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近江・山田は12球団OK! ドラフト直前、揺れる心境を吐露

森本栄浩毎日放送アナウンサー
高校世代のスター、山田は12球団OKと言う。どの球団が射止めるか(筆者撮影)

 「指名していただけるなら、どこでもいいです」。高校世代を牽引した近江(滋賀)の最速149キロ右腕・山田陽翔は、12球団OKを明言した。順位もこだわらないと言う。甲子園通算11勝&115奪三振と、高校球史に残る活躍を見せ、ファンを魅了した逸材が、一週間後の20日に迫ったドラフト会議を前に、揺れる胸の内を話してくれた。

高校球史に残る活躍も評価は二分

 甲子園で大活躍した実績からすれば、「1位指名確実」と言われてもいいくらいだが、投手としてはやや小柄な175センチで、プロが狙う高校生投手のスケール感では見劣りする。したがって評価は二分され、打者に向かっていく気迫やここ一番で力を発揮できるセンスの高さを買う球団がある一方で、高校生に求める「先発完投型」の将来像を描きにくいと見る球団もある。

「チームの勝ちに貢献できる投手」めざす

 山田は先のU18高校日本代表では当初、抑え起用が検討された。甲子園では、16試合(ノーゲーム含む)すべてで先発したが、先発へのこだわりはないと言う。かと言って「(救援や抑えの)願望はないです」とも話した。「チームの勝ちに貢献できる投手。一つ一つの積み重ねが大事だと思う」と、早くもプロ入り後を見据えている。ピンチの時ほどギアが上がり、窮地を脱した姿は、ファンを虜にしてきた。言葉を選びながら穏やかに話す姿は、とても18歳の高校生とは思えない。それでいて、マウンドでは豹変して勝負に徹する。このあたりのメリハリが、人気の所以だろう。

実は50メートル5秒台の俊足だった!

 こうした「プロ向き」の性格に加え、U18では主将も務めたリーダーシップも山田の強みだ。さらに、甲子園で2年連続本塁打を放った打撃も捨てがたい。恩師の多賀章仁監督(63)は、「思い切りのいい山田の長所を消さないため、打撃については敢えて指導していない」と話す。ある球団のスカウトは、「打ち方を少し変えれば、もっと打てるようになる」と断言したそうだ。さらにこれはあまり知られていないが、山田は50メートルを5秒台で走る「俊足」でもある。それでも山田はバットを封印し、まずは「投手一本」でプロの世界へ飛び込んでいくと言う。

「落ち着かない」日々を送る

 最近は、新聞やネットでドラフト関連の記事が目立つ。すでに1位指名選手を公言した球団もあるが、「こうした記事は見ないようにしている」と、山田は複雑な心境を吐露した。U18でもチームメイトだった浅野翔吾(香川・高松商)や、松尾汐恩(大阪桐蔭)とは以前から親友だったが、彼らの評価や動向が気にならないわけがない。こうした日々が続くことには「落ち着かないし、不安もある。いくら気にしても自分が変えられることではないので、選んでいただけた時のために、次のステージへ向けて準備をしている段階」と、待つ身の辛さを正直に語ってくれた。

全球団から「調査書」届く

 山田の元には、全12球団から「調査書」が届いている。これは「指名した場合、入団の意思があるか」など、数項目の質問に答えて返信するもので、「あなたに興味があるので、指名した時はよろしく」という「前挨拶」のようなものだ。逆に言えば、調査書を出していない球団から指名されることはない。したがって、山田は全球団から指名される可能性がある。現在も、連日のように各球団の担当スカウトが来校しているようだ。

滋賀の高校から1位なら46年ぶり

 ドラフト会議はTBS系列で地上波中継される。これは1位指名12選手が確定するまでで、それ以降は、CS放送かネット配信になる。山田がもし1位指名されれば、滋賀の高校からの1位指名(大学、社会人経由除く)は、昭和51(1976)年に中日から1位指名された堅田都裕次郎投手以来、46年ぶり二人目となる。1年の夏から取材してきて、周囲に気を配りながら視野の広い発言をする山田には、いつも感心させられている。彼の長所はプレーだけにとどまらず、人間力の大きさと、誰からも愛される天分にある。相思相愛の球団に恵まれることを願わずにはいられない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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