Yahoo!ニュース

強烈寒波の到来でロシア-62.1度 "冬将軍"はこの先アジアへ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
weathermodels.com出典の気温偏差の図に筆者加筆 (10日)

世界でもっとも寒い国ロシアを、強烈な寒波が襲っています。

8日(日)には、東部Oymyakonで-59.3度まで気温が下がって、1月としては5年ぶりの低温となりました。

9日(月)には、北部Olenyokで-60.0度まで下がって、54年ぶりの-60度台となりました。

10日(火)には、北部Dzalindaで-62.1度まで下がり、1月の最低気温記録を塗り替えています。

モスクワでも、日最低気温が-20度台の日が4日も続きました。これは平年より10度以上も低い気温で、有名な赤の広場のアイスリンクも閉鎖されたもようです。

記録的暖冬から一変

数十年ぶりともいえる強烈な寒気に覆われるロシアですが、年末年始は記録的な高温となっていました。

1月1日のモスクワの最高気温は、3月下旬並みの6.2度まで上がって、観測史上もっとも暖かな元日だったのです。同じ日、ヨーロッパの8か国が、1月の国内最高気温を更新しています。

ところが8日(日)朝には、モスクワで-23.0度まで気温が下がりましたから、1週間で30度近くも気温が下がったということになります。

「冬将軍」の行方

この寒波の一因は、ジェット気流の大きな蛇行です。寒気と暖気の境目を吹くジェット気流が、ロシア上空で南に垂れ下がり、北極から強烈な寒気が降りてきてロシアに流れ込んでいます。

この寒気の中心は、今後東へと移動していき、中央アジアやモンゴル、中国などに広がっていきます。

キルギスタンなどでは最低気温が-20度を割り込む見込みで、中央アジアでは記録的な低温となる可能性も出ています。

寒気は、その後弱まりながら東へと広がって、モンゴル首都では-36度、ウラジオストクでも-20度まで下がる予想となっています。そうして来週にかけては、朝鮮半島や北海道にもやってくるようです。

冬将軍は東へと進路を進め、アジアに勢力を広げていきます。

中央アジアと北東アジアの日最低気温の予想 。紫は平年より15度以上低い。(Accuweatherの予報を元に筆者作成)
中央アジアと北東アジアの日最低気温の予想 。紫は平年より15度以上低い。(Accuweatherの予報を元に筆者作成)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事