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未曾有の台風30号、フィリピン直撃

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

台風30号は、日本時間正午ごろ、フィリピン南部のレイテ島を通過しました。

この台風の正午現在の気圧は、暫定ですが895ヘクトパスカルで、最大風速は65メートルとなっています。まだ、各地の実測値が入ってきていませんが、11月のこの時期に、フィリピン南部でこれだけの猛烈な台風が直撃するのは、おそらく初めてのことでしょう。

もともとフィリピンは、中国に次いで台風襲来の多い国です。フィリピンでは、台風の別名を「バギオ」と言いますが、これはフィリピン北部の都市、バギオを台風が通過することが多いために名づけられたと言われています。 昨年も、12月にミンダナオ島に台風が上陸し、1000人以上の方が亡くなるという被害が出ました。

「バギオ」という呼び名からも分かるように、フィリピンでは台風は北部に上陸することが多いのですが、今回はこれだけ強いものが南部に襲来したというのが珍しいと言えるわけです。

レイテ島を襲った台風で、私の中に記憶に残っているのは、1991年の台風25号です。この台風は、台風としては強いものではなかったのですが、大雨と洪水をもたらし土砂災害で3000人以上の方が亡くなる大災害となりました。

実はこの時、土砂災害の責任の遠因は日本にもあるのではないか、という議論がありました。というのも、当時日本はフィリピンからラワン材を大量に輸入していたからです。

ラワン材はフィリピン全土に有りますが、北部のラワン材は台風が多いので、節があったり、色味が赤くて建築材としては適していませんでした。

したがって、台風の少ない南部の白いラワン材が伐採され、レイテ島などははげ山ばかりで、それが鉄砲水を引き起こしたのです。

現在は当時と違っているのかも知れませんが、今回の台風30号は記録的な強さなので、大きな被害が心配されます。

さらにこの台風は今後南シナ海に出た後、ベトナム方面に向かう見込みです。このあたりの海水温は、まだ30度以上あり、先月よりもむしろ高くなっています。とすると、あまり衰えずにベトナムを直撃し、一昨年のタイ大水害のように、日系企業にも大きな影響を与えかねないかと心配です。

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(参考)フィリピンの主な記録的台風。

2010年10月18日  台風13号  885hPa

1978年10月26日  台風26号   895hPa

1954年 8月28日  台風08号  895hPa

【お詫びと訂正】

本記事では当初、昨年12月に「ルソン島北部」に台風上陸、と記載しておりましたが、正しくは「ミンダナオ島」でした。お詫びして訂正いたします。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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