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「ハリケーン・フローレンス」米ノースカロライナ州に上陸 

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
上陸時のレーダー (提供:National Weather Service)

追記(9/18):ハリケーン・フローレンスによる雨量はノースカロライナ州エリザベスタウンで913ミリに達し、ハリケーンによる雨の記録では州史上最大となりました。

現地時間14日朝、ハリケーン・フローレンスがノースカロライナ州に上陸しました。すでに多くの場所で洪水が発生しています。フローレンスは今後もゆっくりと内陸を進むため、週末にかけて記録的大雨や高潮のおそれが続きます。

フローレンスの現況

ハリケーン・フローレンスは現地時間14日(金)朝7時(日本時間同日20時)に、最大風速42メートルの「カテゴリー1(5段階のハリケーンの階級で最も弱い)」の勢力で、ノースカロライナ州ライツビルビーチに上陸しました。

同州にハリケーンが上陸する頻度は約4年に1度(1857年~2018年)で、前回の上陸は2014年(Arthur)のことでした。

これまでの被害

これまでのところノースカロライナ州のアトランティックビーチで563mmの大雨、デービスで48メートルの最大瞬間風速、海岸で3メートルの高潮が観測されています。また43万世帯(14日8時時点)で停電が発生していると伝えられています。

さらに大雨や高潮により、川や海の近くで洪水が発生しています。地元のテレビ局(WCTI)も水に浸り、スタッフが避難しているもようです。

今後のフローレンスの動き

(提供:National Hurricane Center)
(提供:National Hurricane Center)

フローレンスは大西洋を西進しアメリカに上陸、その後もそのまま西に進むという奇妙な動きをしています。1857年以来このような動きをしたハリケーンは一つもありません。

しかもフローレンスは上陸直前から急速に速度を落とし、今後もゆっくりと内陸を進む見込みです。現地時間16日(日)にかけてのおよそ3日間、アメリカ南東部では嵐が続くおそれがあります。

【記録的大雨】

National Hurricane Center提供の雨予想に筆者加筆
National Hurricane Center提供の雨予想に筆者加筆

予想される雨量は最大で1,000ミリに及びます。これは年間降水量の約7割に匹敵し、またこれまでのノースカロライナ州におけるハリケーンの雨の記録である611ミリ(1999年)を大幅に上回ります。

Weathermodels.comのMaue氏によると、フローレンスによる総雨量は10兆ガロンにのぼる可能性があり、これはオリンピックサイズのプール1500万個以上の水量に匹敵するということです。

【記録的高潮】

NASAの衛星画像に筆者加筆
NASAの衛星画像に筆者加筆

もう一つ心配されるのが高潮です。

海岸に吹き寄せる強風と低い気圧により、海岸線では3メートル以上の高潮が予想されています。

ノースカロライナ州の多くの海岸線は、砂や礫でできた細長い低地の島(バリアー島)から形成されています。さらにこうした場所はリゾート化されており、多くの建物が建てられているため、高潮の被害を受けやすくなっています。

洪水や浸水に関しては、上陸後のこれからが、より危険な状態となることが予想されます。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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