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仙台育英強し! 3回戦最注目は広陵-慶応の激突! 夏の甲子園前半戦総括

森本栄浩毎日放送アナウンサー
7日目で出場全49校が登場。ここから優勝戦線に躍り出るチームは?(筆者撮影)

 夏の甲子園は7日目で49代表校が全て登場し、2回戦に突入している。連覇を狙う仙台育英(宮城)は1、2回戦で強敵を寄せ付けず、順調に勝ち進んだ。また、2回戦から登場の広陵(広島)、慶応(神奈川)もそれぞれ快勝し、3回戦で激突することになった。ここまで大きな波乱はなく、各校が力を発揮する2戦目以降に、どんな展開が待っているのだろう。ここまでを振り返ってみたい。

仙台育英は看板の投手陣が大量失点

 初日に優勝候補同士の対決として注目された仙台育英と浦和学院(埼玉)は予想外の打ち合いとなり、19-9で仙台育英が勝った。投手陣が看板の仙台育英にしては失点も多く、特に昨夏の優勝に大きく貢献したエース・高橋煌稀(3年)が4回で8安打5失点と不安をのぞかせた。抜け球が多く、制球を乱して失点を重ね、昨年のこの時期とは別人のようだった。それでも須江航監督(40)は敢えて聖光学院(福島)との2回戦の最終回に高橋を登板させた。高橋は2三振を奪って三者凡退に抑え、期待に応えたが、これは須江監督の親心だろう。

湯田が好調で3回戦は仁田に期待か

 ここまでの投手陣の出来を見ると、初戦が先発で2回戦では二番手登板だった速球派右腕の湯田統真(3年)が好調。バットでも本塁打を放つなど、乗りに乗っている。高橋は、2回戦の登板で自信を回復したと見られ、次戦で真価が問われる。また速球派左腕の仁田陽翔(3年)は初戦の最終回、1回11球だけの登板で、3回戦では長いイニングを任されることになるだろう。打線は好調で、過去2試合で31安打27得点の猛爆ぶり。それでも須江監督は「本来、打てるチームではない。ここまで強い相手とばかりやって、勝ちながら強くなれるような試合ができている」と話し、チームの成長に手応えを感じている様子だった。

広陵はエースが苦しむも、一気に逆転

 2回戦からの登場組では、広陵と慶応の強さが際立っていた。広陵は、エース・高尾響(2年)が立正大淞南(島根)のしつこい攻めに苦しめられ、中盤までリードを許す展開。それでも中井哲之監督(61)がクーリングタイム中に、「相手よりも1点多く取ればいいから」と選手たちを落ち着かせ、6回、一気に逆転した。終盤の控え投手の試運転も上々で、まずは無難な滑り出しだろう。注目の真鍋慧(3年)は満塁走者一掃打を放ったが、思ったよりも打球が伸びず外野手が目測を誤っての一打で、本人も納得していないだろう。

慶応は打線好調で、次戦は広陵と真っ向勝負

 慶応は、同じ春夏連続出場の北陸(福井)投手陣を序盤から攻め、5回まで毎回得点で圧勝した。打線は神奈川大会から好調を維持している印象で、下位までムラなく打てる。エースの小宅雅己(2年)は春とは見違えるほど成長していて、森林貴彦監督(50)も「インコースに真っすぐを投げ切れるのが特長。度胸があるし、制球力もついた。頼もしかった」と、7回4安打無失点の投球を絶賛した。この両校が8強進出を懸けて3回戦で当たる。2戦目はまだまだ消耗もなく、硬さも取れて力が存分に出る。両校の真っ向勝負は、優勝争いを左右する大一番になるだろう。

九州国際大付は49番クジに泣く

 地方大会では波乱が目立ったが、ここまで大きな波乱はない。49番目に登場した九州国際大付(福岡)は、1戦目を勝って勢いに乗る土浦日大(茨城)の巧みな投手継投に翻弄され、0-3で完敗。攻守に精彩を欠いた。主砲・佐倉侠史朗(3年=主将)は最終回に意地の安打を放ったが、走者を置いた場面では力みが目立った。49番クジは、昨年も智弁和歌山が勢いのついた相手に敗れるなど、力のあるチームでも泣かされている。2年生左腕の田端竜也が好投していただけに、中盤で援護が欲しかった。

近畿勢は3勝3敗

 近年の高校球界をリードする近畿勢は、履正社(大阪)、智弁学園(奈良)、市和歌山の3校が初戦を突破したが、近江(滋賀)、(兵庫)、立命館宇治(京都)が敗れ、3勝3敗のスタートとなった。近江は大垣日大(岐阜)に先手を許し、中盤に5番・山田修斗(3年)の2ランで追い上げたが、直後に守備の乱れから3失点し、突き放された。チームに若さが見られ、この苦い経験を次チームで生かしてもらいたい。社は日大三(西東京)のエース・安田虎汰郎(3年)の速球とチェンジアップのコンビネーションに最後まで対応できず、わずか2安打で完封負けを喫した。立命館宇治は195センチの右腕・十川奨己(2年)が、神村学園(鹿児島)の猛打を浴び、大差をつけられた。秋以降、球威が出てくれば、大型右腕として全国から注目されるだろう。

クーリングタイム後に足をつる選手続出

 今大会はクーリングタイムとして、5回終了後に10分の休憩を取る。体を冷やしたあと試合再開となり、直後の6回に足をつる選手が続出するなど、運用面での賛否が叫ばれている。またタイブレークもすでに4試合を数え、ここまで後攻チームの3勝1敗となっている。実際に取材してみても、「落ち着いて攻められる」「作戦が立てやすい」など、後攻有利のコメントばかりで、一考の余地がある。

台風襲来で日程が過密に?

 ここから大会は一気に進行する。ただ、台風襲来の予報が出ていて、1~2日の順延も考えられる。そうなると休養日が徐々に吸収され、日程は過密になる。激闘と猛暑で、チームのコンディショニングが一層、大事になってくるだろう。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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