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春のオーストラリアに記録的熱波、シドニーで43℃

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
28日のオーストラリアの気温。中部では47℃超え。(出典: 豪州気象局)

本来であれば、オーストラリアの今頃は「晩春」にあたり、過ごしやすい天候が続きます。ところが現在、記録的な熱波が到来し、真夏をしのぐ暑さが襲っています。

28日(土)シドニー空港で最高気温が43.0℃まで上昇しました。この時期の平均を15℃以上も上回る気温です。同地点の11月の最高気温記録にあと0.4℃に迫る高温でした。

暑さは夜になっても収まりませんでした。シドニー・オブザーバトリーヒルでは29日(日)朝の最低気温が25.3℃と、日本でいう熱帯夜となりました。これまでの11月の最低気温の記録は1967年の24.8℃ですから、それを0.5℃上回って、観測史上もっとも高い最低気温であった可能性があります。

熱波はシドニーを含めオーストラリア広範を襲っており、各地で灼熱の高温が観測されています。豪州気象局によると、28日(土)観測された気温は下記の通りです。

マーリー(サウスオーストラリア州) : 47.5℃

ロックスビーダウンズ(サウスオーストラリア州) : 47.4℃

バーズビル(クイーンズランド州): 46.4℃

ファウラーズギャップ(ニューサウスウェールズ州): 46.2℃

ミルデュラ(ビクトリア州): 45.7℃

暑さは29日も

この本格的な暑さは29日(日)も続きます。

シドニーでは、朝6時の時点で気温が30℃を越えました。繰り返しますが、今はまだ春です。日中の気温は40℃と予想されており、2日連続で40℃台に達する可能性が高まっているのです。

これはどれほど珍しいことなのでしょうか。

ウェザーゾーンによると、シドニーで2日連続40℃台に達したことは、これまで一度しかなかったようです。それは1960年1月のことで、26日に41.1℃、27日に42.4℃まで上昇しました。

つまり、もし29日(日)も40℃を越えれば60年ぶりのこととなります。しつこいようですが、今はまだ春。前述の気温は盛夏での記録ですので、春としては観測史上もっとも暑い2日間ということになります。

暑さの原因と期間

この暑さの原因は何でしょうか。それはオーストラリア東部沖に中心を持つ高気圧が、反時計回りの風の流れをもたらしていることにあります。その結果シドニーなどでは北西の風が吹き、大陸中心部の砂漠の熱い空気が流れ込んでいるのです。

29日(日)は寒冷前線が接近し、東部ではさらに風が強まって暖気が流れ込みます。

では暑さはいつまで続くのでしょうか。この寒冷前線が通過すると、南からの冷たい空気(南半球なので、逆です)が流入して気温が大幅に下がります。シドニーの30日(月)の予想最高気温は24℃ですから、一気に15℃以上も下がり、平年並みに戻る見込みです。

山火事のリスク

記憶に新しいかと思いますが、昨年のこの時期オーストラリアでは前代未聞の山火事が発生し、多数の死者や野生生物が犠牲になるといった悲劇が起こりました。

焼失面積は四国に相当する18万平方キロメートルに及びました。命を落としたコアラの数は、たとえばニューサウスウェールズ州では州全体の生息数の3分の1に当たる5000頭ともいわれています。

今年はラニーニャの影響もあり、幸い10月までは雨が多い日が続いていたようです。しかし11月になってからは、東部の広い範囲で例年の2割ほどしか雨が降っておらず、そうした中で今季初めての熱波が到来したというわけです。

今回は一時的な暑さであるものの、本格的な高温シーズンを前に心配が募ります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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