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大阪桐蔭を倒すのはどのチーム? 夏の甲子園49代表出揃う

森本栄浩毎日放送アナウンサー
3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭を倒すのはどのチームだろうか?(筆者撮影)

 夏の甲子園49代表が出揃った。甲子園未経験校ゼロという、名門、常連校が集う大会は、3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭にどのチームが待ったをかけるかが最大の焦点になる。

西谷監督が自信に満ちた優勝宣言

 30日の大阪大会決勝で、大阪桐蔭はライバルの履正社を7-0と圧倒した。優勝インタビューで西谷浩一監督(52)は、「3度目の春夏連覇と、秋(神宮大会)春夏の3連覇に挑戦する権利をもらった。甲子園で暴れて優勝旗を持ち帰りたい」と力強く優勝宣言した。いつも控えめな西谷監督が、秋の神宮を含む3冠挑戦にまで言及し、これまでにないほどの自信に満ちた言葉を発したのには少々驚いた。

抜群の安定感見せた投手陣

 しかし、大阪大会の試合内容を振り返ると、それも納得させられてしまう。7試合で失点がわずか「1」だったからだ。今季の大阪桐蔭の強さは、投手陣の安定感にある。状態が不安視されたエース・前田悠伍(2年)は決勝の先発を任され、8回を7安打無失点。5回戦では四球を連発し、調整不足を感じさせたが、その修正能力の高さには舌を巻くしかない。先輩投手陣も、川原嗣貴別所孝亮の3年生右腕が好調を維持し、センバツ直前にメンバー漏れした左腕の小林丈太(3年)、緩急が使える右腕の南恒誠(2年)と、誰に試合を任せても不安はない。

打線は連打が持ち味

 打線は西谷監督が「つないでつないで足も使う」と言うように、連打が持ち味。履正社戦も中盤に犠打、盗塁を絡めて5安打を集中し4点を奪った。長打が期待できる1番の伊藤櫂人、3番の松尾汐恩(いずれも3年)は足も使え、下位には勝負強い星子天真(3年=主将)がいる。代打や代走の選手も役割がはっきりしていて、西谷監督も采配に迷うことが少ないだろう。センバツ後には大阪で苦戦したり、近畿大会で敗れたりして他校との差が縮まったように思われたが、甲子園に向けてきっちり仕上げてきた。

大阪桐蔭を3点以内に抑えないと勝てない

 この最強軍団を倒すとすればどのチームか。まず、敗れる姿を想像するなら、早い段階、つまり準々決勝よりも前ではないかと思う。投手陣が万全なだけに、対戦相手は、少ない点数での勝負に持ち込まないと勝機を見出せない。さらに限定すれば、大阪桐蔭の打線を3点以内に抑える投手力を持ったチーム。そうなるとやはりライバルは、智弁和歌山京都国際近江(滋賀)の「近畿3強」という結論になる。

春の近畿大会で大阪桐蔭を倒した智弁和歌山

 智弁和歌山とは春の近畿大会決勝で当たり、2-3で敗れた。小刻みな投手継投に幻惑されて打線がつながらず、前田を援護できなかった。投手陣は右腕二枚が軸で、塩路柊季(3年)は投球術に長ける。速球派の武元一輝(3年)は馬力があり、先発、救援を問わず力を発揮できる。打線も昨夏の優勝を経験した渡部海岡西佑弥(いずれも3年)を軸に長打力では大阪桐蔭を上回っていて、センバツが終わった段階で、今夏、最も大阪桐蔭に迫るチームとみていた。昨夏の優勝校として連覇も懸かるだけに、両校の直接対決が実現すれば、大会のハイライトになることは間違いない。

京都国際は頼みの森下が復調

 センバツを巡って因縁があった京都国際と近江も力強く進撃している。直前のコロナ禍でセンバツを辞退し、影響が長引いた京都国際は、京都大会終盤に、エース・森下瑠大(3年)が左ヒジ痛から復活。絶好調には見えなかったが、本大会までにはさらに良化するだろう。特に低めの制球力が戻れば、相手打線に連打を浴びることは考えられない。チームは6月中旬から調子を上げ、投手陣は、右腕・森田大翔(3年)らが台頭してきた。しかし何と言っても注目すべきは森下のバット。京都大会では、勝負所で必ず快打を放ち、流れを引き寄せた。森下は大阪桐蔭が伝統的に苦手とするタイプの左腕で、早期対戦があれば面白い。

近江の山田は万全の状態

 その京都国際のセンバツ辞退で巡ってきたチャンスをモノにし、準優勝まで駆け上がった近江は、今季の高校球界を代表する逸材・山田陽翔(3年=主将)が万全の状態で最後の夏に向かう。センバツ、近畿大会とチームは大阪桐蔭に大敗したが、春の近畿準決勝では、山田が足を痛めて降板するまでほとんど打たれていなかった。真っすぐと同じ軌道で鋭く曲がるカットボール、ツーシーム、スプリットは、並みの高校生ではまず打てない。近江の弱点は、山田に次ぐ投手が一気にレベルダウンすることで、大阪桐蔭と当たるとすれば、昨年のような早期対戦(2回戦)が望ましい。

エースが気がかりな九州国際大付

 上記3校は投手力がいいので、早期の対戦ほど大阪桐蔭が苦戦する可能性が高まる。しかし同じ近畿地区でしのぎを削っているので、手の内を知られているというハンディもある。他地区で大阪桐蔭を倒せる力を持ったチームはどこか。まずはセンバツでも活躍した九州国際大付(福岡)を挙げたい。センバツ以降、故障や体調不良で調子を落としているエース左腕・香西一希(3年)の状態は気がかりだが、攻守のバランスがいい。また春夏連続組では、明秀日立(茨城)、山梨学院の打棒が力強い。両校ともエースが安定しているので、波に乗れば怖い存在になるだろう。

下級生牽引の横浜、勝ちパターンある仙台育英

 今大会は名門が多いと記したが、激戦の神奈川を勝ち抜いた横浜には注目せねばなるまい。エース左腕・杉山遥希、1番・緒方漣(いずれも2年)がチームを牽引し、勢いがある。明徳義塾(高知)は、昨夏も好投したトルネード左腕・吉村優聖歩(3年)が健在で、試合巧者ぶりを発揮しそうだ。聖光学院(福島)は、センバツでも好投した佐山未来(3年)にさらなる上積みが期待できそう。センバツ8強の星稜(石川)や敦賀気比(福井)にも経験豊富な常連校ならではの強みがある。仙台育英(宮城)は、控え投手が先発して、中盤以降にエース左腕・古川翼(3年)が救援する先手必勝の勝ちパターンを持つ。

鳴門の冨田、文理の田中に注目

 最後に期待の好投手として、左腕ではセンバツ初戦で大阪桐蔭打線が大苦戦した鳴門(徳島)の冨田遼弥(3年)に注目したい。速球とスライダーを軸に、時折交ぜるスローボールで緩急をつける。強豪が当たりたくない投手の筆頭格だ。右腕では日本文理(新潟)の田中晴也(3年)が、186センチの恵まれた体から、最速150キロの剛球を投げる。両校とも攻撃陣とうまく噛み合えば上位進出も期待できる。

コロナに負けず全校完走を

 今年の3年生は、入学時からコロナと闘ってきた。練習の制約もあり、感染の恐怖の中でのストレスは半端ではない。本大会では、感染者が出ることを想定して、選手の入れ替えや試合日程の変更など、柔軟な対応で不測の事態に備えている。選手たちがフルに力を発揮し、49代表校全てが完走することを願っている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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