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「14点も取られたけど…」天理が壮絶な打撃戦を制して、難敵・奈良大付を倒す!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
連続出場を狙う天理は、終盤に伝統の強打線が爆発した(昨年10月、筆者撮影)

 近畿でも甲子園をめざす夏の地方大会が始まった。奈良では昨夏代表の天理が、有力校の奈良大付と初戦で激突。豪雨での中断後に逆転を許す苦しい展開も、8回に一挙8得点し、再逆転した。

豪雨の中断で流れが奈良大付に

 両校は春の県大会でも初戦で当たり、天理が7-2で勝っていた。試合は序盤から打ち合いの様相で、激しく動く。天理が4回表を終わって7-3とリードした場面で雷を伴った豪雨に見舞われ、中断となった。そして再開後は奈良大付の流れとなる。満塁からの連続適時打などで同点に追いつくと、5回には天理の守りが乱れて逆転に成功。さらに7回には、8番・立石涼太(3年)がツーランを放って10-7と突き放した。

天理が2死からの満塁弾で逆転

 それでも天理は伝統の強打線が終盤に底力を発揮した。8回表、先頭の4番・松本大和(2年=タイトル写真)が二塁打で口火を切ると、2本の適時打で1点差に迫る。その後、同点を狙ったスクイズの失敗で2死となったが、2番・赤埴克樹(3年)が逆転の満塁弾を放った。さらに松本が四球の走者を適時三塁打で返すなど、打者12人の猛攻で、一気に8点を奪った。

天理は2番手の2年生が見事な救援

 しかし奈良大付もさすがで、8回2死から3本の適時打で天理のエース・中川輝星(3年)をKOし、1点差に詰め寄った。

天理はエース中川が8回2死から1点差に迫られるも、2年生の麻田が好救援。同点のピンチで、本塁打を放っている立石を抑え、9回も1点のリードを死守した(22年10月、筆者撮影)
天理はエース中川が8回2死から1点差に迫られるも、2年生の麻田が好救援。同点のピンチで、本塁打を放っている立石を抑え、9回も1点のリードを死守した(22年10月、筆者撮影)

 9回も先頭が安打で出塁したが、天理2番手の麻田悠介(2年)が同点を許さず、上位打者を打ち取った。15-14という壮絶な打撃戦を制した天理は、辛くも2年連続の甲子園へ第一歩を踏み出した。奈良大付は8得点された8回にスクイズを阻止する美技もあったが、要所で守り切れず、延べ8投手を繰り出す必死の継投も実らなかった。

「2強」の直接対決なら決勝だが…

 奈良は天理と智弁学園の2強状態が半世紀以上も続いている。2強に次ぐ存在とされる奈良大付にとっては実に惜しい試合。秋も初戦で智弁に惜敗していて、今チームは最後まで2強の壁を破れなかった。新チームでの巻き返しに期待したい。2強の今チームでの対戦は1勝1敗で、秋に天理が勝ち、春は智弁が雪辱している。直接対決があるとすれば決勝となるが、待ったをかけるチームが現れるか。

滋賀では彦根東と野洲が大熱戦

 滋賀では有力校の彦根東が、センバツ出場経験のある野洲に敗れた。試合は2-1と野洲リードで進み、9回表に彦根東のエース・山田幹太(3年=主将)から、野洲が2点を奪って突き放した。それでも粘る彦根東は土壇場の9回裏、3番・山田の適時打で1点差に迫るも、最後は野洲のエース・松浦誓人(3年)が4番打者を右飛に打ち取って4-3で逃げ切った。両校は春も当たっていて、この時は彦根東が勝っていた。猛暑の中、9回には、両校とも足のつる選手が出るなど、最後は気力の勝負となった。野洲の松浦も、最後は歩いてマウンドから整列に加われないほど疲労困憊していた。勝って泣き、負けて泣く。これぞ高校野球。死力を尽くした両校選手に拍手を送りたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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