ギリギリの局面での高度な決定力というのは、2018年ロシアW杯での2ゴールでも実証されている。あれから4年が経ち、「もう俺も今年、34ですよ」と乾は冗談交じりに言っていたが、長年磨き上げた卓越したテクニックと冷静な判断力は衰えるどころか研ぎ澄まされる一方と言っていい。

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「ロストフの惨劇」の生き証人たちはカタールまで生き残れるのか?写真:長田洋平/アフロスポーツ

ベテランの中で本当に必要なのは誰なのか?

 今季リーグ戦で90分フル出場はないため、仮に代表復帰したとしてもスタメン要員にはならないかもしれないが、三笘や浅野らとともに異なるタイプのジョーカーとして彼がベンチにいれば、戦い方のバリエーションが広がる。何より、ドイツとスペインの面々に心理的な重圧を与えられるのが大きい。森保監督も乾を再確認した方がよさそうだ。

 その他、復調気味の香川真司(シントトロイデン)も候補には入ってくるかもしれないが、ここから来季にかけてグッとギアを上げないと代表復帰は難しいかもしれない。長友や大迫の風当たりが強まっている今、代表入りできるベテランは「特別な何か」をもたらせると多くの人に納得させられる人材だけ。香川がそのレベルまで復活してくれれば嬉しい限りだが、現状では未知数と見ていい。

 これまでメンバーに入っていた川島にしてもストラスブールとの契約は今季限りで、来季どうなっているか分からない。そういった不確定要素もあるだけに、夏以降の動向をしっかりと注視していくことが肝心だ。

 いずれにしても、カタールW杯に行けるのは、年齢に関係なくチームのために働けて、勝利に導けるメンタルの強い選手だけ。その基準に誰が該当するのか。かつて本田圭佑が「W杯のためにサッカーをやってきた」と話したように、全身全霊を込めて代表に向き合える鼻息の荒い人材にどんどん出てきてほしいものである。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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