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今回は東日本勢が優勢? センバツ21世紀枠の候補校を深掘りする

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツの目玉である21世紀枠。今回は東日本に楽しみなチームが多い(筆者撮影)

 センバツの21世紀枠には20年を超える歴史があり、「出尽くした」「役目を終えた」という声も聞く。しかし千載一遇のチャンスを得て地域が盛り上がったり、選手の甲子園出場がプロ入りにつながったりしたこともあり、センバツの持つ意義という観点からはまだまだ可能性を秘めているように感じる。

地区大会出場はプラスポイント

 北海道を除く46校の候補が出揃った。まずは全国9地区の推薦を得て、本番の選考会(来年1月27日)に臨むことになる。9校中3校が、甲子園切符を手にする。過去の選出経過を振り返ると、近年は戦力の裏付けが重視される傾向にあるので、地区大会出場校を優先して、エピソードも含め、有力校を探ってみたい。

北海道 公立勢苦戦も甲子園未経験校が4強に

 選ばれたチームが即、推薦校になる。上位校は私学で占められた。4強のうち2校が甲子園未経験で、立命館慶祥は、優勝候補の白樺学園を破るなど、躍進が目についた。全国高校ラグビーへの初出場も決まっている。函館大柏稜は粘り強く戦い接戦を勝ち抜いたが、準決勝で北海に敗れた。公立勢で期待された札幌新川、北海に惜敗した滝川や、夏の甲子園経験がある北見柏陽は上位進出を阻まれた。

東北 由利は今夏甲子園4強の強豪にも善戦

 秋田2位で東北大会進出の由利は、準々決勝で今夏甲子園4強の聖光学院(福島)に延長の末、2-3でサヨナラ負けした。田村(福島)は、夏に続き秋も県4強入りしたが、東北大会では初戦で敗れている。進学校として名高い仙台三(宮城)は東北大会進出こそ逃したが、昨夏の県大会準優勝など、近年は安定して文武両道を実践している。青森商は県大会4位に終わったが、49年前に夏の甲子園出場経験がある。一関二(岩手)は県4強まで勝ち残ったが、甲子園経験校に連敗。九里(くのり)学園(山形)も日大山形に勝ったが、東北大会進出はならなかった。

関東・東京 石橋は過去2度の地区推薦

 関東大会に出たのはいずれも私学の常磐大高(茨城)と山村学園(埼玉)。常磐大高は、初戦で慶応(神奈川)に惜敗した。山村学園は、県内でも力をつけていて、関東大会では土浦日大(茨城)を破ったが、優勝した山梨学院に完敗して、一般枠での選出は厳しい。公立勢では、過去2度の地区推薦を得ている石橋(栃木)が3度目の正直に挑む。県船橋(千葉)は進学校としても有名で、太田市商時代にセンバツ経験のある市太田(群馬)は、2度目の甲子園チャンスを得られるか。笛吹(山梨)は12年前に統合された新設校で、果樹園芸科などがある。横浜創学館(神奈川)からは、秋山翔吾(広島)や福田俊(日本ハム)ら有名選手が出ている。東京8強の桜美林は、46年前の夏に優勝経験もある名門だが、最後の甲子園出場から20年が経った。

北信越 好投手の氷見に、伊那北、若狭の伝統校が競う

 最激戦区か。県大会優勝で北信越大会でも1勝した氷見(富山)には、最速143キロ右腕の青野拓海(2年)がいる。延長12回にもつれ込んだ遊学館(石川)との初戦を完封した注目右腕で、180センチ80キロとサイズも申し分ない。春夏とも甲子園経験があり、地元の期待も大きい。伊那北(長野)は、創立から100年を超える伝統進学校で3度の甲子園経験。若狭(福井)も通算10回の甲子園出場を誇る名門で、両校とも最終出場から半世紀以上が経過している。北越(新潟)は近年、メキメキ力をつけ、県の上位常連になっている。飯田(石川)は能登半島の北端にあり、冬場の気候に恵まれない環境で健闘した。

東海 44年前のセンバツに出た岐阜と刈谷

 惜しくも東海大会進出を逃した岐阜は、県下一の進学実績を誇る。44年前の50回センバツに出て1勝したが、このチームではNHKの解説者でおなじみの広瀬寛氏が中軸を打っていた。戦後すぐの昭和24(1949)年夏の甲子園で準優勝している。同じく屈指の進学校・刈谷(愛知)も、岐阜と同じ44年前の大会に出て、南陽工(山口)の津田恒美(元広島=故人)に初回3ランを浴び、初戦で敗れた。筆者はこのシーンを甲子園で見ている。木本(きのもと=三重)は、厳しい練習環境と部員13人での頑張りが評価されそう。知徳(静岡)は県4強まで勝ち進み、東海大会目前で涙をのんだ。

