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シベリアで-50.9度記録 寒気と暴風が東アジアを直撃

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
寒さのイメージ図(写真:イメージマート)

日本で本格的な冬が始まろうとしています。

1日(木)にはいよいよ札幌で真冬日が予想されているほか、福岡の気温が一桁台に下がって、今年2月下旬以来の寒さが到来する見込みです。

シベリアで今季最低-50度台

その寒気が吹きだしてくる大陸では、いま真冬並みの気温が報告されています。

27日(日)には「世界の寒極」と称されるロシアのオイミャコンで、朝の気温が-50.9度まで下がりました。北半球における今季最低気温です。

寒気は南東に広がり、28日(月)には中国・新疆ウイグル自治区で-46.4度を記録しました。

強烈な暴風と共に

この寒さは、突然やってきました。新疆ウイグル自治区では、前日との日最高気温の差が22度にも達したのです。その急激な寒さをもたらしたのが強烈な北風で、スーパー台風並みのとんでもない暴風も観測されたそうです。猛吹雪や砂嵐が起きています。

中国内陸部の空には、太陽が3つもあるように見える「幻日」が見られました。この現象は、凍りついた空気中の水蒸気が太陽光を反射することで起こります。さらに滝の水は凍りつき、巨大なツララになりました。

Weathermodel.com出典の気温の予想図に筆者作図
Weathermodel.com出典の気温の予想図に筆者作図

東アジア各地で気温大幅ダウン

この大陸の冷たく重い空気は、沈み込んで空気を圧縮し、高気圧を作ります。シベリア高気圧です。このシベリア高気圧が東へ張り出してくるとともに、寒気はどんどん南下して、朝鮮半島や日本に迫っています。

下は12月1日(木)にかけての、日最高気温の推移を表しています。

北京では、29日(火)には日中の気温が氷点下に下がって、前日との気温差は16度になると予想されています。また30日(水)にはロシアのウラジオストックや、朝鮮半島、北海道などでも気温が10度近くも急降下します。

上海は11月になっても20度近くという、およそ晩秋らしからぬ異様な高温が続いていましたから、この極端な気温差はとりわけ身にこたえるかもしれません。

気象庁、中国気象局、weatherstackの予報を元に筆者作成
気象庁、中国気象局、weatherstackの予報を元に筆者作成

ヨーロッパも寒い

これまではシベリア高気圧の東側の話をしましたが、反対側の西側に覆われる地域もまた、著しい寒さに見舞われています。

停電や極端な電力不足に陥っているウクライナもその一つで、1日(木)のキーウの最低気温は-6度になると予想されています。しかも来週前半には一段と強い寒気が入り込んで、-10度近くまで冷え込む恐れすらでています。いち早く平和が戻ってくることを願わずにはいられません。

イギリス気象庁出典の11月28日の予想天気図に筆者加筆。右上にシベリア高気圧の一部が見えている
イギリス気象庁出典の11月28日の予想天気図に筆者加筆。右上にシベリア高気圧の一部が見えている

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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