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「ロストフの悲劇」のような喪失感。久保&堂安ら若き攻撃陣は今こそアセンシオになれ!

元川悦子スポーツジャーナリスト
U-24スペイン戦でペドリのマークをかいくぐる久保建英(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

またしても世界の高い壁に阻まれた日本

「ベルギー戦みたいなカウンターはないぞ」

 キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)は、ラスト5~10分の段階で、3年前の2018年ロシアワールドカップ(W杯)のベルギー戦(ロストフ)をともに戦った酒井宏樹(浦和)と、改めて意思統一を図っていたという。

 ところが、まさに魔の時間帯に悲劇が訪れた。スペインは温存していた切り札、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)の一振りで強引にゴールをこじ開けてきたのだ。板倉滉(フローニンゲン)の寄せがほんのわずかに甘くなったところを見逃さず、左足を振り抜けるのは、まさに「世界超一流のなせる業」としか言いようがない。

 8月3日の東京五輪準決勝(埼玉)で、日本はまたしても高い壁に阻まれ、「ロストフの悲劇」のような喪失感を味わったのである。

ロンドン五輪初戦のような戦い方はなかったか?

 森保一監督は最初からスペインとの実力差を認めたうえで、守備的戦術を選択したが、仮に2012年ロンドン五輪初戦で関塚隆監督(現解説者)が採ったように、前田大然(横浜)を最前線に据えてハイプレスをかけていくアグレッシブな戦いを仕掛けていたら、結果は違っていたかもしれない。

 とはいえ、「最後のクオリティ」という永遠の差を突き付けられたのもまた事実。守備面ではほぼ互角だった日本が敗れたのは、その1点に尽きる。ロシアWのベルギー戦で高速カウンターからナセル・シャドリ(バシャクシェヒル)に決められたシーンもそうだが、世界の強豪は研ぎ澄まされたナイフのように切り込んでくる。その迫力で日本は見劣りしたのは確かだ。

 1次リーグ3戦連続ゴールを決めた久保建英(レアル・マドリード)にしても、エースナンバー10を背負う堂安律(PSV)にしてもそこまでの決め手はないが、悲願の五輪メダル獲得のためには大仕事をしてもらうしかない。6日の3位決定戦・U-24メキシコ戦(埼玉)では、是が非でも彼らに奮起してもらわなければならないのだ。

メダル獲得へ結果が求められる久保&堂安

 7月25日の前回対戦時は、開始早々に2人のホットラインがさく裂。6分に久保が豪快な先制点を挙げると、5分後にはVARで得たPKを堂安が叩き込んだ。名手・ギジェルモ・オチョア(クラブ・アメリカ)を睨みつけ、堂々とど真ん中に蹴り込むという強心臓ぶりでチーム全体の士気を高めた。2枚看板が揃って結果を出し、2-1の勝利を手にしたわけだが、さすがに次も同じことを許すわけがない。

 彼らも準決勝・U-24ブラジル戦(カシマ)は120分戦っているため疲労困憊なのは確かだが、粘り強い守備で最後までブラジルを封じていた。PK戦でもオチョアは4本のシュートコースを全て読み、反応していた。惜しくもストップには至らなかったが、老獪さは相変わらずだ。最後の砦として日本攻撃陣の前に立ちはだかるだろう。久保や堂安としてはますます得点の難易度が上がるわけだが、ここで1段階ステップアップして、アセンシオの領域に達したいと思うなら、結果を残すしかない。

ゴールの匂いが最も感じられる久保の左足

 スペイン戦を見る限りだと、やはりここ一番でゴールの匂いを感じさせてくれるのは久保だった。ヘスス・バジェホ(レアル・マドリード)に対峙されながら、ドリブルで仕掛けてペナルティエリア左に持ち込んでシュートを放った後半34分のシーンなどは、背番号7のゴール前の鋭さがよく出ていた。

 テクニックとゲームメークに秀でた久保と同タイプの清武弘嗣(C大阪)も「彼はマジでレベルが高すぎる。技術が高くて、1対1で仕掛けられて、パスも出せるし、視野も広い。スピードもある。すげえなって思いながら見ています」と語っていたことがあるが、最後のクオリティという部分ではやはり彼が世界トップに一番近いところにいる。だからこそ、メキシコ戦ではゴールという結果を残してほしいのだ。

 大会が進むにつれて、対戦国の久保への警戒は高まる一方だ。加えて、彼自身もこれだけの強度の高い試合に中2日ペースで出続けることに慣れていないから、体力面で厳しいところがある。とはいえ、間もなく33歳になろうという吉田が満身創痍の中、5試合フル出場を果たしているのだから、20歳の若武者にできないはずがない。

堂安にはエムバペレベルの個の打開力を求めたい!

 それは堂安にしても同じことだ。スペイン戦は守備負担が大きく、時には自陣ゴールラインに下がってカバーに入ることもあるくらい、低い位置でプレーせざるを得なかったから、なかなか得点機が巡ってこないのも仕方ない。ただ、そんな苦境でも同い年のキリアン・エムバペ(PSG)ら超一流アタッカーは個の打開力でこじ開けてくることを背番号10はよく知っている。そのレベルに達するためにも、次は持てる英知を結集して挑まなければいけない。やはり今の日本攻撃陣は2枚看板にかかっている部分が大なのだ。

 もちろん彼ら以外の得点源が出現したら、それに越したことはないし、53年ぶりのメダル獲得の確率がより高まる。スペイン戦で孤軍奮闘した相馬勇紀(名古屋)にはより大きな期待が寄せられるし、不発に終わっている林大地(鳥栖)と上田綺世(鹿島)ら1トップ陣ももっとできる。爆発的スピードという武器を持つ前田大然(横浜)も延長前半12分にゴール前に飛び込んだヘディングシュートを決められなかった分、悔しさを晴らしたいという思いは強いはずだ。こうした面々が攻撃の起爆剤になってくれたら、久保と堂安にかかる負担も減る。U-24世代のアタッカー陣の底力が問われるのだ。

ホームアドバンテージを生かさなければ次はない!

 自国開催・コロナ禍・高温多湿の気候・超過密日程という特殊環境下の東京五輪はやはりホームチームが圧倒的に有利なはず。そのアドバンテージを生かさなければ、メダルは永遠に取れないかもしれない。そのくらいの強い危機感を持って、彼らにはラストマッチに挑んでほしいものだ。

 日本を表彰台に導いてくれるのは果たして誰なのか……。大いなる期待を込めて、6日の最終決戦を見守りたい。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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