なぜメッシが7度目の“バロンドーラー”になったのか?レヴァンドフスキを退けた理由と「一年の空白期間」
パリには、リオネル・メッシの笑顔があった。
2021年のバロンドール受賞者が発表された。栄誉を授かったのはメッシ(パリ・サンジェルマン)だった。
メッシ(613ポイント)は、2位ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/580ポイント)、3位ジョルジーニョ(チェルシー/460ポイント)を振り切り、7度目のバロンドール受賞を果たしている。
「ここに戻ってこられて、信じられない気持ちだ。2年前、僕はラスト数年のプレーになるだろうと話していた。それが、再びここにいられるとは…。とても幸せで、今後のチャレンジに向けてモチベーションが高まっている。あと、どれくらいプレーできるかはわからない。だけど、できるだけ長くなるようにと願っている」とはメッシのコメントだ。
「バルセロナとパリ・サンジェルマンのチームメートに感謝したい。そして、特にアルゼンチン代表のチームメートに。過去にもバロンドールを受け取っているけど、ずっと代表の成績のことが頭にあった。だから今回の受賞はアルゼンチン代表でのタイトルによるものだと思っている」
■メッシの7度目のバロンドール受賞
史上最多バロンドーラーになったメッシは、クリスティアーノ・ロナウド(5回受賞)、ヨハン・クライフ(3回受賞)、マルコ・ファン・バステン(3回受賞)、ミシェル・プラティニ(3回受賞)といった現在と過去の名手たちをこの度の受賞で大きく引き離した。
メッシが初めてバロンドールの最終候補に入ったのは2007年だ。それ以降、最終候補から漏れたのは2018年のみ。なお、その年はルカ・モドリッチがバロンドーラーに輝いている。
ただ、2021年のバロンドールは物議を醸すものになった。
「2021年のバロンドールをメッシに与えるのは、その賞の価値を下げることになる。高いパフォーマンスを披露した選手が、勝ち取る可能性がなくなるからだ。1シーズンを通じて良いプレーをする難しさを知っているなら、それが普通ではないと分かるはず」とは1991年のバロンドーラーであるジャン・ピエール・パパンの言葉である。
「正直に言えば、まったく理解できない。当然、メッシやノミネートされた選手たちをリスペクトしている。しかし、レヴァンドフスキ以上に受賞にふさわしい選手はいなかった」と語るのは1990年に受賞したローター・マテウスの弁だ。
■2020年のバロンドールのキャンセル
無論、これはメッシが悪いわけではない。問題が起きてしまったのは、新型コロナウィルスの影響で2020年のバロンドールがなくなってしまったためだ。
ここは大きなポイントだ。バロンドールに関しては、規約8条に、「一年を通じた選手のパフォーマンス」を評価すべきとある。その一方で、規約9条には「1、その年の選手とチームの成績(タイトル数含む)」「2、選手の階級性(才能とフェアプレー精神)」「3、選手のキャリア」を評価しなければいけないとある。
規約8条に照らし合わせれば、純粋に2021年のパフォーマンスで、メッシに投票というのは合点がいく。アルゼンチン代表でコパ・アメリカのタイトルも獲得している。一方で規約9条に顧みれば、2019−20シーズンにバイエルンでチャンピオンズリーグ制覇を経験して、2020−21シーズンにブンデスリーガで41得点を挙げてゲルト・ミュラー(40得点/1971−72シーズン)の記録を塗り替えたレヴァンドフスキを軽視することはできない。
レヴァンドフスキは以前、イギリス『デイリー・メール』のインタビューで、2020年のバロンドールについて「(キャンセルを)決めるのが早かったと思う。タイトル獲得の行方は定まっていたし、多くの選手、監督、ジャーナリストは僕がキャリアでベストのシーズンを過ごしたと分かっていた」と語っていた。
近年の受賞者を見れば、メッシ(2019年/1試合平均1.2得点/1試合平均アシスト数0.4/無冠)、モドリッチ(2018年/0.1得点/0.2アシスト/CL)、C・ロナウド(2017年/0.9得点/0.3アシスト/CL)、C・ロナウド(2016年/1.1得点/0.3アシスト/CL)、メッシ(2015年/1.1得点/0.5アシスト/CL)、C・ロナウド(2014年/1.2得点/0.4アシスト/CL)と少なからずタイトル獲得との相関関係がある。
そういう意味では、2021年のバロンドールにおいては、ジョルジーニョが筆頭だったはずだ。2020−21シーズン、チェルシーでチャンピオンズリーグを、イタリア代表でEURO2020を制している。
繰り返しになるが、メッシが悪いわけではない。彼を批判するのは、お門違いである。しかしながら、今回のバロンドールの結果が腹落ちしなかったのも確かだ。ネームバリューに屈するのではなく、フットボーラーに対して正当な評価を下すべきだと、声を大に主張して本稿を締めくくりたい。