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京都に「世界の王」がいた! 近江・山田に大阪桐蔭三人衆! ドラフト指名を待つ近畿の逸材高校生たち

森本栄浩毎日放送アナウンサー
京都外大西の西村は一本足打法から快打を連発する「京都の王」だ(筆者撮影)

 近畿は人材の宝庫である。甲子園で活躍した近江(滋賀)の山田陽翔やセンバツ優勝の大阪桐蔭からは、捕手の松尾汐恩、エースナンバーを背負った川原嗣貴、俊足強打の外野手・海老根優大の「三人衆」がプロ志望届を提出した。さらに天理(奈良)で主将も務めた戸井零士、昨夏4強の原動力となった京都国際のエース・森下瑠大も有望で、指名を待つ。そして甲子園未経験組では、高校通算54本塁打の京都外大西西村瑠伊斗(タイトル写真)の評価が急上昇している。

西村は背番号1で、一本足打法

 西村の外大西は今夏、京都大会準決勝で龍谷大平安に敗れて甲子園出場を逃した。それでも西村は、京都大会タイ記録となる4本塁打を放って存在感を見せつけた。京都では強敵との試合が相次いだが、徹底マークの中、西村は勝負所で必ずと言っていいほど快打を放っていた。期待されている場面で打てる勝負強さが最大の強みだろう。背中をやや丸め、大きく右足を上げてタイミングを取る「一本足打法」は、868本塁打の世界記録保持者・王貞治氏(82=ソフトバンク球団会長)を彷彿とさせる。投手兼任だったため、背番号「1」もよく映えていた。

「打席の中で変えられる力」が勝負強さ生む

 王氏と言えば、もはやレジェンドをはるかに超える「野球界の神様」。西村の親世代ですら、リアルタイムで見た記憶があるかどうかだろう。恩師である上羽功晃監督(53)の勧めで、西村は王氏の動画を見て「世界の本塁打王」を意識してきた。上羽監督は西村の勝負強さについて、「打席の中で打ち方や考え方を変えられる」ことを要因として挙げていたが、王氏が引っ張り一辺倒だったのに対し、西村は左中間方向にも長打がある。スカウト陣もその対応力に加え、俊足と強肩を高く評価し、上位で消えるというのがもっぱらの評判だ。プロの世界で背番号「1」を背負う日が来るか、楽しみに待ちたい。

遊撃手からコンバートの松尾

 甲子園のスター組で、近江・山田については前回、詳述したので重複は避けるが、センバツ優勝の大阪桐蔭の3選手はいずれも評価が高い。1位候補とも言われる松尾は、その非凡な打力に加え、短期間で捕手を全うできるセンスもあって、伸びしろが大きい。入学時は遊撃手だったが、1年上の世代の捕手が手薄だったため、コンバートされた。捕手出身の西谷浩一監督(53)からは「まだまだ勉強することばかり」と厳しく指導されたが、先輩から後輩まで、多彩かつ有能な投手陣の良さを存分に引き出していた。バットでは甲子園3大会連続で計5本塁打を放っている。

成長止まらぬ川原、俊足強打の海老根

 U18日本代表のワールドカップ(W杯)で最優秀投手に輝いた川原は、スケールの大きな本格派で、188センチの長身から最速150キロの速球と多彩な変化球を投げる。昨夏から秋のスタート時はスランプに陥ったが「生活面から見直した」と本人が言うように、一冬越えて、心身ともにたくましくなった。夏の甲子園後も成長は止まらず、W杯で自己最速を出すなど、評価も上がる一方だ。

大阪桐蔭の海老根は千葉県出身で、三拍子揃った大型外野手。抜群の身体能力を誇る(筆者撮影)
大阪桐蔭の海老根は千葉県出身で、三拍子揃った大型外野手。抜群の身体能力を誇る(筆者撮影)

 海老根は、182センチの大型外野手で、甲子園3本塁打の長打力もさることながら、俊足強肩の守備力も高く評価される。逸材揃いの大阪桐蔭でも、身体能力の高さは歴代屈指という。苦手投手への対応力など課題は残るが、高いレベルの指導を受ければ大きく変身する可能性を秘めている。

天理の戸井は人間力抜群の主将

 天理で2年生の春から中軸を打つ戸井は、長打力プラス広角に打てる高い技術を持つ。守備も安定していて、180センチの大型遊撃手として楽しみな存在だ。3度の甲子園では本塁打こそなかったが、今夏は2試合で8打数4安打と気を吐いた。奈良大会決勝で大差がついた9回、主力を欠く生駒の選手に配慮して自ら内野陣を集め「喜ぶのはやめよう」と話した。その後、生駒ナインが甲子園で天理を応援したり、ベストメンバーで決勝の再試合をしたりした。この「友情物語」「フェアプレー精神」は、戸井の人間力がもたらしたものと言える。名門・天理の主将にふさわしい。

不運を一掃できるか森下

 昨夏、下級生中心ながら甲子園4強に進んだ京都国際の森下も、投打にわたって非凡なセンスを誇る。

京都国際の森下は奪三振率の高さが群を抜く。勝負強い打撃も魅力で、センスの塊のようだ(筆者撮影)
京都国際の森下は奪三振率の高さが群を抜く。勝負強い打撃も魅力で、センスの塊のようだ(筆者撮影)

 秋の新チームスタート時までは順調だったが、センバツを目前にしてチームがコロナ禍に見舞われ、暗転した。センバツ辞退に加え、森下自身もコロナ後遺症からか、左ヒジの痛みが引かず、夏の京都大会終盤戦でようやくマウンド復帰を果たした。甲子園では本来の出来からはほど遠く、初戦敗退に終わったが、絶好調時を知るプロのスカウトの評価は揺るぎない。低めの変化球のキレは抜群で、高いレベルでも通用する。勝負強い打撃を評価する球団もあり、この1年の不運を一掃するような上位指名があるかもしれない。

今年の高校生は入学時からコロナに翻弄

 今年は例年以上に、1位指名を公表する球団が多い。「不作」の裏返しとも言われるが、高校生は入学時からコロナに翻弄されて、力を伸ばしきれていない選手も少なくない。限られた時間と制約の多い環境下で頑張ってきた選手たちに、良い巡り会いがあればと願うばかりだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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