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10日(木)は東京23区でも警報級の大雪か 鉄道は5センチで運行半減・10センチで運転見合わせ

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
2月10日午前6時の東日本上空の気温の予想 出典:ウェザーマップ(スタッフ加工)

 2月10日(木)~11日(金)明け方にかけて、関東甲信では大雪になる恐れがでてきました。東京23区でも5センチから~10センチの降雪が予想されています。気象庁と国土交通省は大雪に対する緊急発表を行いました。

 タイトル画像は、日本列島の断面図です。グレーの部分は陸地を表していて、だいたい左から新潟~越後山地~東京~房総半島付近を表してます。

 縦軸は高さで山の頂上が標高約1300メートルです。そして、図の中のラインは気温を示しています。青い部分は氷点下のエリアなのでここを降ってくるものは雪、赤い部分は0度以上の気温の範囲で、雪が雨に変わってくるエリアです。

 これをみると、10日(木)朝6時は、東京上空1500m付近(赤丸)は雪で上空250mあたりまで落ちてくるとみぞれに変わりそうだと予想できます。

 しかし、雪の予想はそう簡単にはいきません。

水は0度で凍らない?

 今から300年ほど前、スウェーデンの天文学者、アンデルス・セルシウスが初めて近代的な温度目盛りを作り、そのセルシウスに因んで温度の事を摂氏(セッシ)と呼ぶようになりました。

 私たちは気温が摂氏0度で水が凍ると習いましたが、正確に言うと「水が凍る温度を摂氏0度」と後の人が決めたのです。

 ところで気温が0度だったら、すぐに水が凍るのかとなると話は別で、凍るまでに一定程度の時間がかかります。逆に言うと、気温が0度以上でも氷はすぐに融けるわけではありません。

 実はこれが関東の雪予報を複雑にしている理由です。雪は上空数千メートルで作られます。その雪が落ちてくる時、地上も氷点下なら雪は融けずにどんどん積もります。

 ところが関東地方の雪は、たいてい地上付近の気温が1度から3度くらいのことが多く、これだと地上に達するときに融けて雨になっているのか雪のままなのかが、ものすごく分かりにくいのです。

 そこで、冒頭の図です。現時点では上空250mあたりが0度くらいの予想ですが、果たしてそこから融けて落ちてくるのか否か。

 前回東京で大雪となった1月6日と比較して考えてみましょう。

今回、都心は雪なのか?雨なのか?

1月6日と2月10日(予想)の上空の気温の違い (スタッフ作成)
1月6日と2月10日(予想)の上空の気温の違い (スタッフ作成)

 図を見て分かるように、上空600m付近の気温は前回よりも今回の方が2度ほど高い予想です。前回と比べると低気圧が陸地に近いところで発生する分、気温は確かに高目になりそうです。

 こうなると、みぞれ、あるいは水分を含んだ重い雪で降ってくる可能性が高くなります。

 様々な可能性を考慮したうえで、9日現在、一番確度の高い予報は10日(木)の朝から雪になり数センチの降雪、その後、昼間は雨になるかもしれませんが、夜から新たな寒気を引き込んで再び雪になるという見立てです。

鉄道・高速道路への影響

 都心は特に雪に弱く、ほんの少しの積雪でも大きな影響が出ます。

 過去の東京の積雪時の状況から推測すると、交通機関は積雪1センチくらいで通勤・通学の足に影響、3センチで在来線は15分~30分程度の乱れ、5センチで運行本数が半分程度、10センチ積もると新幹線は徐行、その他ほとんどの路線で運転見合わせになると考えられます。

 また、すでに高速道路では通行止めの可能性が発表されましたが、首都高速道路(以下首都高)について、首都高速道路保全交通部の方にも話を伺いました。

首都高は、高架が多く普通の道路に比べ、雪が積もりやすくまた凍結しやすいのが特徴です。さらに、道路法との関連もあって首都高では「チェーン規制」をかけることができません。

このため、路面の状況によりますが、道路に1~2センチ積もったら通行止めになります。

また、積雪量が増えると首都高は排雪場所がないため、集めた雪をトラックで運搬しながら除雪作業をすることになります。2018年1月の大雪時には通行止めが全面解除されるまで丸4日、先月1月6日も丸1日かかりました。

雪が降ることが予想されるときは、チェーンの携行はして欲しいですが、首都高ではチェーンの脱着場がなく、万が一の場合は待避所でしてもらうしかありません。そのようなことを考えても、積雪が予想される場合は車の利用を控え、電車での移動や予定の変更を検討していただきたいです。

積雪時の車の移動は控えて

 さらに過去には、私の知人がタクシーで高速道路を移動中に立ち往生に巻き込まれたことがありました。

 2013年1月14日大手町で8センチの積雪を記録したときです。東名高速を横浜方面から都内に向かっていたのですが大雪で立ち往生が発生、車内に7時間以上閉じ込められました。

 途中、何度もトイレに行きたくなりましたが、もちろん近くにトイレはなく高速道路上に降りるわけにはいきません。見かねた運転手が差し出してくれたのは、ポリ袋。彼女は泣く泣くそこに用を足すはめになったそうです。

 このように、積雪時の車での移動は、さまざまなリスクを伴います。自分が冬用タイヤやチェーンを装着していても、事故に巻き込まれることもあります。

 最初にも書きましたが関東の雪、とくに雪が何センチ積もるかの正確な予報は困難です。

 とはいっても、まったく分からないわけではなく、時々刻々と変化する状況を見ながら予報は更新されていきます。雪に関しては、一度の情報を鵜吞みにせず、つねに一番新しい情報を取り入れ、特に車での移動は慎重な判断をお願いしたいと思います。

参考

首都高速道路保全交通部

大雪に対する国土交通省緊急発表

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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