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悲願の金メダルへ! U-18日本代表に甲子園未経験の秘密兵器がいた!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
U18世代初の世界一を狙う日本。スーパーラウンドへの期待は?(別大会で筆者撮影)

 台湾で開催されている野球のU-18ワールドカップで、日本代表は1次ラウンドを4勝1敗で終えた。米国には4-3で競り勝ったが、最終戦のオランダには1安打に抑えられて0-1で完封負け。日米蘭の3チームが4勝1敗で並び、得失点率差でグループ2位となった。1位は米国。スーパーラウンドでは、別グループの3チームと総当たりで決勝進出を狙う。(日本選手は全員が3年生)

スーパーラウンドは台湾、韓国などと対戦

 1次ラウンドの上位3チームは実力が拮抗していた。結果的に三すくみとなったが、いずれの試合も1点差決着で、総当たりのスーパーラウンドは当該チーム間の勝敗を持ち越すため、1勝1敗でのスタートになる。対戦相手となる別グループは、地元の台湾(チャイニーズタイペイ)が全勝で1位通過決定。韓国プエルトリコの2、3位争いとなっている。日本はこれら3チームと当たることになるが、2位、3位、1位の順で当たる。台湾とは3戦目で対戦するが、対戦順によって、起用する投手のやりくりが最大のポイントになるだろう。

昨年は台湾に完敗も、韓国を破り銅メダル

 台湾とは昨年の大会(米・フロリダ)でも1次ラウンドで当たり、2-9で完敗した。ちなみに昨年は米国が優勝し、台湾が2位。日本は3位決定戦で韓国に勝って銅メダルを獲得したが、4チームの力の差はわずかで、今大会も米国とアジア3強が揃うスーパーラウンドは激戦が予想される。台湾が無敗でアドバンテージがあるため、対戦相手は台湾戦に好投手をぶつけてくると思われる。

守り重視のチーム構成でエースは前田

 ここまでの5試合を振り返ると例年同様、日本は投手を中心とした守りを前面に出した戦いを見せている。打線も、スラッガーと呼べるのは4番を打つ森田大翔(大阪・履正社)くらいで、野手は小技と守備力を重視したチーム構成となっている。米国戦で、主将を任されている小林隼翔(広島・広陵)が負傷、入院したのは痛かったが再合流し、大事な試合には間に合う見込みだ。エースは、世代ナンバーワン左腕の前田悠伍(大阪桐蔭)で、米国戦では6回途中まで無失点の快投を見せた。ここからは、球数制限が大きな問題となってくる。

一日最多で105球まで、複雑な球数のルール

 まずはそのルールを説明しておく。一日の最多は105球で、7回制で行われる今大会なら、ギリギリで完投できる数字。しかし91球以上投げると中4日も空けなければならず、決勝まで4連戦となる日程を考慮すれば、完投=その投手は今大会終了となる。

 40球まで=連投可

 41球~55球=中1日

 56球~75球=中2日

 76球~90球=中3日

 91球~105球=中4日

ただし、2日間の合計が41球になった場合は、翌日に登板できない。したがって、ショートリリーフさせる投手は、前日との連投で計40球以下に抑えなければならず、投手マネジメントは極めて難しい。

前田以外の先発陣は右腕トリオ

 前田以外の先発陣は、東恩納蒼(沖縄尚学)、高橋煌稀(宮城・仙台育英)に打撃も期待できる中山優月(奈良・智弁学園)の本格右腕トリオ。決勝までの4試合をこの4人のローテーションとするか、対戦相手を問わず前田を初戦で先発させ、74球以内で交代させて、中2日で最終戦の先発とするか。代表を率いる馬淵史郎監督(67=高知・明徳義塾)も頭の痛いところだ。

甲子園未経験の木村は奪三振マシン

 となれば、救援陣の役割が重要になってくる。ここで俄然、クローズアップされるのが、甲子園未経験の右腕・木村優人(茨城・霞ヶ浦)の存在だ。パナマ戦で登板すると、3回をパーフェクトに抑え、5三振を奪った。惜敗したオランダ戦も3回を2四球の無安打無失点で、6三振を奪っている。ただし、米国戦ではアウトを取れず、わずか9球で2安打1失点と、極端な結果を出した。この試合はパナマ戦からの連投となったが、ここですんなり好投していれば、「抑え」としての起用が確定しただろう。走者を置いての投球に課題は残るが、6回0/3を投げて11奪三振は大いに魅力がある。

茨城大会決勝で完封目前の悲劇

 木村は185センチの長身から150キロを超える速球と、スライダー、チェンジアップ、スプリットなど、キレのいい変化球を投げる。三振の大半は、追い込んでからの変化球で奪っている。茨城大会決勝では完封目前の9回、土浦日大に5点を奪われ、3-5で逆転負けして甲子園を逃した。土浦日大は甲子園ベスト4の好チームだっただけに木村の実力は確かで、その悔しさを代表戦のマウンドで晴らしている。勝ちパターンの最終回を木村に任せられるような展開に持ち込めれば、悲願の頂点も見えてくるだろう。

高校世代初の世界一へ!

 今大会は中山のように、打力のある投手も選ばれた。いわゆる「二刀流」として起用できる選手だ。先述の木村は左の強打者で、ベネズエラ戦で代打起用もあった。また4月の代表候補合宿で注目された左腕・武田陸玖(山形中央)は指名打者でのスタメン出場だけでなく、マウンドでも2試合で計4回を投げて無失点と、期待に応えている。昨年も、夏の甲子園の疲れが残っている選手より、地方大会敗退後に代表一本に絞って調整した選手が好結果を残した。ここからは1試合も落とせない。1点の重みも増す。代表の誇りを胸に、高校世代初の世界一を勝ち取ってもらいたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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