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センバツ出場校決定! 21世紀枠選考で大きな変化があった? 激戦地区で明暗を分けたポイントとは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ出場校が決定。震災禍の石川から2校が選ばれ、活躍が期待される(筆者撮影)

 センバツ出場の32校が決まった(タイトル写真)。概ね予想通りの顔ぶれとなったが、21世紀枠に関しては、候補に挙がっていた地域を代表するような名門校に吉報は届かず、「実力重視」を色濃く反映した選考となった。

一般枠全体としては平穏な選考会

 一般枠で難航が予想された東北、関東・東京、東海、北信越、近畿は大きな波乱もなく、一般枠全体としてはかなり平穏な選考会だった。3校枠の東北、東海、北信越は、地区大会準決勝敗退校をどのように判断するかが焦点で、わずかな差が明暗を分けた。

1位校連破を評価された学法石川

 東北は青森2校に続き、学法石川(福島)が選ばれた。県大会3位ながら、東北大会で1位校を連破して4強入りした点が評価され、少ないチャンスを確実に得点につなげ、機動力もあった。攻守交代もきびきびしていて、投打にわたって総合的に一関学院(岩手)を上回る、と判断されたようである。これはもう、実際に試合を見た選考委員の合議による結果なので仕方がない。

東海は予想外の選出順

 東海は選出順がポイントになった。愛知同士の決勝となり、優勝した豊川をトップで選ぶのは当然としても、2番目が4強止まりの宇治山田商(三重)だったのは意外だった。これは豊川との戦いぶりで、宇治山田商が9回2死までリードしていて互角の内容だったのに対し、愛工大名電は、4回までに8点を失ってからの追い上げで、同じ1点差でも試合内容に差があるとした。投手力や守備力でも宇治山田商が上回るとされ、2校枠であれば一昨年のような波乱につながったかもしれない。

高野連会長から石川2校に異例の激励も

 北信越は、日本航空石川と北陸(福井)の最終枠争いが激戦だった。実力拮抗とされ、準決勝の試合内容から、敦賀気比(福井)相手に3点差を追いついてタイブレークに持ち込んだ航空石川の粘り強さが決め手となった。「被災地ということは考慮していない」と選考委員から言及はあったが、同じ石川の星稜が獲得した「神宮枠」であるから、石川に恩恵がもたらされるのは県民にとっても嬉しいはず。また選考委員長だった寶馨・日本高野連会長(66)から「(震災という)苦境の中、精一杯頑張ってもらいたい。国民を元気づけるようなプレーを期待する」と、石川の2校に異例の激励もあった。

中央学院が総合力で最終枠射止める

 関東と東京のいわゆる「抱き合わせ枠」は、レベルの高い関東にもたらされた。関東の5校目には中央学院(千葉)が浮上し、わずかの差で桐光学園(神奈川)を抑えた。中央学院は健大高崎(群馬)の好投手をよく攻めて逆転するなど、しぶとい打者が揃い、山梨学院に対し、先制しながら追加点が奪えず追いつかれた桐光よりも、総合力が充実しているという説明があった。東京2番手との比較でも、打力を評価された創価よりも、投手層や総合力で上回るとされた。今回の関東は県1位校が強く、この選考結果は順当なところだろう。

近畿は投手力のいい報徳と近江が順当に

 近畿は5、6番手が予想通りで、投手力のいい報徳学園(兵庫)と近江(滋賀)の強豪2校で決着した。両校とも攻撃面での課題を指摘されたが、低反発の新基準バットに変わることもあり、機動力を含めた多彩な攻撃ができることから、投手優位になりそうな本大会でも活躍が期待される。九州は大分舞鶴の逆転もあるかと思われたが、4強ですんなり決着。中国と四国はいずれも2校枠で、決勝進出校が順当に選ばれた。

21世紀枠で名門進学校は選ばれず

 一般枠の前に発表される21世紀枠は意外な結果だった。2校枠になり、大別して困難克服系と名門進学系からそれぞれ1校ずつ選ばれると予想していたが、厳冬のオホーツク海に面した酪農の町にある別海(北海道)はともかく、田辺(和歌山)には驚いた。田辺は創立120年超の伝統校ではあるが、補欠校となった鶴丸(鹿児島)、仙台一(宮城)と、水戸一(茨城)は、地域を代表するようなスーパー進学校であり、やや性格を異にする。選出の決め手は「スクールカウンセラーと提携して選手との対話を重視し、一人一人を細やかにフォローする取り組み」が、伝統校にありながら、これからの時代にマッチしているという点だった。

「実力」にも言及された21世紀枠

 ただ今回は、「実力」を重視して選んだのではないかというのが率直な感想だ。別海は北海道大会4強で、優勝した北海と8回まで1点差の接戦を演じた。田辺は県大会で市和歌山、智弁和歌山を連破し、近畿大会でも京都国際とタイブレークの熱戦だった。寶委員長も「『21世紀枠はほとんど勝てないじゃないか』という批判がある中、実力校としての評価が田辺にはあった」と話し、今後は話題性よりも実力を重視した選考に傾いていくような気がする。この枠には「出尽くした感」があり、減枠もいたしかたないように感じていたが、今回に関しては3校のままだったらとの思いが強く、千載一遇のチャンスを逃した名門進学校が気の毒でならない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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