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U18侍JAPAN完敗! 悲願の世界一へ待ち受ける課題と試練

森本栄浩毎日放送アナウンサー
U18日本代表は台湾に完敗。次ラウンドで巻き返しなるか(18年9月、筆者撮影)

 米国フロリダ州で開催されているU18野球ワールドカップ(W杯)は、グループリーグによるオープニングラウンドが終わり、ここまでBグループで4連勝の日本代表は、チャイニーズタイペイ(台湾)に2-9で完敗。このあとは、各グループ上位3チームによるスーパーラウンドで世界一を争う。

台湾相手に3回までで8失点

 前回大会(2019年)優勝の台湾は、これまでの相手より一枚も二枚も上だった。2回、先発の左腕・香西一希(福岡・九州国際大付)が、球審のストライクゾーンに苦しみ満塁のピンチを背負うと、馬淵史郎監督(66=高知・明徳義塾)は早くも右腕・宮原明弥(長崎・海星)にスイッチ。しかし宮原はいきなり一掃打を浴びるなど一気に4点を失った。これで動揺したか、日本代表は3回にも看板の守備が乱れ、またも4失点。序盤で大差をつけられた。

序盤での大量失点は致命的

 ゲームプランが大きく崩れ、打線は、相手投手の140キロ台中盤の速球と低めの変化球に的が絞れず、連打を奪えなかった。5回裏にようやく、8番・光弘帆高(大阪・履正社)が今大会初安打を放ち、これが適時打となって一矢報いたが、反撃が遅すぎた。この大会は7回制で行われていて、早い回での大量失点は致命的になる。台湾の内野守備は日本より落ちるように見えたし、投手は与四球もあった。競り合いに持ち込めれば、付け入るスキは何度もあったように思う。決勝での再戦もありうるので、反省を生かしてもらいたい。

スーパーラウンドは3戦全勝が目標

 すでにスーパーラウンド進出は決まっているが、台湾戦の負けは痛い。直接対決で敗れたため、Bグループ2位通過となるが、試合結果は持ち越されるため、1勝1敗でのスタートになる。スーパーラウンドはAグループ3チームとの総当たりで、地元の米国韓国が進出してくることは間違いない。トータル成績で上位2チームが優勝を争うことになるので、1敗の日本は3戦全勝が目標となる。

7回制の戦い方は「先手必勝」

 ここまでの5試合で見えてきた課題を挙げる。まず、7回制が大きく立ちはだかる。4連勝中は序盤に得点し継投策も冴えたが、台湾戦のように、序盤で主導権を失うと挽回が難しい。ここからは相手が勝手に崩れることは考えられないので、得点機を確実にモノにし、5回以降、競り合える展開が望ましい。従来の9回制のように、「終盤で逆転」などと悠長なことは言っていられない。「先手必勝」あるのみだ。あとは投手陣の状態が気にかかる。

「抑え」の山田の状態は?

 競り合いで比重が増すのは抑え投手。今大会は山田陽翔(滋賀・近江)がその重責を担うことになっているが、ここまでで唯一の登板となったパナマ戦では2点のリードを守り切れなかった。直球が走らず、変化球で空振りも奪えないため、首脳陣は危機感を抱いているのではないか。次の登板は山田にとって背水の陣。チームにとっても、今大会の行方を左右する。

川原、生盛が好調をキープ

 投手陣全体で好調なのは、川原嗣貴(大阪桐蔭)。オーストラリア戦では、94マイル(150.4キロ)を何度も計測するなど、状態は甲子園時を上回る。ここまで2試合は救援登板となっているが、今後は先発、もしくは山田が不調だった場合の抑えも任せられるだろう。2試合に先発して結果を残した生盛亜優太(沖縄・興南)も頼もしい。速球に威力がありスライダーも制球よく決まっている。また、本職は捕手の野田海人(福岡・九州国際大付)が、リラックスして投げている姿が印象的だった。

途中交代の浅野は気がかり

 スーパーラウンドでは、相手投手の球威が違う。木製バットへの対応はこの世代の大きな課題ではあるが、1番を打つ浅野翔吾(香川・高松商)が本塁打を放つなど、打線を牽引している。ただ、台湾戦での途中交代は気がかりなところだ。4番の内海優太(広島・広陵)は巧みなバットコントロールを見せ、パナマ戦ではサヨナラ犠飛を放った。馬淵監督が得意とする犠打、機動力を絡めた攻撃で相手を揺さぶり、好調な打者へいかにつなぐか。1点を大事にする日本野球の神髄を見せてもらいたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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