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森保ジャパンに足りないピースは「ポスト本田&岡崎」絶対的エースの座は誰がつかむ?

元川悦子スポーツジャーナリスト
コートジボワール戦の南野拓実(写真:JFA/アフロ)

短期間での修正力が光った10月2連戦

 約1年ぶりの日本代表活動となった9日のカメルーン戦と13日のコートジボワール戦が終わった。2010年南アフリカワールドカップ初戦で勝利した相手と2014年ブラジルワールドカップ初戦でまさかの逆転負けを喫した相手との因縁対決になったわけだが、結果は1勝1分。長い空白期間を経て、基本コンセプトの確認からスタートすることになったチームとしては、短期間での修正力と課題改善力が光った。2戦連続無失点というのも今後に弾みがついたと言っていい。

森保監督、吉田麻也も手ごたえ

 プレスがうまくかからず、相手の後手を踏んだカメルーン戦の反省を生かし、コートジボワール戦では攻守のバランスを90分通してしっかり取り、危ない場面を防いでいた。

 キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)も「1試合目はうまくいかないことが多くて、2試合目で修正できたんじゃないかと思います。特に守備に関しては、1試合目も悪くなかったですが、2試合目はさらによくなりましたし、見てもらったら分かるように、ビルドアップ、特にゴールキックからのビルドアップだったり、スローインでボールを失う回数は1試合目の課題を2試合目でうまくクリアできたんじゃないかと思います」と確固たる前進を強調。森保一監督も「2戦目の方がよりコレクティブで、お互いの距離感もよく、相手の嫌がる守備ができていた」と高く評価した。

中澤・闘莉王コンビを彷彿させる吉田・冨安コンビ

 確かに吉田と冨安健洋(ボローニャ)の両センターバック(CB)を中心とした守備陣は抜群の安定感を誇った。2010年南ア大会の中澤佑二・田中マルクス闘莉王コンビを凌駕するレベルと言っても過言ではないだろう。8月にドイツに赴いたばかりの右サイドバック(SB)・室屋成(ハノーファー)も1対1の守備やボール奪取の部分で進化を感じさせたし、急造左SBの中山雄太(ズウォレ)も悪くなかった。中山はレフティらしく攻撃参加時には角度のないところから左足でクロスを上げるなど、長友佑都(マルセイユ)とは違った可能性も示した。これは意外な発見かもしれない。

ヤット・長谷部超えの布石を打った柴崎・航コンビ

 ボランチにしても、遠藤航(シュツットガルト)が入ったことでより安定感が増した。今夏のインタビュー時にも柴崎岳(レガネス)との同級生コンビの可能性を口にしていた背番号6も、ジェルビーニョ(パルマ)やニコラ・ペペ(アーセナル)といった世界的アタッカーを擁するコートジボワールを完封し、さらに自信を深めたのではないか。

「岳とは2人で代表を引っ張っていけるようになれればいいですね。リスペクトした上で言いますけど、日本代表がワールドカップで優勝やベスト8を超える結果を残すためには、ヤット(遠藤保仁=磐田)さんと長谷部(誠=フランクフルト)さんは超えなきゃいけない存在です」と語っていただけに、その布石を打ったのは事実。これからが一層楽しみになってきた。

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無得点に終わった前線アタッカー陣

 そんな後ろの陣容に比べると、前線は物足りなさが残った。カメルーン戦では1トップ・大迫勇也(ブレーメン)の背後に、右から堂安律(ビーレフェルト)、南野拓実(リバプール)、原口元気(ハノーファー)が並ぶ形でスタート。後半から右ワイドに伊東純也(ゲンク)を入れて3バックへ移行。大迫・南野・堂安が1トップ2シャドウの形になり、近い距離感でプレーするようになったことでリズムが出てきた。その後、シャドウの位置には久保建英(ビジャレアル)と鎌田大地(フランクフルト)が陣取ったが、得点を奪うには至らなかった。

 2戦目は鈴木武蔵(ベールスホット)が最前線に入り、2列目右に伊東、中央に鎌田、左に久保が並ぶ形で試合に突入。後半には久保と南野が交代し、一時的に左に陣取った。が、鈴木武蔵と原口が変わったことで、南野は1トップへ移動。鎌田とタテ関係を形成することになった。終盤には伊東と堂安の交代もあったが、新たな組み合わせをテストできたのは事実。その中で、鈴木武蔵と鎌田、伊東のコンビネーションが想像以上にスムーズだったのは1つの収穫だ。

