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履正社が星稜を返り討ち! 磐城は大善戦も惜敗

森本栄浩毎日放送アナウンサー
履正社-星稜の昨夏決勝再戦は履正社が圧勝。磐城は大善戦も惜敗した(筆者撮影)

 甲子園の高校野球交流試合も後半戦がスタート。その最初のカードが履正社(大阪)と星稜(石川)という昨夏の決勝の再戦で注目された。試合は、大阪独自大会から打線好調の履正社が、序盤で大差をつけ、そのまま圧勝した。昨春からの両校の対戦は、履正社が2勝1敗で勝ち越した。

星稜は極端なシフトが裏目に

 初回に2点を先制した履正社は、2回も2死満塁と攻める。ここで強打の3番・小深田大地(3年)を迎え、星稜は二塁手を一、二塁間に寄せる極端なシフト。これが裏目に出て、流れを失った。小深田は外角球に泳がされたが、打球は緩く二塁手の本来の守備位置に転がって抜けた。これで二者がかえり、流れが完全に履正社に傾いた。このあとは、打ち取られた当たりが面白いようにヒットゾーンに飛んで、一気に6得点。星稜エースの荻原吟哉(3年)は運にも見放され、まさかの2回8失点でマウンドを降りた。

履正社・岩崎は完投で締めくくる

 星稜も打線は甲子園準優勝の昨年を上回ると評判だったが、この大差で履正社のエース・岩崎峻典(3年)に余裕を持たれた。安打は出るが散発でつながりを欠き、3回の3番・中田達也(2年)の犠飛による1点だけ。中盤以降は星稜救援陣も奮闘したが、最後まで流れを変えられなかった。岩崎は完投で、終わってみれば10-1の圧勝。岩崎は昨夏の優勝マウンドを再現し、高校生活を締めくくった。

関本は父を追ってさらなる高みへ

 この日はバッテリーを組んだ関本勇輔(3年=主将)も攻守に大活躍だった。第2打席で適時打を放ってエースを援護すると、難しい邪飛をバックネットに激突しながら好捕。星稜の二盗を3度も阻止して、守りの要としての本領も発揮した。阪神で活躍した父・賢太郎氏(41)がスタンドで見つめる中、関本は、「父にはまだまだほど遠いが、将来はプロで活躍したい。父と同じ甲子園でプレーしたい」と、さらなる高みを目指す。

星稜も「必笑」貫く

 昨夏の雪辱はならなかったが、星稜も最後まであきらめず頑張った。昨年の遊撃手から今チームでは捕手としてチームを引っ張った内山壮真(3年=主将)は、「みんな最後まで声がよく出ていたし、『必笑』(ひっしょう=チームのモットー)は貫けた。甲子園は自分に成長を与えてくれた」と、完敗にもすがすがしい表情。林和成監督(45)は、「この1年、苦しい中、内山がよくやってくれた。『お疲れさん』と声を掛けたい」と、1年夏からチームの中心として活躍してきた主将をねぎらっていた。

磐城の前監督が異例の試合前ノック

 第二試合には、21世紀枠でセンバツ出場をつかんだ磐城(福島)が登場。3月の異動で磐城を離れた木村保・前監督(50)が、磐城のユニフォーム姿で試合前ノックを行うというサプライズがあった。本来ならあり得ない話であるが、今回は特別な舞台であり、主催者が粋な計らいをした結果で、磐城ナインがそれに応える素晴らしい試合を見せた。

「たくましくなった」と涙の前監督

 国士舘(東京)相手に一歩も引かず、6回表に6番・草野凌(3年)がしぶとく同点打を放つ。直後に勝ち越されたが、終盤は毎回安打で食い下がった。エース・沖政宗(3年)は粘り強く投げ、バックも国士舘の果敢な走塁に、木村・前監督仕込みの正確なスローイングで対抗した。3-4で惜敗したが、安打数は同じで、塁上をにぎわした走者はかなり国士舘を上回っていた。大善戦と言える。木村・前監督は、最後までかつての教え子たちの雄姿をまぶしそうに見つめていた。「彼らの動きを見て、たくましくなったなと思い、涙が出た。最後まで粘る、磐城の持ち味が出たいい試合をしてくれた。甲子園は力を与えてくれる。やはり皆が追い求めているグラウンドなんだと思った」と感無量の面持ちで夢のような時間を振り返っていた。

倉敷商は理想的な展開に

 第三試合は地区大会優勝校同士の対戦で、倉敷商(岡山)の継投が見事に決まり、中盤で一気に流れをつかんだ。立ち上がりこそ、仙台育英(宮城)の左腕・向坂優太郎(3年)に抑えられ、4回に先制を許したが、前の塁を狙う相手走者を二度刺して1点で切り抜けたのが大きかった。先発の福家悠太(3年)がつかまると見るや、左腕・永野司(2年)へ早めの継投。これで流れを呼び戻し、中盤以降、向坂をよく攻めた。上位打線が球をしっかり見極め、要所で適時打につなげる理想的な展開で差を広げて、6-1と快勝した。

お互いの監督から「粘り強く」

 試合後の両監督の話に、同じ言葉が出てきた。甲子園初采配の倉敷商・梶山和洋監督(33)は、「粘り強い生徒たちに支えられたチーム。粘り強い試合ができた」と晴れやかな表情で語れば、敗れた仙台育英の須江航監督(37)も、「倉敷商さんは強かった。向坂をよく研究していて、粘り強く攻められた」と脱帽。この試合では両校とも下級生が活躍し、次のチームが楽しみだ。

中森と来田が登場

 5日目には、昨年の春夏甲子園4強に貢献した明石商(兵庫)のドラフト上位候補が登場する。エース・中森俊介(3年)と俊足強打の来田涼斗(3年=主将)だ。1年夏から甲子園で活躍する彼らにとって最後の試合となる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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