Yahoo!ニュース

今週末、大阪桐蔭ピンチ? まずは近江との「決着戦」から ハイレベル近畿大会

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪桐蔭は連勝を30まで伸ばすことができれば春の近畿大会連覇となる(筆者撮影)

 春の近畿大会が和歌山市の紀三井寺球場で開幕。1週目の4試合はいずれもワンサイドの展開で、智弁和歌山報徳学園(兵庫)、大阪桐蔭近江(滋賀)が勝ち残った。センバツ王者の大阪桐蔭、同準優勝の近江、昨夏甲子園覇者の智弁和歌山という「近畿トップ3」に名門の報徳を加えた豪華な顔ぶれ。ここからは、甲子園4強レベル以上の対戦と言っても過言ではない。

大阪桐蔭が最後に負けた近江

 大阪桐蔭は府大会決勝でライバル・履正社に食い下がられ、3-2で辛勝して、昨秋からの公式戦連勝を「27」とした。近畿大会初戦では、地元2位代表の和歌山商を寄せ付けずコールド勝ちして28連勝。準決勝では、センバツで優勝を争った近江と対戦する。昨夏、大阪桐蔭が最後に公式戦で負けた相手であり、センバツではきっちりとリベンジした。エースのケガや消耗度などチーム状態に大きな差があったセンバツとは違い、今回は近江も万全で向かってくる。1勝1敗の「決着戦」を制して連勝を伸ばせるか。

川原、南、前田?大阪桐蔭の投手起用は?

 試合のポイントは、大阪桐蔭の投手起用だろう。和歌山商戦で好投した川原嗣貴(3年)はセンバツ後も好調を維持していて、勝敗にこだわるなら川原。連戦となる決勝は大黒柱の前田悠伍(2年)が最も安全策。しかし春は育成の意味合いもあるため、府大会で頭角を現してきた南恒誠(2年)の抜擢もあるか。南はセンバツ直前にメンバー入りした期待の本格派右腕で、185センチの長身から最速145キロを投げる。甲子園でも準々決勝の市和歌山戦で3三振を奪う鮮烈デビューを果たした。大阪桐蔭には珍しい中学軟式(兵庫・宝殿中)出身で、来季は前田との左右両輪と期待される。

山田万全の近江に小竹も復帰

 「打倒!大阪桐蔭」に燃える近江は、エースで4番の山田陽翔(3年=主将)が万全の状態で牙をむく。センバツ激闘の後遺症もなく、奈良大付との初戦は6回を1安打無失点と完璧な内容だった。昨夏、大阪桐蔭とは2回戦で当たり、2回までに4点を失ったが、その後立ち直って味方の逆転を呼び込んだ。センバツでは前日に受けた死球の影響もあり、精彩を欠いて大敗した。今季の近江は山田のワンマンチームと思われがちだが、打線のつながりと安定した守備力で山田を支えていると言った方が正しい。センバツ以降、山田に次ぐ投手など戦力も整備されている。また野手では、秋に活躍した小竹(しのう)雅斗(2年)の復帰が大きい。近江には珍しい和歌山出身で、初戦では地元球場で大ハッスルしていた。

山田は「天敵」松尾を抑えられるか

 さて、山田と大阪桐蔭打線の対戦では、主砲・松尾汐恩(3年)をいかに封じるかがカギとなりそうだ。松尾は山田にとって「天敵」で、昨夏、今春と、甲子園で本塁打を浴びている。負けず嫌いの山田は、リベンジを懸け全力投球で勝負を挑むはず。また、これまでの山田の投球を振り返ると、立ち上がりに失点することが多い。特に午前中の試合で、この傾向は顕著に表れている。試合は午後になるので、すんなり立ち上がれれば、中盤までは好投できるだろう。山田の踏ん張りで3点前後の競り合いに持ち込めれば近江に勝機が生まれる。

報徳エースと智弁和歌山打線

 準決勝のもう一試合は、智弁和歌山と報徳の対戦。報徳のエース・榊原七斗(3年)が、強打の智弁和歌山をどう抑えるかに注目したい。榊原はセンバツ8強の市和歌山との初戦には登板せず、全国屈指の右腕・米田天翼(3年)から豪快弾を放ってバットで存在感を見せつけた。準決勝では、全国屈指の強打線に左腕が唸りを上げるはずだ。智弁和歌山は、西城陽(京都)戦で、塩路柊季(3年)が6回を2安打完封。塩路とのダブルエースを形成する武元一輝(3年)も投げたくてうずうずしているだろう。今回の4強で報徳は、打線がやや非力とみられていたが、米田を打ち崩して、一気にチームのムードが上がっている。

近畿のレベルが高い理由

 大阪桐蔭は昨春も近畿大会を制して(タイトル写真)いて、今回も優勝すれば春、秋、春の近畿3連覇となる。まずは近江と決着戦。そして連戦となる智弁和歌山か報徳との決勝を制すると、連勝は「30」の大台に乗る。しかし、甲子園以上に強い相手との連戦は、いかに大阪桐蔭と言えども正念場であることは間違いない。この構図こそが、ハイレベル近畿そのもの。甲子園に直接、関係のない試合でも、高校球界の頂点に君臨する大阪桐蔭を目標に、近畿の強豪たちが全力でぶつかっていく。近畿のレベルが高い理由はここにある。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事