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智弁学園が横浜に完勝! 近畿勢の強さ際立つ夏の甲子園

森本栄浩毎日放送アナウンサー
智弁学園は横浜に完勝。優勝争いも、強さが際立つ近畿勢が軸になりそうだ(筆者撮影)

 雨に泣かされる大会は、ようやく21日に出場校が全て登場した。コロナで辞退となった宮崎商東北学院(宮城)は気の毒だが、大会前の予想通り、近畿勢の強さが際立つ前半戦となっている。

智弁学園が横浜に快勝

 21日には2回戦屈指の好カード、智弁学園(奈良)と横浜(神奈川)の対戦があった。智弁が、主砲・前川右京(3年=タイトル写真)の自身甲子園初アーチを含む4打点の活躍。エース・西村王雅(3年)と小畠一心(3年)による完封リレーで横浜を寄せ付けず、5-0で快勝した。

奈良勢は神奈川勢に相性悪く

 奈良勢は神奈川勢に極めて相性が悪く、今センバツまで1勝12敗。センバツ準決勝では、天理が、優勝した東海大相模に0-2で敗れた。智弁と横浜は、平成23(2011)年の3回戦で当たり、智弁が9回2死から8得点して、9-4で大逆転勝ちしていた。奈良が神奈川から挙げた唯一の勝利である。ちなみにこの試合の横浜の先発は2年生の柳裕也(中日)で、捕手が近藤健介(日本ハム)。智弁は2年生エースの青山大紀(元オリックス)が投打の柱で活躍していた。今回、智弁は横浜との10年ぶりの対戦で、神奈川から2勝目をもぎ取った。

神戸国際大付は阪上が自己最速

 智弁が近畿勢の先陣を切って倉敷商(岡山)に快勝していたが、続いて登場した神戸国際大付(兵庫)は、接戦の末、2-1で北海(南北海道)を破った。出場3大会連続で初戦対決という強敵に、全て1点差での3連勝は見事というほかない。ヒジの不調に苦しんでいた阪上翔也(3年)が復調していて、自己最速の148キロをマーク。左腕・楠本晴紀(2年)へのリレーも決まって、僅差で逃げ切った。5回で降板した阪上に対しては、青木尚龍監督(56)が、「まだまだこんなもんじゃない」と話し、2回戦以降のさらなる活躍を期待している。22日に高川学園(山口)と当たるが、北海戦を上回る打線の援護が欲しいところだ。

大阪桐蔭は投手起用がポイント

 大阪桐蔭は、東海大菅生(西東京)との雨中戦を、7-4の8回途中コールドで制して、第一関門を突破した。エース・松浦慶斗(3年)は、悪コンディションでも集中力を切らさず、根気よく投げた。驚くべきは3本塁打した打線で、やはり戦力のトータルでは大会随一。日程運に恵まれず、大会終盤での連戦を考えれば、まだ投げていない川原嗣貴(2年)らをどこで起用するか。また、大阪大会で登板のなかった関戸康介(3年)の状態も気がかりではある。西谷浩一監督(51)も、投手のやりくりに頭を悩ませているだろう。

近江は岩佐が球威で圧倒

 ノーゲーム後の再試合で日大東北(福島)に8-2で完勝した近江(滋賀)は、投打のバランスがいい。ともに140キロ台中盤の速球を投げるエースで4番の山田陽翔(2年)が先発で、大型右腕の岩佐直哉(3年)が抑えるパターン。日大東北戦も、2点差に追い上げられた6回に岩佐が登板し、相手打線を球威で圧倒して三者三振。直後に得点して突き放す完璧な試合運びだった。打線は、山田の後を打つ新野翔大(3年)、島瀧悠真(3年)が当たっていて、つながりがいい。1年生遊撃手の横田悟が攻守で渋い働きを見せるのも心強い。次戦は大阪桐蔭に挑むが、今チームの公式戦は対戦がない。初戦快勝の勢いに乗って、無欲でぶつかりたい。

京都国際は4番捕手の中川が要

 試合順は前後するが、2回戦から登場の京都国際は、前橋育英(群馬)を1-0で退けた。決勝点は4番・中川勇斗(3年)の2回に出た本塁打で、エース・森下瑠大(2年)が、4安打10奪三振の力投で守り切った。初回の1死満塁を連続三振で切り抜けたのが大きく、ピンチにも動じない。センバツの2回戦逆転サヨナラ負け(対東海大菅生)からの成長を感じさせた。2年生主体のチーム構成だが、捕手の中川が攻守両面で要になっていて、下級生も安心してプレーできている。京都大会からそうであったように、打撃戦でも投手戦でも簡単に主導権を渡さないたくましさがある。投手戦が予想される二松学舎大付(東東京)戦でも先手を取りたい。

近畿6校全て初戦突破は史上初

 宮崎商のコロナ辞退で戦わずして3回戦に進んだ智弁和歌山は、高松商(香川)と8強入りを懸ける。智弁和歌山の今チームは投手力がいいので、失点はある程度は計算できるだろうが、2番・浅野翔吾(2年)らが当たっている高松商の打線は侮れない。初めての試合となるだけに、序盤戦がポイントになりそうだ。近畿勢が6校全て初戦を突破するのは、一県一校制が定着した昭和53(1978)年以降初めて。2回戦で大阪桐蔭と近江の対戦はあるが、相対的に見ても、優勝争いの中心になりそうで、準々決勝以降の組み合わせにも注目したい。

関東、九州勢が不振

 近畿勢とは対照的に、関東勢の不振が目立つ。22日まで残っているのは、日本航空(山梨)、専大松戸(千葉)、二松学舎の3校だけで、甲子園優勝経験のある前橋育英、作新学院(栃木)、浦和学院(埼玉)が1勝もできず姿を消した。また九州勢も、熊本工に勝った長崎商沖縄尚学の2校しか勝ち残っていない。センバツ準優勝の明豊(大分)が専大松戸に完敗したのは意外だった。東北勢は、浦和学院を倒した日大山形や剛腕を擁する明桜(秋田)、強打の盛岡大付(岩手)の活躍に期待したい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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