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新たな「東北伝説」の幕開けか? 仙台育英は花巻東との東北対決! かつての近畿によく似た現象が…

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園はいよいよ準々決勝。仙台育英は佐々木麟太郎の花巻東と当たる(筆者撮影)

 夏の甲子園は19日に準々決勝4試合が行われる。連覇を狙う仙台育英(宮城)は、履正社(大阪)との熱戦を1点差で制して勝ち進んだ。ここまで強敵との対戦が続いているが、次戦は同じ東北のライバル・花巻東(岩手)と当たることになった。息つく暇もなく、強敵が待ち受ける。

「競り合うと強みが出せる」と仙台育英監督

 仙台育英は初戦の浦和学院(埼玉)に19-9で打ち勝つと、2回戦では聖光学院(福島)との息詰まる攻防を制し、終盤に突き放して8-2で勝った。履正社には失策が重なる場面もあったが投手がよく耐え、最少失点で切り抜けると、終盤の得点機をスクイズでモノにして、4-3で競り勝った。須江航監督(40)は「ここまで強い相手に厳しい試合を勝てているので、終盤に競り合うとウチの強みが出せる。ベストゲームに近い」と履正社戦を振り返った。看板の投手陣では、経験値が最も高い高橋煌稀(3年)が履正社戦で完全復調し、須江監督を喜ばせた。

花巻東は2年生右腕が台頭

 対戦相手の花巻東も投打に力を発揮している。今チームは投手力が課題とされたが、背番号「17」の右腕・小松龍一(2年)が台頭し、大黒柱に成長した。宇部鴻城(山口)との1回戦で先発すると、9回途中まで4安打1失点で10三振を奪った。クラーク国際(北北海道)戦は救援して失策で追いつかれたが、最速147キロの速球と鋭い変化球のコンビネーションで、狙って三振を奪える。智弁学園(奈良)との3回戦は登板がなく、休養十分で存分に力を発揮できるだろう。投手陣は、4番を打つエースナンバーの北條慎治(3年)や左腕の葛西陸(2年)も先発で好投していて、長身横手投げの中屋敷祐介(3年)が抑えで登場する。看板の打線は、智弁戦で序盤から得点を重ねたように、調子は上向いている。

麟太郎の強打で勢いつけたい花巻東

 「ウチは打力がない。打ち合いのような試合に持ち込まれたら及ばない」と須江監督が言うように、打力に勝る花巻東は主砲・佐々木麟太郎(3年)らの強打で、立ち上がりから仙台育英投手陣を攻めたい。麟太郎は、背中痛が長引いた影響もあって本塁打こそないが、逆方向への痛烈な打球が目立つ。智弁戦では3安打1打点で、3試合通算で打率5割は立派な数字。麟太郎が打つとチームが勢いづくので、初回の打席にまずは注目したい。花巻東は投手陣の総合力でやや落ちるため、5点以上の打撃戦を望みたいところだが、仙台育英投手陣は高橋と湯田統真(3年)の両右腕を軸に、臨機応変に対応できる。

近畿に取って代わった今大会の東北勢

 花巻東の佐々木洋監督(48)は「東北対決になるので、胸を借りるつもりで頑張りたい」と、相手を意識していた。近年の甲子園が、大阪桐蔭を中心とした近畿勢の活躍に沸いたのは記憶に新しい。近畿でも無双状態だった大阪桐蔭に対し、各府県の強豪が「追いつき追い越せ」で立ち向かい、近畿全体のレベルを押し上げたことは間違いない。皮肉にも、大阪桐蔭不在の今大会は近畿勢が7年ぶりに8強ゼロで、東北勢が初めて8強に3校を送り込んだ。昨夏の仙台育英の初優勝から、一気に東北勢が活気づき、仙台育英を目標に各チームが力を伸ばしている。17日の東北対近畿の2カードで、東北勢が連勝したのが最たる例だろう。

新たな「東北伝説」が生まれるか

 昨年の仙台育英は日程、対戦相手ともにやや恵まれた感があったが、今回は初日の登場で日程的に楽ではなく、難敵との対戦が続いている。須江監督は敢えて「連覇」という言葉を使わず、チームとして「2度目の初優勝」を目標に掲げる。昨年の優勝にケチをつける気など毛頭ないが、ここまでの対戦相手を見ると、今回は「真の実力」がないと3回戦までに消えていてもおかしくなかった。「まだベスト8か、という感じ」と須江監督はため息をついたが、「2度目の初優勝」にはそれだけの価値がある。また花巻東がライバルを倒すと一躍、優勝戦線に割って入る。岩手県勢の甲子園初優勝となれば、東北勢2県目の快挙になるので、この試合は新たな「東北伝説」幕開けを告げる歴史的な一戦になりそうな予感がする。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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