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巨大波の到来で、7年ぶり「エディー・アイカウ」開催へ ハワイ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:イメージマート)

巨大波の到来に、ハワイ中が沸き立っています。

伝説のサーフィン大会「エディー・アイカウ(Eddie Aikau)」が、まもなく開催されるのです。世界屈指のサーファーが、オアフ島ワイメアベイに集結します。

「エディー・アイカウ」開催条件

エディー・アイカウは、「サーフィン界のスーパーボール」とも称されるほどの人気ぶりです。39年間続く大会ですが、これまで実施されたのは9回です。

なぜこれほど少ないのでしょうか。それは、厳しい開催条件にあります。

12月から3月までの冬の日に、朝8時から午後4時までの8時間、波の高さが6メートルを超えると予想されなければいけません。

たかが6メートルか、と思う方もいるでしょう。ここでいう数字は、ハワイ独特の測り方によるものです。

それは、波を背後から見た時の高さです。通常、波高とは、海岸線から波を見た時の高さをいいます。たとえばハワイ基準で6メートルであれば、日本基準では、その2倍の12メートルくらいになります。つまり、最低でも4階建てのマンションに匹敵するほどの大波がないと、エディー・アイカウは行えないのです。

ですから、前日の夜までは実施が予定されていたのに、いきなり当日ドタキャンになることも少なくありません。

(↓前回2016年に行われた大会の様子)

22日はジャイアントな波

今回の波はどうでしょうか。

実は巨大波を作る2つの要素が重なっています。

まず、当日は新月、しかも朝は満潮で海は満々と水を湛えているうえ、西から近づいてくる前線がハワイに接近するため、高波が約束されているといえます。

アメリカ気象局は”エクストラ・ラージ”レベルのうねりと、”ジャイアント”サイズの波が発生すると発表しているほどです。

左は予想天気図、右は発令中の警報 (いずれも22日、出典はNWS、筆者加筆)
左は予想天気図、右は発令中の警報 (いずれも22日、出典はNWS、筆者加筆)

”伝説”の意味

ところで、この大会の由来とは何でしょうか。それは、伝説のサーファー、エディー・アイカウ氏(1946~1978年)への追悼の意が込められています。

彼はハワイのマウイ島出身のサーファーで、大会が行われるワイメアベイのライフセーバーとしても活躍しました。500人もの人たちを助けたという、とんでもない逸話も残っています。ところが1978年に、難破した船を助けに一人船で向かい、帰らぬ人となりました。

人々が尻込みするような大波にも向かっていった彼の勇敢さは、「Eddie would go (エディーなら行くさ)」というフレーズを生み、それが大会の代名詞ともなっています。

観戦するには…

22日(日)ワイメアベイには3万~4万人の観客が押し寄せる見込みとのことです。相当な渋滞が予想されます。

そのためオンライン観戦も推奨されています。日本時間23日(月)早朝から、こちらのサイトなどで中継が見られるようです。7年ぶりのエディー・アイカウに胸が高鳴ります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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