鈴木・鎌田・伊東は好連携を示したが…

 その最たる形が後半13分の鎌田の2本連続シュートの場面。伊東の横パスを受け、ゴール前に抜け出した背番号9はDFをいなしてフィニッシュに持ち込んだ。この瞬間、鈴木武蔵はファーに動いて相手DFを引き付け、スペースを作っていた。彼らは代表戦で一緒にプレーした経験がほとんどないが、自然と息の合う動きができていた。

 鎌田は「僕もまだ代表5試合目だし、周りとの関係が浅いなと思ったし、あれがフランクフルトだったらもっとうまく僕のところにムリにでもつけてくれて、前を向けるシーンを作れた」と厳しい自己評価をしていたが、鈴木武蔵は「点が取れる場所に入り続けて、そこにボールが来れば、自ずと得点は取れる」と好感触を抱いた様子。彼らのような新戦力がここ一番で勝利を引き寄せるゴールを奪える存在にならなければ、森保ジャパンはもう一段階上のステージに飛躍することはできないだろう。

本田・岡崎クラスのエース出現を求む

 2018年ロシアワールドカップまでの日本代表には、厳しい局面でゴールを奪ってくれる本田圭佑(ボタフォゴ)と岡崎慎司(ウエスカ)という絶対的点取屋がいた。本田の勝負強さはワールドカップ3大会4ゴールという結果を見れば明らかだし、岡崎にしても代表50得点という歴代2位の記録を残している。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代には2人揃ってスタメンから外され、大迫や久保裕也(シンシナティ)や浅野拓磨(パルチザン)ら下の世代が得点を奪うこともあったが、ロシアで2人が見せたゴール前での鬼気迫るプレーは今のアタッカー陣には見て取れない部分。大迫が昨夏に「現時点ではロシアの時のチームの方が強いというのは断言できる」と語ったのも、こうした面々の凄さを熟知しているからだろう。

リバプールの南野が候補者筆頭か?

 日本が2022年カタールワールドカップで8強の壁を越えようと思うなら、今のアタッカー陣が彼らを上回る実績を残さなければいけない。1年前の時点では、同アジア2次予選4戦連続ゴールの新記録を達成した南野がその筆頭だと目されたが、彼も世界トップレベルと対峙すると思うようにゴールを奪えなくなる。コートジボワール戦でも後半26分にGKと1対1になったシーンを逃し、リバプールでも公式戦初得点を挙げるまでに8カ月を要している。

 それも生みの苦しみだろうが、彼には世界最高3トップと評されるロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラー、サディオ・マネの一挙手一投足を盗める環境がある。

「マネとかサラーだったら、体の大きさ的にはごついですけど、身長はあまり僕と変わらない中で、190センチある選手たちとボールキープできる強さやうまさがある。複数の選択肢を持ってファーストタッチを考えながらボールを置くことで、相手のDFが飛び込みづらくなる。そういう部分がすごく参考になります。フィルミーノも守備陣に向かって顔を出す動き方とか、次のファーストタッチのうまさがある。それを自分も意識してます」と本人も語るが、ゴールに至るアプローチに余裕を持てれば、シュート時の冷静さや余裕も生まれる。

絶対的点取屋に必要なメンタル

 それは鈴木武蔵や鎌田、堂安、久保らにも言えること。数少ない決定機をモノにするには、フィニッシュの技術はもちろんのこと、相手の激しいプレッシャーにさらされても落ち着いてシュートを打てるか。それが一番重要ではないか。

 メンタルモンスターの本田はその能力が頭抜けていたし、岡崎もゴールに飛び込むことに恐怖を感じていなかった。そういうタフネスとメンタリティを身に着け、代表のエースの座に上り詰める人間が出てこないと、森保ジャパンは大舞台で勝てない。その厳しい事実を再認識したという意味で、今回の2連戦は非常に大きな意味があった。11月に予定されるメキシコ戦では、その壁を突き破るアタッカーが出てくることを強く願いたい。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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