Yahoo!ニュース

大西洋に「シータ」発生 観測史上最多のハリケーン年に

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
5つの渦が発生した9月の大西洋 (出典: NOAA)

太平洋西部では22号台風が発生していますが、大西洋では今年29号目となる「シータ(Theta)」が渦を巻いています。

太平洋の台風の個数が、大西洋のそれを下回ることは通常まずありませんが、今年は稀なことが起きてしまっているようです。大西洋で29号が発生することは、観測が始まって以来初めてのことです。

大西洋の今年のハリケーン名リスト (筆者作成)
大西洋の今年のハリケーン名リスト (筆者作成)

シータはどんな嵐?

シータは、ハリケーンよりも一段階弱い「トロピカルストーム」の勢力、つまり「台風」と同じ強さです。

幸い海上にとどまり、温帯低気圧に変わる見込みです。ただそのままポルトガル領のマデイラ諸島などを直撃するおそれがあります。

アメリカ国立ハリケーンセンター出典のシータの予想進路図
アメリカ国立ハリケーンセンター出典のシータの予想進路図

イータはアメリカへ

シータのひとつ前に発生した28号の「イータ(Eta)」は、日本時間12日(木)にもフロリダ北部に上陸する見込みです。

イータはとんでもなく迷惑なハリケーンで、4日(水)ニカラグアに史上最大級のクラスで上陸したのち、グアテマラで50人以上が巻き込まれる土砂災害を引き起こしました。その後キューバにも上陸して600ミリの雨を降らせ、9日(月)にフロリダ南部に上陸しました。

弱まると思いきや、メキシコ湾の温かい海上で勢力を維持し、まもなくフロリダに再上陸するもようです。

イータの上陸で、アメリカは今年12個ものハリケーンやトロピカルストームが直撃したことになります。前代未聞の上陸数です。

アメリカ国立ハリケーンセンター出典のイータの予想進路図
アメリカ国立ハリケーンセンター出典のイータの予想進路図

イオタも発生へ

今やもう11月。通常大西洋は穏やかになるこの時期ですが、まだまだ嵐が発生する兆しがあります。

現在大西洋に雲の塊が見えています。これが5日以内にトロピカルストームになる可能性が90%に高まっています。発生すれば名前は「イオタ(Iota)」となります。

アメリカ国立ハリケーンセンター出典の図に筆者加筆
アメリカ国立ハリケーンセンター出典の図に筆者加筆

ハリケーンの名前の付け方

このように現在大西洋に発生するハリケーンなどには、ギリシャ文字のアルファベットが付けられています。これは事前に用意されていたすべての名前を使い果たしてしまったからです。

本来は、マイケルやローラのような21個の人名が用意されていて、発生した順に命名されていきます。

リストは6年分あり、6年おきに同じ名前が登場するのですが、大きな被害を出したハリケーンの名前は以後使われなくなります。

ただ過去には被害が出ていなくても、意外な理由で名前が消されてしまったことがありました。

それが「アイシス(Isis)」です。

2015年「イスラム国」の略称「ISIS」を連想させ不適切であるという理由から、世界気象機関が名前を取り下げたことがあります。代ってつけられたのは「イベット(Ivette)」でした。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事