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オーストラリア史上最暑日を記録。なぜそんなに暑いのか?

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
オーストラリアの山火事で赤く染まる太陽(写真:ロイター/アフロ)

メガファイア」と称される深刻な山火事が起きているオーストラリアに、追い打ちをかける事態が発生しています。現在、前代未聞の熱波が襲っており、12月17日は国内史上もっとも暑い一日となりました。猛暑はこの先も続き、さらなる被害が心配されます。

東京都12個分の広さに相当する森林が焼け、2,000頭のコアラも犠牲になったと報道されているオーストラリアの山火事ですが、とても残念なことに、火の気が収まる見込みは当分ないようです。

現在オーストラリアは、大熱波に見舞われています。

先週は西部パースで、史上初めて3日連続して最高気温が40℃を超えました。今はその熱波の中心は東に移動していて、17日に南部セデューナで46.5℃、中部バーズビルで46.1℃、18日は南部ミニパで46.2℃となりました。いずれも平年を15℃ほど上回る高温です。

17日は、国内の全観測地点の日最高気温の平均が40.9℃となって、観測史上もっとも暑い一日となりました。なお、これまでの記録は2013年1月7日の40.3℃でした。

暑さの原因

熱波の原因は何でしょうか。

短期的な理由としては、高気圧の影響があります。現在オーストラリアには高気圧が居座っていますが、この高気圧から流れる反時計回りの風が、砂漠の灼熱の空気を広く送り込んでいるのです。

また長期的な理由としては「インド洋ダイポールモード現象」と呼ばれる、海水温の変化があります。これはインド洋東部と西部の海水温が、シーソーのように高くなったり低くなったりする現象ですが、今年は西部の海水温が高くなり、逆にオーストラリアに近い東部の海水温が低くなっています。

今年のインド洋ダイポールモード現象は、この現象が観測されるようになって以来、最大規模ともいわれています。このためインド洋西部ではスーパーサイクロン「キャー」をはじめ、強力なサイクロンが次々に発生したほか、アフリカ東部では洪水が多発しています。一方でインド洋東部では雨が少なく、オーストラリアやインドネシアなどで高温・干ばつが起きているのです。

国内史上最高気温の記録更新も

この暑さはいつまで続くのでしょうか。

オーストラリア気象局の予想を元に筆者作成。単位は℃。
オーストラリア気象局の予想を元に筆者作成。単位は℃。

上は21日までの最高気温の予想です。この先も40℃超えの暑さが続き、首都のキャンベラに至っては12月の最高気温どころか、観測史上最高気温を記録する恐れも出ています。

また内陸の一部では、49~50℃まで気温が上がる見込みで、オーストラリア全土における国内最高気温記録の50.7℃を超える可能性もあります。

今はまだ夏が始まったばかりです。まだ夏至すら来ていません。この先、さらに強い熱波が襲ってもおかしくないのです。オーストラリアの今年1月から11月の気温は、110年間の記録の中で2番目に高くなっています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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