なぜレアルは現時点でエムバペ獲得に動かないのか?ケイン、オシムヘン、ハフェルツ…ベンゼマの後釜問題。
ゴールスコアラーの抜けた穴を埋めるのは、簡単ではない。
レアル・マドリーは今季終了時にカリム・ベンゼマが退団を決断。サウジアラビアのアル・イティハドからビッグオファーが届き、移籍が決定した。
■ベンゼマの後釜問題
ベンゼマは2009年にリヨンからマドリーに移籍した。その間、354得点をマークして、25個のタイトルを獲得している。
そのベンゼマの後釜を確保するのは容易ではない。だがマドリーは、その困難な“ミッション”に挑もうとしている。
筆頭候補に挙げられているのは、キリアン・エムバペだ。
エムバペは2024年夏までパリ・サンジェルマンと契約を結んでいる。しかし、1年の延長オプションを行使しない旨をクラブに通したことが明るみに出て、移籍の噂が加速している。
「誰かを攻撃する意思はなかった。クラブに書類を届けただけだ。僕の唯一の選択肢は、パリでプレーを続けること。プレシーズンで合流する準備はできている」とはエムバペの言葉だ。
「説明するところはない。僕はすべてを受け入れる。人々は批判するかもしれない。でも、僕は自分がやっていることを知っている」
■マドリーのスタンスと獲得候補
現時点、マドリーは状況を静観している。夏の移籍市場が本格的に開くのは、もう少し、先だ。マーケットの情況を見て、獲得を判断するとみられている。
とはいえ、エムバペの決定力は魅力的だ。2022−23シーズン、エムバペは41得点10アシストを記録している。
一方、マドリーのオプションはエムバペだけではない。
ベンゼマの退団が濃厚になった際、最初にメディアで名前が挙がったのがハリー・ケイン(トッテナム)だった。
以前、「自分は10番の魂を持った9番の選手だ」とベンゼマが語っていたが、ケインはベンゼマにプレースタイルが似ている。CFでありながら、中盤に降りてきて攻撃の組み立てに参加。そこから再びゴール前に出て行き、フィニッシュワークに絡んでいく。
ケインは22−23シーズン、32得点5アシストをマークしている。得点力という面でも申し分ない。
ケインのネックは29歳という年齢だろうか。そして、トッテナムのダニー・レヴィ会長は、タフなネゴシエイターとして知られている。また、マンチェスター・ユナイテッドが虎視淡々とケインを狙ってもいる。
■9番タイプのストライカーなら
39試合で31ゴールを挙げ、欧州で注目株になった。それがビクトール・オシムヘンだ。
オシムヘンは2022年夏に移籍金5000万ユーロ(約75億円)でリールからナポリに移籍。高額な移籍金は当時、話題を呼んだ。それから3年後、ナポリは得点源になったオシムヘンに牽引されて、33年ぶりのセリエA制覇。チャンピオンズリーグでもベスト8進出という結果を残している。
オシムヘンは“9番タイプ”の選手だ。サイドに落ちる、スペース・アタックといったプレーもできるが、何よりゴール前で真価を発揮する。右足、左足、ボレー、ヘディングとゴールパターンは多彩だ。マドリーのカンテラーノで、現在はアトレティコ・マドリーに所属するアルバロ・モラタに近いかもしれない。なお、オシムヘンには、バイエルン・ミュンヘンも触手を伸ばそうとしている。
■ゼロトップの可能性
オシムヘンのような“9番タイプ”とは異なるが、マドリーが関心を寄せる選手がいる。チェルシーでプレーする、カイ・ハフェルツである。
ハフェルツは22−23シーズン、9得点1アシストを記録した。190cmと長身でありながら、技術と判断力に優れる。ゼロトップ、セカンドトップ、トップ下、ウィングでプレーできる、ポリバレントな選手だ。24歳という若さも魅力である。
だがハフェルツにはアーセナルが強い関心を示している。すでに個人合意に漕ぎ着けたとの報道が出ており、移籍金8000万ユーロ(約115億円)で移籍が成立すると見られている。
「レアル・マドリーの、クラブとしての未来のプロジェクトは9番の選手を獲得することにある。ベンゼマはある程度の年齢に達しているからね」
「だがベンゼマが良いプレーをしている限り、それについて深く考えることはない。ベンゼマの好不調の波が激しい時期には、ロドリゴ(・ゴエス)、ヴィニシウス(・ジュニオール)、(マルコ・)アセンシオが成長した。FWの選手たちに関して、我々は問題を抱えていない」
22−23シーズン半ば、カルロ・アンチェロッティ監督はそのように語っていた。
最終的にはベンゼマ、アセンシオらがシーズン終了後に移籍を決断している。9番を獲得する必要性は、高まった。
マドリーはすでに、ホセル(エスパニョール/スペイン代表)のレンタル獲得を決めている。だが彼はマリアーノ・ディアスの代役で、ベンゼマのそれではない。
マドリーは9番の“キャスティング”を続ける。今年は静かな夏を過ごせそうにない。