近畿 今夏の話題校に連合チーム、進学校が競う

 夏の奈良大会決勝のコロナ禍敗退から広がった天理との友情の輪が、全国的にも話題となった生駒は、県大会準々決勝で敗れたが先輩たちの無念を晴らすチャンスが巡ってくるか。宮津天橋・丹後緑風(京都)は雪深い北部地区の連合チームで、選手15人が力を合わせ、京都外大西、福知山成美を破る健闘を見せた。小野(兵庫)は地域を代表する進学校で、秋は市西宮や加古川西、神港学園などの有力校を倒している。OBには元阪神の清水誉氏がいて、放送部も全国的に有名だ。水口東(滋賀)は中高一貫進学校で、2年前の独自大会で準優勝するなど、上位進出が目立っている。大阪南部の進学校の佐野は、練習環境に恵まれない中、創意工夫を凝らして健闘した。熊野(和歌山)は、ソフトボール部OGに演歌の坂本冬美さんがいて、秋の県大会優勝もある。

中国 光は一般枠選出濃厚で外れるか

 光(山口)は、中国大会準優勝と大健闘した。一般枠での選出が有力視され、扱いが難しい。時系列では先に21世紀枠を決め、選外の6校をそれぞれの地区に組み込んで一般選考を行う。光が選ばれるかどうかで混乱する恐れもあり、個人的には推薦すべきでないと考える。三刀屋(島根)は、中国大会では初戦敗退に終わったが、100年近い伝統を誇り、44年前の夏に甲子園出場を果たしている。神辺旭(かんなべあさひ=広島)も中国大会に進んだが、初戦で完敗した。倉吉総合産(鳥取)は2年連続の地区推薦獲得をめざし、地域密着型の勝山は岡山勢初の地区推薦を狙う。

四国 松山商にはファンも微妙な反応?

 四国大会に出場したチームはなく、アピールポイントの多さが決め手になりそう。城東(徳島)は創立120周年の伝統校で、昨年、亡くなった作家の瀬戸内寂聴氏ら多くの著名人を輩出。過去にも地区推薦の経験があり、ラグビー部は毎年、冬の花園で活躍している。松山商(愛媛)は、甲子園優勝7回の高校球史を彩るスーパー名門校。最後の出場から21年が経過しているとはいえ、2年連続で21世紀枠候補となることにOBやファンは複雑な心境だろう。進学校の高松北(香川)と、統合で新設された須崎総合(高知)は、ともに地域に密着している。

九州 プロ野球監督二人の名門も候補に

 例年は有力校が多いが、今回は傑出した候補が見当たらず、混戦を予想する。九州大会に出たのは2校で、高鍋(宮崎)は通算10回の甲子園という県中部の名門。初戦で明豊(大分)に完封負けしたが、好左腕を擁する。鳥栖(佐賀)は甲子園3回で、権藤博氏、緒方孝市氏という二人のプロ野球監督が出ている。初戦で、優勝した沖縄尚学と当たったのは不運だった。熊本商も甲子園7回の名門で、甲子園ブランクは60年を超える。鹿児島大会で樟南を破った国分中央は、小学生野球教室などの地域貢献活動が評価されている。女子バレーボールの名門として有名な九州文化学園(長崎)は、元巨人の香田勲男監督(57)が就任し、海星と長崎日大の県内2強に迫る。高田(大分)は61年前の夏に甲子園を経験し、今秋は県4強まで勝ち進んだ。沖縄工は、資格取得など勉学との両立をめざしていて、近年の好成績も加味された。近大福岡は、レベルの高い福岡で初の4強進出が話題になっている。

実力で出て欲しい名門も

 甲子園で優勝経験のある桜美林と松山商が候補に挙がっている。両校とも甲子園で大きなインパクトを与えた名門ではあるが、OBはもちろんのこと、ファンも21世紀枠での出場を望んでいるだろうか。現役選手たちにはこれを、実力で甲子園へ出て欲しいという叱咤激励だと受け止めて、頑張ってもらいたいと思う。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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