Yahoo!ニュース

久保建英の強烈な一撃。マジョルカ の「カウンターの矢」と新システムの考察。

森田泰史スポーツライター
アトレティコ戦で決勝点を記録した久保(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

強烈な一撃だった。

リーガエスパニョーラ第16節、アトレティコ・マドリー対マジョルカの一戦。後半途中から出場した久保建英は、アディショナルタイムにカウンターから抜け出して、GKヤン・オブラクの股を抜く鮮やかなシュートでマジョルカ の決勝点を記録した。

後半途中から出場した久保
後半途中から出場した久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

「クボがアトレティコに冷や水を浴びせる」「ワンダ・メトロポリターノで久保が鐘を鳴らす」「久保が英雄的存在に」(スペイン『アス』)、「クボがレアル・マドリーの助力に」(『マルカ』)と現地メディアは久保を絶賛した。

『マルカ』の寸評では2点、『アス』の寸評では3点という採点が久保につけられた。いずれも最高点は3点。久保への評価は高かった。

■王者アトレティコの力

正直、苦しい試合だった。

ポゼッション率(アトレティコ58%/マジョルカ42%)、シュート数(14本/10本)、パス本数(411本/276本)と多くの面でアトレティコが上回っていた。

アントワーヌ・グリーズマン、アンヘル・コレア、クーニャというアタッカーを3枚擁して、【4−3−3】と【4−4−2】を可変で使いながら戦うアトレティコに、手古摺った。

得点を喜ぶクーニャ
得点を喜ぶクーニャ写真:ロイター/アフロ

厄介だったのは、コケの存在である。

コケは全体のポジションバランスを見ながらビルドアップに参加した。サイドに流れながら、2人のCBと協働して後方からの球出しを円滑にする。【4−2−3−1】を敷くマジョルカとしては、誰がコケを捕まえにいくかは難しい判断だった。

(コケロール)

先制されたマジョルカは、74分に久保、アンヘル・ロドリゲス、ロドリゴ・バッタリアを投入する。ここから少しずつ試合の流れが変わっていった。

マジョルカの課題の一つは、久保とイ・ガンインの「共存」である。

ルイス・ガルシア・プラサ監督は、久保を2列目の右に、イ・ガンインをトップ下に基本的に据えている。

左足のキャノン砲を持つイ・ガンインを中央に置き、周囲とコンビネーションできる久保をサイドに配置する。欲を言えば、この2人が自由にポジションチェンジしながら攻撃していくのが理想だ。だが久保の負傷離脱の影響もあり、そこまで連携は高められていない。現状、各々が瞬間瞬間の判断でプレーするというのが暫定解となっている。

同点に追いつき、フェル・ニーニョ(80分)、アレクサンドル・セドラール(85分)がピッチに送り込まれ、久保のポジションも目まぐるしく変わった。

久保が、このように複数ポジションの起用に対応できるのは、ビジャレアルやヘタフェでプレーした経験が大きいだろう。ウナイ・エメリ監督やホセ・ボルダラス監督の下、久保にはWG、左WG、トップ下、インサイドハーフ、トップ、右MF、左MFと多くのポジションが与えられていた。

■久保のストロングポイントと変化

久保の特徴は、ハーフスペースでのプレーだ。

トップ下や右サイドから、右ハーフスペースに流れ、そこで反転してドリブルを仕掛ける。FWやSBと連携しながらバイタルエリアやサイドを攻略していくのだ。

(久保のハーフスペースでのプレー)

ただ、アトレティコとマジョルカの力関係から、それは許されなかった。これまでの久保であれば、そこで終わっていたかもしれない。

(全2376文字)

■オブラクとの駆け引き

だが大胆不敵な20歳は、虎視淡々とチャンスを窺っていた。アディショナルタイムに入ったところで、アトレティコのセットプレーをマジョルカが跳ね返すと、中盤からシンプルにアンヘル(FW)にボールを預け、自らは前線に走り出した。

この記事は有料です。
誰かに話したくなるサッカー戦術分析のバックナンバーをお申し込みください。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析のバックナンバー 2021年12月

税込550(記事7本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

森田泰史の最近の記事