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ズボンも凍る「記録的寒波」の米国 南部は大停電・断水でウミガメも避難

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
17日積雪状況(NOAA/Office of Water Prediction)

北は北海道、南は沖縄とほぼ同じ緯度に位置するアメリカ本土ですが、今そのほぼ全土が強烈な寒波に見舞われています。平年のこの時期の気温を25度(摂氏)も下回るような寒気と、降り続く大雪に襲われているのです。

16日(火)にはアメリカ本土の73%の面積が雪に覆われました。これは2003年の統計開始以来最大とのことです。

シカゴの国際空港では、9日間連続で雪が観測され、すでに観測史上最長タイの記録となりました。

122年ぶりの最低気温

気温の方はどうでしょう。CNNによると、7日間で1381もの最高気温の最低記録が更新され、535の最低気温の最低記録も塗りかえられたようです。

今回の寒波が例年を大きく異なるのは、テキサス州やオクラホマ州といった、普段は温暖な地域にも氷点下の寒気が覆っている点にあります。

たとえばオクラホマシティの2月の平均最低気温は0度ですが、16日(火)にはマイナス25.6度まで下がって、1899年以来、つまり122年ぶりの低温となりました。またテキサス州のダラス・フォートワースではマイナス18.9度まで下がって、観測史上2位タイの最低気温となっています。

その他観測された気温は下記の通りです。

・ファエットビル(アーカンソー州) 、観測史上最低のマイナス29度

・ヘイスティングズ(ネブラスカ州) 、観測史上最低のマイナス35度

停電

この寒さの中、テキサス州では480万人が停電に見舞われており、多くの住民が3日間も暖房のない生活を強いられています。下の写真の様に、トイレも天井のファンも凍る室内で、人々は毛布をかぶって震えながら毎日を過ごしているのです。

事故も相次いでおり、暖炉が原因とみられる火災で祖母と3人の幼い子供が亡くなったほか、車内で暖を取っていた母親と女児が一酸化炭素中毒で命を落としたという悲しいニュースもありました。

断水

そのうえ停電と水道管の破裂などが原因で、断水がおきています。さらに悪いことに「ボイリングウォーター・アドバイザリー」、すなわち「お湯勧告」が発令されています。

かりに水が出たとしても、水道水がバクテリアなどで汚染されている可能性があるために、ミネラルウォーターか、水道水でも必ず沸騰させたものを飲むようにと注意が促されているのです。2分程度は水を沸騰させる必要があるようです。しかし停電でお湯を沸かすこともままならず、雪を集めて飲み水にしている人も少なくないようです。

ウミガメの救出

こうした不自由な生活の中でも、カメの救出に尽力する人たちもいます。ウミガメは水温が10度を下回ると「コールド・スタン」と呼ばれる現象が起きて、動けなくなり死に至るケースがあるといいます。テキサス州サウスパドレ島では、これまでボランティアなどによって数千匹のカメが救助され、室内に集められています。しかし避難所でも停電が起きており、予断を許さない状態が続いています。

冷凍ズボンに挑戦!

寒波、断水、停電の三重苦に喘ぐアメリカ南部に対し、北部では寒さを楽しんでいる人たちもいるようです。

フローズン・パンツ・チャレンジ」、いわゆる「冷凍ズボンに挑戦!」と題した企画がSNS上で盛り上がりを見せています。これは何かというと、氷点下の気温でコチコチに凍ったズボンを雪の上に立たせるのです。作り方は、ズボンを水に浸し、外に干すだけ。これで早ければ数分後に直立するそうです。あの手この手を使って、個性的な冷凍ズボンが作られています。

冷凍ズボン計画は、もともと2019年にミネソタ州ミネアポリス在住のトム・グロッティングさんが始めたのがきっかけです。トムさんが、冬は寒すぎて家に閉じこもる他に何もすることがなかったので、このアイディアを思い付いたのだそうです。マイナス18度以下ならば、いい具合にズボンが立つのだとか。

寒さで苦しむ南部と、楽しむ北部。アメリカは南北でずいぶん事情が違うようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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