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これぞ「兵庫野球の神髄」! それは社と明石商の9回の攻防に全てが凝縮されていた

森本栄浩毎日放送アナウンサー
社はエース・高橋の力投などで、昨夏から3大会連続の甲子園出場となった(筆者撮影)

 社が1点リードして迎えた9回表、明石商がスクイズで4-4の同点に追いつく。しかし社は慌てず、勝ち越しを阻止する。バントを巡って、攻守お互いが相手にプレッシャーをかけつつ機をうかがう「兵庫野球」の神髄が、この9回の攻防に凝縮されていた。

兵庫野球は「バント」

 「兵庫の野球」とはどんな野球なのか。一言で表すなら「バント」である。最近の高校野球では、初回に先頭が出ても犠打をしないケースがままある。それだけ高校生の打力が向上した証拠で、「確実に1点を取りにいく野球は古い」ということか。しかし兵庫では、4番打者だろうが、1死からだろうが、判で押したように「バント」という作戦が大半である。兵庫の前半戦では、無死満塁からスクイズで1点。さらに2ランスクイズ敢行で、守備側が3点目を阻止、というシーンが展開された。兵庫以外で、ここまで徹底したスクイズ攻撃はちょっと考えられない。

社は敢えて満塁策で勝ち越しを阻止

 追いつかれた社は、1死2、3塁で敢えて5番打者を申告敬遠し満塁策を選択する。先攻チームにより多くの走者を置かせることになり、場合によっては大量失点にもつながりかねない危険な「賭け」に出た。まるでスクイズをやってくるのがわかっているかのように。果たして続く6番打者は、1球目からバントの構えで揺さぶる。社の守備陣は、投球と同時にダッシュし、打者に圧をかける。ここで2球連続、スクイズバントが三塁線のファウルとなり、攻撃側は一気に手詰まりとなった。特に2球目はきわどい転がり方で、直前の守備でもたつきを見せた社の野手が、見事に気持ちを切り替えて、冷静な打球判断を見せた。

攻めの守備が奏功の社がサヨナラ勝ち

 スクイズ失敗後、強攻した明石商は一塁ゴロ併殺に倒れ、勝ち越し機をつぶした。バントにはバント守備で。兵庫のチームは、バントに対応する守備練習は徹底している。ここぞの場面で、開き直りとも思える攻めの守備をした社が、たちまち流れを呼び戻し、9回2死から2安打と四球で満塁と攻めて、最後は8番・藤井竜之介(3年)のサヨナラ打で、昨夏から3大会連続の甲子園出場を決めた。社の山本巧監督(51)は「選手たちが打ち合わせを常にしながらしっかりやれているので、頼もしかった」と、選手たちを褒めた。日頃の練習の全てをぶつけた9回の攻防は、兵庫大会のフィナーレにふさわしい名勝負だった。

「兵庫の野球」を緻密にできたチームが勝ち残る

 今年の兵庫はまれに見るハイレベルの激戦で、センバツ準優勝の報徳学園が5回戦で神戸国際大付に敗れ、準決勝でその国際を社がタイブレークの末、破った。明石商は準決勝で滝川二の好投手に競り勝ち、スケール感のあるチームが軒並み敗退する終盤戦となった。国際と報徳の試合が終わったあと「この戦いは今後の兵庫大会に影響を与える」と書いたが、消耗戦となった猛暑の戦いで、「兵庫の野球」をより緻密にやれたチームが勝ち残った印象だ。

社は甲子園でスケール感出せるか

 社はセンバツで投打とも精彩を欠き、海星(長崎)に完敗した。昨夏も2戦目で序盤に大差をつけられた。おおよそ「兵庫の野球」とはほど遠い内容で、この夏に懸ける思いは強い。山本監督が「3つ4つと勝てるように」と上位進出を誓ったように、レベルが高かったはずの兵庫代表が、簡単に負けるわけにはいかない。緻密で細かい普段の野球に、甲子園仕様のスケール感をプラスして、社には大暴れを期待している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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