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森保ジャパンは年内代表戦ゼロの異常事態で何をする? 現実的な選択肢は?

元川悦子スポーツジャーナリスト
2019年10月のモンゴル戦(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

2次予選再開は早くても来年1月?

 2019年11月のキルギス戦(ビシュケク)を最後に新型コロナウイルス感染拡大の影響でストップしている2022年カタールワールドカップ2次予選。アジアサッカー連盟(AFC)と日本サッカー協会は10月再開を目指して動いていたが、10・11月の年内4戦実施を断念。2020年の日本代表戦ゼロが確定した。

 そんな中、国際サッカー連盟(FIFA)は「8月31日~9月8日に予定していたインターナショナルマッチデー(IMD)を2021年1月24日~2月1日に変更する」と18日に発表。この決定に伴い、2次予選再開は早ければこのタイミングになる模様だ。

日程消化が困難になれば大会方式の変更も?

 仮に1月と3月のIMDで2次予選残り4試合が消化できれば、6月から最終予選突入が可能になり、2022年12月開催予定のカタール本大会までに余裕を持ってアジア代表枠を決められる。しかしながら、コロナはインフルエンザ同様、冬季に流行すると見られるため、1・3月に第3波、第4波が到来していることもあり得る。本当に試合ができるかどうか分からないのも事実だ。

 日程が後倒しになればなるほど、カタール本大会までの期間は短くなる。最悪の場合、3月か6月にコロナが落ち着いている地域で集中的に日程を消化するといったイレギュラーな事態も起こり得る。場合によっては最終予選自体がホーム&アウェーからセントラル開催に変更されることも考えられる。

セントラルからホーム&アウェー方式に突如変更された98年フランスW杯最終予選

 過去を振り返っても、98年フランスワールドカップアジア最終予選が97年10月のセントラル開催から9~11月のホーム&アウェー方式に変更されたことがある。通達が来たのは7月末。8~9月にじっくり準備をしようとしていた加茂周監督率いる日本代表にとっては寝耳に水。8月のJOMOカップ(Jリーグ選抜対Jリーグ外国人選抜)を急きょ、日本代表対外国人選抜にカード変更して壮行試合を実施。9月7日の初戦・ウズベキスタン戦に挑むことになった。この最終予選が困難の連続だったことは周知の事実。幸いにして「ジョホールバルの歓喜」で本大会出場権を確保できたからよかったが、同じような混乱がないとも言い切れないのだ。

予期せぬ事態に備えるためにも10・11月は活動を!

 そういった予期せぬ展開への対応力を養うためにも、森保一監督としては10・11月のIMD期間に何らかの活動をしたいところ。「国内、国外を含めて活動する場があれば、その中で試合をするなり、キャンプをするなりしたい」と指揮官自身も熱望している。

 ただ、コロナ禍の現状では、海外組の代表選手を日本に帰国させることはできない。というのも現在、海外からの帰国者は空港でのPCR検査陰性判定の後、14日間の待機が求められるからだ。7月から本格稼働している日本代表の練習拠点「JFA夢フィールド(千葉市幕張)」近くのホテルに滞在したとしても、ピッチに出て練習や試合をすることは事実上不可能と言っていい。

 逆に国内組を海外派遣することも困難だ。国内組の候補選手だけを集めて幕張で合宿を行うことも考えられなくはないが、今季のJリーグは超過密日程で、10・11月となれば疲労が相当に蓄積される頃。あえてムリをさせずにクラブでじっくりと調整した方がベターと考えるJ関係者も多いだろう。

現実的な選択肢は欧州組合宿か?

 となると、やはり残された唯一の道は、欧州組だけを集めて現地合宿をすることだけではないか。

 その活動方法なら、森保監督、横内昭展・斎藤俊秀両コーチ、下田崇GKコーチ、松本良一フィジカルコーチら必要最低限のスタッフを現地に派遣すれば実現できる。スタッフは帰国後14日間の自宅待機が求められるが、それは問題ないだろう。そのうえで大きなハードルになるのが各クラブの許可。10・11月時点で欧州域内のコロナ流行がある程度、落ち着いているならOKを出してくれるクラブもありそうだ。場所も欧州組の多いオランダやベルギー、ドイツを選び、外界との接触を極力避けられる環境を確保してトレーニングを行えばいい。そこにシントトロイデンなどクラブチームを呼んで練習試合を組むなど、実戦機会を作れる可能性もある。代表メンバーの大半を欧州組が占めるオーストラリアやブラジルなど南米勢もしばしばこういった活動方法を取っていた。我々日本を拠点とするメディアには悩ましい話ではあるが、日本も今後は欧州合宿が最優先のチョイスになるかもしれない。

今や大半が欧州組。その現状把握が森保監督の最優先タスク

 実際、冒頭のキルギス戦を見ても、メンバー23人中、国内組は永井謙佑(FC東京)、畠中槙之輔(横浜)、佐々木翔(広島)、山口蛍(神戸)の4人だけ。彼らのポジションを埋められるU-23世代の久保建英(ビジャレアル)や堂安律(PSV)、中山雄太(ズウォレ)、板倉滉(フローニンゲン)、冨安健洋(ボローニャ)らがいるから、練習や試合をするのは全く問題ない。むしろ欧州での活動を増やした方が効率的とも言えるのだ。

 10・11月に集まり、これまで積み上げてきた戦術や連携を確認できれば、突然の予選再開に対応できる柔軟性や適応力を養える。1月にいきなり失敗できない公式戦がやってきても、自信を持って戦えるだろう。まだ新天地が決まっていない長友佑都、スペイン3部に残るかどうかの微妙な情勢になっている柴崎岳のような選手もいるだけに、森保監督がきちんと状態を把握しておくことは重要だ。

代表の空白期間を最小限にとどめる努力を!

 さらに選手たちも長い間、同じピッチで戦っていないため、キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)を中心に選手同士のコミュニケーションを取り、お互いの考えをすり合わせておくべきではないか。これだけ長い代表空白期間が生まれたことはJリーグ発足以降初めてなのだから、少しでも選手・スタッフが時間を共有して、一体感を醸成しておくこと。それは来たるべき最終予選を視野に入れても不可欠と言っていい。

 反町康治技術委員長や関塚隆ナショナルチームディレクターにはいち早く動き出してほしいし、欧州在住の藤田俊哉・高司裕也両強化部員には関係クラブとの調整を始めてもらいたい。今、やるべきなのは、空白時間をできるだけ短くすること。そのために協会として最大限の努力を払うべきだろう。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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