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大阪桐蔭強し! 強豪が勝ち進んだ近畿大会一週目を振り返る

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪桐蔭は、援護を受けたエース・前田の完投でセンバツ連覇へ好発進した(筆者撮影)

 近畿大会が和歌山・紀三井寺球場で開幕。一週目は1回戦6試合が行われた。注目の今春センバツ覇者・大阪桐蔭(大阪1位)は、有力校の神戸国際大付(兵庫2位)相手に序盤で主導権を握り、エース・前田悠伍(タイトル写真・2年=主将)が完投して快勝した。そのほか、履正社(大阪2位)は瀬田工(滋賀2位)に猛打を浴びせコールド勝ち。報徳学園(兵庫1位)はエース・盛田智矢(2年)が6回まで無安打投球を演じ、箕面学園(大阪3位)を圧倒した。初の甲子園出場を狙う彦根総合(滋賀1位)は、近大新宮(和歌山2位)との接戦を制し、龍谷大平安(京都3位)、高田商(奈良2位)とともに、準々決勝進出を決めた。

初回の満塁弾で大阪桐蔭・前田に余裕

 1回戦屈指の好カードとなった大阪桐蔭と神戸国際大付は初回、神戸国際の守りが乱れ、巨漢エース・津嘉山憲志郎(1年)が2死満塁とされると、大阪桐蔭6番・村本勇海(2年)に右越えの満塁弾を浴びる。

大阪桐蔭は初回、6番の村本が「公式戦初本塁打」という値千金の満塁弾で流れを手繰り寄せた(筆者撮影)
大阪桐蔭は初回、6番の村本が「公式戦初本塁打」という値千金の満塁弾で流れを手繰り寄せた(筆者撮影)

 これで前田は余裕が出て、中盤に追い上げられるも、8三振を奪って完投。最終スコア6-3で大阪桐蔭が逃げ切った。安打は両校ともに4本で、津嘉山の自責は1(失点5)、前田も自責1(失点3)と、失策が点に結びついた印象だが、初回の4点が大きく、これがなければまったくわからない試合。それほどまでに大きな一発だった。

初回の守りを悔やむ神戸国際大付監督

 大阪桐蔭の西谷浩一監督(53)は、「思いがけない本塁打でビッグイニングになった。点差もあったので、前田には敢えて全力投球させなかった」と初回で主導権を握れたことを勝因に挙げた。敗れた神戸国際の青木尚龍監督(58)も、「前田君を楽にしてしまった。終盤勝負と思っていたのだが」とゲームプランが崩れたことを明かし、初回の守りを悔やんだ。相手の送りバントを処理した一塁手が打者走者にタッチしたがこれが甘く、ボールをこぼす失策で、津嘉山がリズムを失う羽目に。それでも「この時期に大阪桐蔭と真剣勝負ができていい勉強になった」と巻き返しを誓っていた。

履正社は投打の柱が活躍

 大阪桐蔭のライバル・履正社も力強く進撃した。初回から猛攻を仕掛け、打者一巡で4点を奪うと、4回には1番・西稜太(2年)が右越えに本塁打。西は3安打の大活躍だった。守ってはエース左腕・増田壮(2年)が6回を2安打無失点と危なげない投球。自ら3ランを放つおまけまでついて、10-2の7回コールドで瀬田工に快勝した。瀬田工も7回に、体調不良から復帰した7番・平田大樹(2年)が適時打を放つなど最後まで諦めず、意地を見せたのは次につながるだろう。

「悔しさ晴らすのは近畿優勝しかない」と履正社監督

 履正社の多田晃監督(44)は「初回、西の三塁打から4点取れたのが大きかった。増田もストライク先行で、球も走っていた」と投打の中心選手の活躍に満足そうな様子。それでも大阪大会決勝で大阪桐蔭に負けたことを引き合いに出し、「悔しさを晴らすのは近畿大会で優勝するしかない」と言い続けているそうで、選手たちのさらなる奮起に期待していた。

31年ぶりの近畿大会も完敗を喫し、がっくりする瀬田工ナイン。それでも最後の反撃は見事だった(筆者撮影)
31年ぶりの近畿大会も完敗を喫し、がっくりする瀬田工ナイン。それでも最後の反撃は見事だった(筆者撮影)

