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「冗談よして」と言わんばかりの嵐が、アメリカで猛威を振るう

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

「冗談よして」と言わんばかりの嵐ー。

州当局がこうツイートをしたくらい、まじめに恐ろしい低気圧がアメリカで猛威を振るっています。この低気圧は北部などで猛吹雪を起こしている一方、南部では多数の竜巻や巨大な雹を発生させています。

詳しく見てみましょう。

177cmの大雪

タイトルの写真は、13日(火)の衛星画像です。アメリカ中部に低気圧の中心があり、その北で猛吹雪となっています。この低気圧はアメリカ西部からゆっくりと進んできて、急速に発達したものです。

ユタ州ではたった2日間で、50センチ以上の雪が積もりました。そこで撮られたのが、下の早回し映像です。まるでオーブンで焼かれたスポンジケーキのように、雪がどんどん高くなっているのがわかります。

交通障害も広く発生していて、たとえばコロラド州では州の4分の1のエリアの道路がすべて閉鎖されたそうです。

またアイダホ州では死亡事故も起きて、13日(火)スキーヤー1人の遺体が雪山で発見されています。

これまで観測されている雪と強風の記録は下記のとおりです。

【降雪量】(11日から14日朝)

カリフォルニア州シエラアットタホ:177cm

ネバダ州マウントローズ:121cm

アイダホ州ケッチャム:91cm (暫定値)

ユタ州アルタ:79cm (暫定値)

【最大瞬間風速】

カリフォルニア州ヘブンリースキーサミット:秒速46メートル

南部で竜巻

一方、猛吹雪をもたらしている低気圧から延びている寒冷前線に沿って、竜巻や雷雨も起きています。まるで冬と夏がアメリカに同居しているようです。

13日(火)には、南部の3州で12件の竜巻が報告されました。中でもテキサス州やルイジアナ州では、多数の家屋や建物が被害を受け、25人以上が負傷しました。うち2つの竜巻の強さはEF2(上から4番目に強いクラスの竜巻)で、推定される最大瞬間風速は秒速55メートルにも達しました。

またテニスボールサイズの巨大な雹も観測されています。

いつまで続く?

この嵐はいつまで続くのでしょうか。

低気圧と寒冷前線の動きが非常に遅いため、北部の雪、南部の雷雨ともに、少なくとも15日(木)までは警戒が呼びかけられています。

大規模災害の統計

ところで今年アメリカでは、10億ドルを超える経済損失を出すような大規模な気象災害が15件発生しています(10月12日時点)。

内訳は、干ばつ、洪水、山火事(それぞれ1件)、ハリケーン(2件)、そして暴風雨(10件)で、死者数は342 人に及びます。

15件というのは、過去30年間の平均(7.7件)と比べるとかなり多いですが、直近5年間の平均(17.8件)で見ると、ほぼ等しい数字です。

近年こうした大規模な気象災害が多発しており、過去最悪の年は2020年、それに続くのが2021年でした。

2022年に発生した経済損失額10億ドルを超える気象災害 (9月時点)、出典はNOAAとアメリカ合衆国商務省
2022年に発生した経済損失額10億ドルを超える気象災害 (9月時点)、出典はNOAAとアメリカ合衆国商務省

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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