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21世紀枠でセンバツ出場→「実力」で甲子園出場は何校ある? 今夏、期待がかかる21世紀枠経験校は?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
彦根東は21世紀枠でセンバツに出たあと、春夏の甲子園で勝利している(筆者撮影)

 センバツ21世紀枠は、地元の盛り上がりだけでなく、恵まれない環境下、地道に活動する全国の球児に勇気を与えてきた。一方で、導入当初、以下のような理念もうたわれていた。「(21世紀枠での)出場を機に、その後は実力で甲子園に戻ってきて欲しい」。

甲子園回帰率はわずか15%

 筆者はこれこそが21世紀枠最大の存在意義だと思っている。しかし実際に、「実力」で甲子園に舞い戻ったチームは意外に少ない。昨年までの22年間で61校が選ばれ、その後甲子園出場を果たしたのはわずか9校「回帰率」は15%だった(3年前の92回大会=中止を含む)。さらに複数回、出場を果たしたのは宜野座(沖縄)、鵡川(北海道)、彦根東(滋賀=タイトル写真)、山形中央の4校で、4校とも「実力」での出場時には甲子園で勝利している。ちなみに宜野座と鵡川は21世紀枠出場時にも勝利していて、かなり力のあるチームだった。

初期に強烈な印象を残した宜野座と鵡川

 宜野座は導入1年目に出場して、いきなり4強入りした。インパクトの大きさと功績は計り知れない。同年夏にも「実力」で出場し、センバツの準決勝で敗れた仙台育英(宮城)に、初戦でリベンジした。導入2年目に出場した鵡川は、かつて砂川北(現砂川)を甲子園に導いた佐藤茂富監督が率い、初戦で三木(兵庫)に打ち勝った。その後、センバツに「実力」で2回出場し、平成16(2004)年にも21世紀枠の八幡浜(愛媛)に勝った。佐藤監督は4年前の8月に79歳で亡くなったが、北海道には佐藤監督の影響を受けた指導者も多く、教えを継承しようと奮闘している。

山形中央は有名プロ選手を輩出

 山形中央は体育科のある県立校で、この枠の出場校としては恵まれた環境下にある。21世紀枠で出た平成22(2010)年は、春夏連続出場したが、いずれも初戦敗退した。しかし3年後のセンバツには一般枠に相当する「東北絆枠」で出場し、1勝。翌年の夏には山形代表となり2勝した。初出場時のエースは横山雄哉(元阪神=29)で、日本ハムで活躍する石川直也(26)は、2年春、3年夏と甲子園出場を果たした。在学中は、現在と同じように救援専門で、190センチを超える長身から剛球を投げ込んでいた。齋藤友貴哉(28)は横山の1年後輩で、甲子園では投げていないが、阪神で横山とともにプレーし、今年からは石川とチームメイトになった。

彦根東は昨秋、近江に土をつける

 そして21世紀枠の理念を体現し、同じような環境の高校から目標にされているのが、彦根東だ。昨年まで慶大で攻守の中心選手だったエース・増居翔太(現トヨタ)と朝日晴人(現三菱重工West)の、甲子園での活躍は記憶に新しい。典型的な文武両道校で、今チームも秋の3回戦で、甲子園3季連続4強以上の近江を破った。エース・山田幹太(3年=主将)は注目選手で、準々決勝では彦根総合に延長15回のタイブレークの末、9-10で惜敗した。彦根総合はその後、快進撃でセンバツをつかんでいて、実に悔やまれる敗戦だった。今季の彦根東は久しぶりに戦力が充実している。

昨春出場の大分舞鶴、丹生は今季好調で今夏はチャンス

 そして昨春、21世紀枠で出場したチームも元気だ。大分舞鶴は今春、大分県内のライバル・明豊を破るなどして優勝し、九州大会でも準優勝した。丹生は今春の福井大会で、啓新、福井工大福井、福井商という甲子園経験校をいずれも1点差で破って優勝した。今センバツに福井勢は2校が出場(北陸、敦賀気比)していて、レベルが高い。夏も活躍が期待される。今春出場の城東(徳島)は、センバツ直後の四国大会で高松商(香川)に勝つなど、甲子園で得た自信がいかに大きいかを証明してみせた。新入部員も11人いて、活気に満ちている。次に「実力」で甲子園出場を果たす21世紀枠チームはどこか?この夏、21世紀枠経験校が甲子園に舞い戻ってくることを楽しみに待っている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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