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注目3試合を徹底分析!  いよいよセンバツ開幕

森本栄浩毎日放送アナウンサー
2年ぶりのセンバツがいよいよ始まる。1回戦から好カード目白押しだ(筆者撮影)

 昨年の春夏甲子園中止を受け、2年ぶりのセンバツがいよいよ始まる。コロナ対策の一環でフリー抽選となった結果、同地区対戦3カードなど、1回戦から目が離せない。特に激戦、熱戦が予想される3試合をピックアップして、詳しく分析してみたい。

智弁学園ー大阪桐蔭

秋は智弁が快勝

 昨年秋の近畿大会決勝で激突した両雄が、いきなり本番の1回戦で当たる。近畿の組み合わせが決まった段階で最も可能性が高いと思われた決勝カードで、まさに実力通りだった。試合は7-3で智弁学園(奈良)に軍配が上がったが、大阪桐蔭がこのまま引き下がるはずはない。

3年前凌ぐ大阪桐蔭投手陣

 先発は智弁・西村王雅(3年)、大阪桐蔭・松浦慶斗(3年)の近畿決勝と同じエース左腕の顔合わせか。1年夏から甲子園で投げている西村は、精神的にたくましくなり、小坂将商監督(43)も全幅の信頼を寄せる。昨夏交流試合では、中京大中京(愛知)の高橋宏斗(中日)と互角の投げ合いを演じた。スタミナの心配はないが、突然、四死球から失点する可能性がある。特に序盤での大量失点だけは避けたい。一方の松浦は、秋は制球に徹してやや球威が落ちていたが、安定感で大阪桐蔭投手陣では一枚抜けた存在。右腕の関戸康介(3年)は秋の不調から脱した感があり、球威で松浦を上回る。竹中勇登(3年)は救援向きで、相手に傾きかけた流れを止められる。投手の総合力では3年前の春夏連覇時を凌ぎ、今大会随一を誇る。

智弁の長打力と大阪桐蔭の機動力

 打線は智弁の長打力が光る。入学早々から中軸を打つ前川右京(3年)を筆頭に、秋に打ちまくった山下陽輔(3年=主将)らが快打を連発する。二人は秋の大阪桐蔭戦で本塁打を放った。ポイントは、智弁の1、2番の出塁で、前川、山下に走者を置いて回したい。一方の大阪桐蔭も中軸に力がある。4番の池田陵真(3年=主将)はパワーがあり、うまさを兼ね備える5番の前田健伸(3年)は、西村から本塁打している。11試合12盗塁の野間翔一郎(3年)らの足を使った攻撃も魅力で、膠着状態とみるや、西谷浩一監督(51)はどんどん仕掛けてくるだろう。

優勝争い左右する実力校対決

 展開の予想は難しいが、智弁は近畿同様、先手を取りたい。逆に、西村が立ち上がりを攻められると、大阪桐蔭ペースになる。終盤まで均衡した試合なら、大阪桐蔭が先に動くだろう。智弁は交代機につけ込みたい。5点を超える点の取り合いになるとみる。一昨年の高校野球を振り返ると、夏の決勝の履正社(大阪)-星稜(石川)戦は、センバツ1回戦で実現していた。つまり、一昨年は実力ワンツーがセンバツの1回戦で当たっていたと言っても過言ではないのだ。大阪桐蔭と智弁は、今大会トップクラスの実力であることは間違いなく、この勝敗は確実に優勝争いを左右する

市和歌山ー県岐阜商

変化球の精度高い市和歌山・小園

 抽選会の司会をしていてうなったのがこの試合。今や甲子園で希少価値となりつつある公立校同士のハイレベルな対戦だ。今大会ナンバーワン右腕の呼び声高い市和歌山・小園健太(3年=タイトル写真)の甲子園デビュー戦の相手は、難敵中の難敵に決まった。小園のすごさは変化球の精度の高さにある。最速152キロの直球もさることながら、打者の手元まで直球と同じ軌道で近づき、鋭く変化する。特にツーシームは、大きく落ちたりシュート回転で沈んだりする。これにカットボールを交えるので、打者は的を絞りづらい。

県岐阜商は終盤に対応できるか

 試合のポイントは、県岐阜商打線の対応力だろう。小園は立ち上がりも無難で、いかに攻撃力のあるチームでも、一気に崩すことは不可能に近い。特にピンチではギアを上げてスキを見せない。したがって、得点機をどれだけモノにできるか。小刻みにでも加点できれば言うことないが、小園は試合展開を読めるので、終盤になれば対応力がないと押し切られる公算が大きい。

僅差に持ち込みたい市和歌山

 両校ともに捕手が主将で4番を打ち、バッテリーが浮沈のカギを握る。チームの総合力では県岐阜商がやや上回るが、小園が万全なら市和歌山が僅差で勝機をつかむだろう。県岐阜商の鍛治舎巧監督(69)は百戦錬磨で、最後の一球まで目の離せない熱戦が期待できる。

神戸国際大付ー北海

トップ級左右エースの対決

 4年前の夏にも初戦で当たり、終盤の逆転3ランで神戸国際大付(兵庫)が勝った。今大会も両校エースが素晴らしい数字を残していて、接戦が予想される。神戸国際の右腕・阪上翔也(3年)は、0.65の防御率で、32校エースの3位。また被安打率は1位で、奪三振率も2位だ。一方、北海(北海道)の左腕・木村大成(3年)の防御率0.34は1位で、奪三振率も3位。昨秋は52回2/3でわずか3点(自責2)しか取られていないとなれば、これはただただ驚くしかない。

打線奮起したい神戸国際

 両エースが額面通りの投球をすれば、お互い1点取れるかどうかということになるが、何が起こるかわからないのが甲子園。3点前後の勝負とみる。特に気になるのが阪上の状態で、秋はひじの故障で万全ではなかった。青木尚龍監督(56)は、万一に備え、新戦力の投手をオープン戦で試している。秋は左打者が左投手に苦戦する傾向があったため、木村対策は怠りないはずだが、「下位でも長打を打てる」と青木監督は打線の奮起に期待している。

2年ぶり甲子園にふさわしい開幕カード

 4年前の対戦はお互いにかなり意識している。抽選会当日、両校主将が、その試合に触れているし、青木監督も、「北海と当たる夢を見た」というほどの、因縁の相手でもある。開幕試合にふさわしい好カードで、2年ぶりの甲子園の高校野球を、存分に堪能させてくれるだろう。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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