 敗れた瀬田工の小椋和也監督(41)は、「最後はベンチで『滋賀県代表で、何もせんと帰るんか』と言った。平田にも『みんなが連れてきてくれたんやぞ』と送り出した」と、2点を返した7回の反撃を振り返り、「(履正社とは)体格、スピード、経験値で大きな差があった。滋賀でもなかなか勝てない中、近畿に出て一段、(チーム力が)上がった」と手応えをつかんでいた。この2点には大きな意味がある。

彦根総合は堅守で競り勝つ

 報徳は、緩急が冴えたエース・盛田から間木歩(1年)への無安打リレーで箕面学園に11-0の7回コールド勝ち。攻撃面では3番・堀柊那(2年=主将)が4安打。4番・石野蓮授(2年)が3ランを含む3安打6打点と中軸が躍動した。大角健二監督(42)は「石野はずっと打っていたが、堀に当たりが出たのは大きい」と、捕手としても前チームから中心選手だった堀の復調に安堵していた。次は履正社と対戦するが、勝ち残った6校の中では、最も安定感がある印象を受けた。

彦根総合は初回、右翼手・田代奏仁(2年)の好返球で近大新宮の先制点を阻止。捕手の森田櫂(2年)は7回に、決勝の2点適時三塁打を放った(筆者撮影)
彦根総合は初回、右翼手・田代奏仁(2年)の好返球で近大新宮の先制点を阻止。捕手の森田櫂(2年)は7回に、決勝の2点適時三塁打を放った(筆者撮影)

 彦根総合は、同じ近畿大会初出場の近大新宮と互角の内容も要所で堅守を見せ、競り勝った。外野手が2度、相手の生還を阻止するビッグプレーで、「2回刺してくれたのが大きかった」とベテラン・宮崎裕也監督(61)を喜ばせた。エース左腕・野下陽祐(2年)は好守に助けられながら粘り、逆転した終盤は速球派右腕・勝田新一朗(2年)への継投も決まって、初陣らしからぬ見事な試合運びだった。次は大阪桐蔭と対戦するが、初の甲子園を懸けた「大一番」となる。

平安は13人連続出塁などで17得点

 平安は海南(和歌山3位)と対戦。昭和30年代の近畿大会黄金カードだったが、大会直前までコロナ禍で練習ができていなかった海南が7失策と崩れ、計17失点。平安は2四死球を挟み11連打の13人連続出塁など攻守にスキを見せず、17-0(5回コールド)で圧勝した。平安は4年前も府3位から近畿王者に輝いていて、その再現なるか。

高田商は9回、高島がしぶとくサヨナラ打を放って劇的勝利。高島は「サヨナラ打は人生初。絶対、決めてやろうと思っていた」と声を弾ませた(筆者撮影)
高田商は9回、高島がしぶとくサヨナラ打を放って劇的勝利。高島は「サヨナラ打は人生初。絶対、決めてやろうと思っていた」と声を弾ませた(筆者撮影)

 高田商は乙訓(京都1位)に対し、エース左腕・仲井颯太(1年)が緩急を使って的を絞らせず、2安打無失点の好投。9回、2死二塁から9番・高島秀成(2年)がサヨナラ打を放って1-0で劇的勝利を収めた。平安と準々決勝で当たる。京都大会で打線好調もまさかの完封負けを喫した乙訓の市川靖久監督(39)は、「初回のチャンスで3、4番が何とかしてほしかった。低めでカウントを稼がれ、打たされてしまった」と悔しそうに振り返った。

智弁和歌山が地元の期待受ける

 二週目は1回戦の残り2試合と準々決勝が行われる。6年前の地元開催時も3校が初戦敗退した和歌山勢は、県大会優勝の智弁和歌山が最後の砦として京都国際(京都2位)と対戦。天理(奈良1位)と(兵庫3位)の対戦ともども、今夏の代表校が顔を揃える。近畿のセンバツ選出枠は「6」。準々決勝を突破すれば、当確ランプが灯る。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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