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連覇を狙う仙台育英に大きな試練! 強力投手陣を打ち砕くか履正社の打棒 3回戦屈指の好カードを占う

森本栄浩毎日放送アナウンサー
履正社は主砲・森田が2試合連続弾。仙台育英の強力投手陣をどう打つか(筆者撮影)

 夏の甲子園は後半戦に入り、順延を経て3回戦が始まった。優勝候補同士の広陵(広島)と慶応(神奈川)は大熱戦でタイブレークにもつれ込み、慶応が準々決勝進出を決めた。そして連覇を狙う仙台育英(宮城)の前には、4年前の優勝校・履正社(大阪)が立ちはだかる。投打にハイレベルでまとまる強豪同士の激突は、上記の対戦同様、優勝争いを大きく左右しそうだ。

連打が出て複数点が多い仙台育英

 2回戦で昨夏準決勝と同カードになった聖光学院(福島)に対し、終盤に底力を発揮して快勝した仙台育英は、看板の投手陣よりもむしろ打撃陣の好調さが目につく。意外な打ち合いとなった初戦の浦和学院(埼玉)には、2本塁打を含む先発全員の19安打を浴びせ19得点。4点以上のビッグイニングが4回もあり、よくつながっている。聖光学院戦では、相手エースに6回まで苦しんだが、7回に3番・湯浅桜翼(2年)の突き放す一打が出ると、途中出場の浜田大輔(2年)も続き、一気に加速した。今大会は連打が特徴で、複数得点が目立っている。

好調な湯田、復調なるか高橋

 一方の投手陣は、力量の近い4投手をうまく起用している。ここまで好調なのは速球派右腕の湯田統真(3年)で、速球の走りがいい。2試合8回1/3を無四球と安定感は際立っている。対して、昨夏に最も安定していた高橋煌稀(3年)は制球が安定せず、須江航監督(40)が、2回戦でも最後に登板させるなど調整に余念がない。左では、実績のある仁田陽翔(3年)がわずか1イニングしか投げておらず、須江監督は調子を見極めている段階か。2回戦先発の田中優飛(3年)は須江監督の期待に応え、4回途中まで2失点(自責1)と好投した。ここまでの相手が強かったこともあり投手陣としての失点はやや多いが、打線の援護が十分で、チームとしての不安要素は見当たらない。

履正社の4番・森田は2試合連続弾

 履正社は、大阪大会決勝で大阪桐蔭に完勝した自信がみなぎっている。ここまでの2試合はいずれも初回に複数得点し、序盤で主導権を握る理想的な試合運びだった。中心となるのは4番の森田大翔(3年=タイトル写真)で、2試合連続本塁打の打率5割で5打点と手がつけられない。走者を置いた場面で勝負強く、打線に勢いをもたらしている。初戦は追加点が遅く、終盤まで競った展開になったが、2回戦の高知中央には4回までで7点差をつけて試合を決めた。大阪大会初戦のケガで控えに甘んじていた正捕手で主軸の坂根葉矢斗(3年)も2回戦で途中から守りにつき、安打も放って復調気配なのは心強い。順延でさらに間隔が空いたことはプラス材料だ。

履正社投手陣は左腕2枚が強力

 投手陣は、左腕2枚が軸になり、2回戦で登板のなかった増田壮(3年)に期待がかかる。1年秋から主戦格で多くの経験を積んでいて、初戦の鳥取商には先発して7回を4安打無失点だった。変化球が低めに集まれば、自分のペースで投げられるだろう。大阪桐蔭を完封した福田幸之介(3年)は、増田を上回る球威があり、変化球のキレもいい。180センチと体格も申し分なく、強打者とも力勝負ができる。2年生右腕の高木大希も球威があり、短いイニングなら力を出せる。春以降、多田晃監督(45)が「必死に練習してきた」と言うように、センバツ初戦敗退の雪辱を期して大阪大会を勝ち抜き、甲子園でも2勝した力は本物で、チームとしての勢いも見逃せない。

仙台育英投手陣を、履正社打線が攻略できるか

 試合は、仙台育英の投手陣を履正社打線がいかに攻略するかに懸かっている。これまでの試合同様、履正社は初回に先制したい。打線を活気づける1番・西稜太(3年)の出塁がカギで、好機で森田に回ると面白い。あとは当然、仙台育英は継投になるので、交代機に得点できるかもポイント。5点以上取れれば、履正社に勝機がある。履正社投手陣の起用順にも注目したいが、球威のある福田を救援に回すなら、6回以降のリードした展開での投入が望ましい。仙台育英打線は好調なので、2巡目以降は対応してくるだろう。ここまでともに複数点が目立つ。1イニングの失点を少なくできるかも勝敗を分けそうだ。

積極的な履正社・多田監督の野球

 長く「大阪2強」として激戦の大阪で大阪桐蔭としのぎを削ってきたが、多田監督になって試合運びにも変化が見られる。攻撃ではバントが減り、機動力を使って積極的な作戦が目立つ。投手陣も力勝負できるパワー投手の台頭で、攻めの投球が大阪桐蔭撃破につながった。4年前の全国優勝で大阪桐蔭に一歩、近づいたが、今大会の活躍次第では、さらに差を詰められる。連覇を狙う仙台育英との対戦は、思い切ってチャレンジできるだろう。両校とも休養十分で、猛暑にさらされない早朝の第1試合に組み込まれていて、熱戦になることは疑いようがない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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