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台風14号 特別警報発表の基準

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
台風14号の暴風域に入る確率(出典:気象庁)

 台風14号は、刻々と九州南部に近づいています。この台風は当初の予想より発達しており、17日15時現在910ヘクトパスカルまで気圧が下がっています。

 台風の強さは気圧の低さと連動しており、この海域(日本の南、北緯25度より北)で910ヘクトパスカルまで下がるのはめったにありません。一時、910ヘクトパスカルまで下がり、九州に台風特別警報が検討されたことのある、2020年の台風10号ですら、北緯25度を超えると少しずつ勢力を落として九州に接近してきました。

暴風域に入る確率 避難は今夜のうちに

17日(土)15時現在の台風14号 雲の様子 九州から四国は外側の雲がかかり始めている(出典:気象庁)
17日(土)15時現在の台風14号 雲の様子 九州から四国は外側の雲がかかり始めている(出典:気象庁)

 タイトル画像は風速25メートル以上の暴風域に入る確率を示したものです。紫色のところは70~100%の確率で入ることを意味します。これによると九州のほぼ全域が暴風となり、時間とともにその領域は東の方(本州~四国)へ広がっていくと予想されています。(最新情報ご確認ください)

 九州南部では、今後次第に大荒れの天気になっていく見込みです。今夜(17日)の鹿児島の日没は18時22分です。夜になってからの避難は危険度が増していきますから、できるだけ早めの対応と、危険地域にお住いの方は相互にお声がけを、また遠方にお住まいのかたは電話などしていただきたいと思います。

台風による特別警報の基準

台風等を要因とする特別警報発表の基準 (出典:気象庁 赤枠加工)
台風等を要因とする特別警報発表の基準 (出典:気象庁 赤枠加工)

 気象庁は今回の台風に関連して、九州に「特別警報」を発表する可能性があるとしています。特別警報は、数十年に一回の気象災害が起こると予想される場合に発表されますが、台風の場合は、「伊勢湾台風」級を想定しています。概略で言うと、中心気圧930ヘクトパスカル以下、または最大風速が50メートル以上のもので、今回の14号はそれに該当します。

 さらに今回は、線状降水帯の発生する可能性も高まっています。

 17日午前に行われた気象庁の会見では、(過去数十年に)経験したことのない暴風・高波・高潮・記録的な大雨が発生するおそれがある、としています。

急発達の要因

海水温の様子(出典:気象庁 台風マーク加工)
海水温の様子(出典:気象庁 台風マーク加工)

 ではなぜ、これほどの急発達をしたのか。上の図は海面付近と水深50メートルの海水温です。これを見ると、台風の進行方向、九州南部付近の温度が、水深50メートルでも30度前後を示すピンク色になっていることがわかります。(台風が発達する海水温は26度~27度以上とされています)

 前回の記事でものべましたが、今年は日本近海の海水温が表面だけでなく、海面の下の方まで高いのが特徴です。したがって台風によって海がかき混ぜられても、下から暖かい海水が絶え間なく補給される状況になっています。

 海水温1度の上昇は中心気圧を10ヘクトパスカル低下させると言われ、10ヘクトパスカルの気圧低下は風速、約4~5メートルの増加につながります。

 もちろん、他にも上空の風などの要因がありますが、海水温、特に海面より下の温度が高いことが要因のひとつと言って間違いないでしょう。

 今年の台風は、例年より強まりやすく衰えにくいと考えた方がよさそうです。

参考  

9月2日掲載Yahoo!記事「50メートル下の海水温が異常に高い。台風11号発達の理由」

気象等に関する特別警報の指標(発表条件)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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