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「ネイマール・システム」と「メッシ・システム」の比較。バルサとパリSGのエース起用法を徹底考察。

森田泰史スポーツライター
パリSG対ユナイテッドの一戦(写真:ロイター/アフロ)

リオネル・メッシに追い付きたくて、彼は移籍を決断した。

ネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍したのは、2017年夏だ。契約解除金2億2200万ユーロ(約264億円)が支払われ、「世紀の移籍」が成立した。

移籍当初は苦しんだ。度重なる負傷が、ネイマールのキャリアを困難なものにした。だがトーマス・トゥヘル監督の就任後、パリSGで「ネイマール・システム」が少しずつ確立されていく。

メッシとネイマールの比較ーー。いま、そこから見えてくるものがある。

■ネイマール・システム

チャンピオンズリーグ・グループステージ第1節マンチェスター・ユナイテッド戦で、トゥヘル監督の「仕掛け」が見えた。

ネイマールを3トップの中央に置く。これは昨季から試されてきた形だ。それにより、ネイマールの守備の負担は大きく軽減される。

ネイマール・システム
ネイマール・システム

ネイマールには、「フリーロール」の役割が与えられる。ピッチ上を自由に動き回り、パスを受け、ドリブルとコンビネーションを駆使してゴールに向かう。

中盤に下がるネイマール
中盤に下がるネイマール

度々中盤に下りてきて、フリーになろうとするネイマールだが、ユナイテッド守備陣はボランチのフレッジ&マクトミニーがマークを受け渡し、またCBと協働しながらそれを許さなかった。必要とあらばタクティカル・ファールを厭わず、危険なエリアに近づく前にネイマールをストップした。

ユナイテッドの守備
ユナイテッドの守備

トゥヘル監督は試合途中に手を打った。ゲィエに代えてキーンを投入して、システムと戦術を変更する。

パリSGの可変式システム
パリSGの可変式システム

パリSGは【4-4-2】と【4-3-3】と【4-2-3-1】をスムーズに移行させながら試合を展開していく。ネイマール、エンバペ、キーン、ディ・マリアがポジションを入れ替えながらボールを受け、ユナイテッドの守備陣が乱れ始める。

前線の選手が入れ替わりフリーの選手をつくる(1)
前線の選手が入れ替わりフリーの選手をつくる(1)

とりわけ、エンバペとネイマールの役割が明確化したのが大きかった。「作る」ネイマールと、「突破する」エンバペ。この2人を止めるのは容易ではない。最後はラッシュフォードの一発に沈んだが、トゥヘル監督の戦術がより深く浸透すれば、パリSGは今季もチャンピオンズリーグの優勝候補になるだろう。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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