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寝る前にスマホやゲームをやめるコツ 子どもの睡眠問題とインターネット依存との関係

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(提供:イメージマート)

連休中は大人だけでなく子どもも睡眠リズムが崩れやすいもの。連休明け後もリズムが戻らず夜更かしが続いてしまいがちです。

また、今の時期に限らず、日本の子どもは世界と比べても夜更かしであるといわれています。現代の夜更かしの大きな原因には、ゲームや動画などのインターネットの使用があげられており、インターネット依存と睡眠障害との関連についても数多くの研究で指摘されています。

インターネット依存と睡眠習慣

日本の中学生を対象に、インターネット依存と睡眠習慣との関連を調査した研究によると、依存が疑われる中学生の睡眠時間は7時間未満であったそうです(1)。米国睡眠医学会は、最適な健康状態を保つためには、6歳から12歳の子どもであれば9〜12時間、13歳から18歳の子どもであれば8~10時間の睡眠をとることを推奨しています(2)。睡眠時間の短い子どもは、体重の増えすぎ、不安や抑うつ、学習に関する問題において高いリスクがあるという研究結果もあります。

またインターネット依存が疑われる中学生は、依存傾向のない群と比較して、週末の起床時間が遅い傾向があることも示されています(1)。平日の睡眠時間が短いと週末に寝不足を取り戻そうとします。しかし週末に遅い時間まで寝ていることで、その日の夜の寝付きが悪くなります。そこで、眠れないからとスマホで動画やSNSを見たり、ゲームをしたりする結果、さらに夜更かしをして平日の朝すっきり起きられないという悪循環にはまってしまいます。依存症が疑われる状態になっている場合は、専門的な治療や支援が必要です。

睡眠リズム改善に向けてインターネットとどう付き合うか

依存症が疑われる状態ではないものの、インターネットやゲームのやり過ぎによる夜更かしが心配だからと、その時間を減らそうと直接働きかけた場合、多くの子どもは抵抗するでしょう。ただ、睡眠の問題自体は子どものほうでも自覚し、危機感を持っていることが比較的多い印象です。そのため、日中のインターネットの時間を減らすことよりも、睡眠リズムを整えることを第一のステップにしてみるほうが取り組みやすく、改善につながるかもしれません。

もちろん、いざ早寝早起きをしようと思っても、いつもどおり寝る時間ギリギリまでゲームをしていると寝付きが悪くなりますし、眠れないからと余計に動画を見てしまう、ということも起こりそうです。そこで、寝る前にそれらを見ないために効果的と思われる4つの対策を紹介します。

なお、以下の対策は年齢に関わらずお勧めしたい方法ですが、家庭で取り入れる際は子どもの年齢に合わせて親がどこまで手助けするか調整してみてください。

1.寝る前にスマホ等の電子機器は手の届かないところに置く

だいたい就寝の1〜2時間前にはスマホやタブレット、ゲーム機などをやめるとよいといわれています。その際「視界に入らず、手の届かない場所に置く」ことが重要です。寝る前にスマホを見ることが習慣になっている場合「スマホを見たい」という考えや衝動がなくなるまではある程度時間がかかります。そのため、「スマホを見たい」という考えが浮かんだときにすぐに見られない状況を作っておく必要があります。見たいという考えをやり過ごすことを繰り返していくと、自然にその考えも消えていきます。

2.インターネットの代わりに寝る前に何をするのか決める

何か「やめる」ことは非常に難しいのですが、代わりに何かを「する」方が簡単です。例えば、ゲームや動画を見る代わりに、ストレッチやマッサージ、本や雑誌を読む、温かい飲み物を飲むなど子どもがリラックスできる別のことを取り入れてみてください。そして眠気がきたら布団に入るようにすると、「布団=眠る場所」であることを体が覚えるようになります。

3.「早寝」よりも「早起き」からリズムを整える

夜更かしが続いている場合は寝る時間を早めるよりも、起きる時間が一定になるよう子どもを起こしてあげるとよいでしょう。そして、早く起きることができたときには子どもが嬉しい気持ちになるよう工夫します。例えば、朝早く起きたときは褒める、好きな朝食を準備する、チェックリストに好きなシールやスタンプで印をつけるなど、子どもの年齢や興味関心に合わせて選択してください。

4.週末の寝過ぎを避ける

週末だからといって子どもが寝過ぎないように注意してください。できるだけ起床時間は一定に保ち、平日と比べて2時間以上ずらさないことが大切です。

また、日中は平日にできない分ゆっくりゲームをする時間をとることはリフレッシュにつながるかもしれません。ただそればかりではなく、午前中から子どもと一緒に楽しめる外出の予定を立てておくこともお勧めします。日中活動的に過ごすことで、日曜日の夜に自然と眠気が来て夜更かしを避けることができます。

「ゲームをやめて早く寝なさい!」という言葉をかけても、子どもはなかなかやめてくれないことが多いと思います。また早く寝ようと布団に入っても眠れるものではありません。今回紹介した対策を取り入れてみることで、子どもが早寝早起きをしやすい状況を作ることができます。すべて取り入れることは難しいと感じる場合は、できそうなことから始めてみてください。

〈引用文献〉

(1)Kawabe et al. (2019). Association between sleep habits and problems and internet addiction in adolescents. Psychiatry Investigation, 16(8), 581-587.

(2)Paruthi et al. (2016). Recommended amount of sleep for pediatric populations: A consensus statement of the American Academy of Sleep Medicine. J Clin Sleep Med, 12(6), 785-786.

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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