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大阪桐蔭ー東海大相模の初対決などビッグカードずらり!  甲子園交流試合後半戦

森本栄浩毎日放送アナウンサー
交流試合後半戦は、ビッグカードがずらり。大物選手の活躍にも注目だ(筆者撮影)

 甲子園の交流試合は、後半の9試合が15日から行われる。例年なら「1回戦にはもったいない」と言われるようなカードもいくつかあるが、各校1試合だけなので、この方が選手もファンも心残りが少なくてすむ。センバツが行われていれば優勝争いの中心とみられた大阪桐蔭、履正社の「大阪2強」は、トップクラスの強豪と当たることになった。

履正社ー星稜は「3大会連続」

 まずは、4日目の第一試合で昨夏の決勝カードが再現される。両校は昨春の1回戦で当たり、星稜・奥川恭伸(ヤクルト)が完封。夏の決勝では、井上広大(阪神)の3ランなどで履正社が雪辱して、初優勝を果たした。今回は、事実上の「三大会連続対決」となる。過去の3大会連続は後年までの語り草となる名勝負となっていて、60年前の昭和35(1960)年夏から翌年春夏にかけての法政二(神奈川)と浪商(現大体大浪商=大阪)は、法政二の連勝を受けて、最後に浪商が雪辱し、法政二の3大会連続優勝を阻んだ(大会は浪商が優勝)。また、横浜(神奈川)とPL学園(大阪)の平成10(1998)年春夏から翌年春にかけての3大会連続対決では、松坂大輔(西武)がPLの前に立ちはだかった。夏の延長17回の死闘は、平成で最高の名勝負とも言われ、PLが翌春の3度目の対戦で一矢報いた。いずれかの3連勝では終わっておらず、今回もこれまで1勝1敗。決着戦の行方やいかに。

独自大会では明暗

 直前の独自大会では対照的な結果になった。履正社は大阪桐蔭に9-3で快勝し、最大のライバルを夏の直接対決で21年ぶりに倒した。一方の星稜は、日本航空石川に1-2で競り負け、県内での連勝が39でストップした。この影響は少なからずあるとみる。特に履正社は打線が好調だ。3番・小深田大地(3年)や4番・関本勇輔(3年=主将)が勝負強い打撃を見せる。

履正社のエース・岩崎は、直近の大阪独自大会で大阪桐蔭を抑え、自信をつけた。速球の威力が増し、さらにたくましくなっている(筆者撮影)
履正社のエース・岩崎は、直近の大阪独自大会で大阪桐蔭を抑え、自信をつけた。速球の威力が増し、さらにたくましくなっている(筆者撮影)

 昨夏の優勝に貢献したエースの岩崎峻典(3年)は球威が増し、控えの内星龍(うち せいりゅう=3年)が急成長した。普通に大会が開かれていれば、優勝候補の一番手に推せる。星稜は、甲子園経験豊富なエースの荻原吟哉(3年)に安定感はあるが、内山壮真(3年=主将)が牽引する打線が、どこまで履正社投手陣を脅かせるか。星稜は、接戦に持ち込んで終盤に勝機をつかみたい。

磐城の前監督が試合前ノックに

 第二試合は、磐城(福島)と国士舘(東京)の顔合わせ。磐城のエース・沖政宗(3年)は、力強い速球を投げ、変化球も多彩だ。国士舘は、186センチの右腕・中西健登(3年)が横手から、低めに球を集める。西東京の独自大会は佼成学園に敗れて4強止まりだったが、この試合に中西は登板していない。打撃陣は犠打を絡めてうまい攻めを見せ、好機に強い。磐城はしっかり守って沖を盛り立て、終盤まで競り合えば勝機が出てくる。異動で磐城を離れた木村保・前監督(50)が、主催者の粋な計らいで試合前ノックをすることになった。守り勝ちたい磐城にとっては追い風だ。

経験値で上回る仙台育英

 第三試合は、仙台育英(宮城)と倉敷商(岡山)の昨秋地区大会優勝校同士。仙台育英は宮城の独自大会で優勝し、その後の独自の東北大会では準優勝した。かなり試合を重ねていて、消耗は気になるが、選手層は厚い。投手陣は、左腕の向坂優太郎(3年)を軸に、エース級がずらり。調子が出ないと見るや、すぐに交代させられる。打線も入江大樹(3年)や宮本拓実(3年)らが健在で、経験値で上回る。倉敷商は、左腕・永野司(2年)から福家悠太(3年)へとつなぐ得意のパターンで終盤まで互角に渡り合いたい。

明石商の中森、来田に注目

 5日目の第一試合には、昨年春夏甲子園4強の明石商(兵庫)が登場して、桐生第一(群馬)と対戦する。

昨年春夏4強の明石商・中森も、高橋宏(中京大中京)同様、進学か、プロか、進路が注目される(筆者撮影)
昨年春夏4強の明石商・中森も、高橋宏(中京大中京)同様、進学か、プロか、進路が注目される(筆者撮影)

 ドラフト上位候補のエース・中森俊介(3年)と、昨年センバツで先頭&サヨナラ本塁打を演じた来田涼斗(3年=主将・タイトル写真)にとって最後の晴れ舞台だ。独自大会では、延長タイブレークで中森が踏ん張れずに敗れたが、どこまで切り替えられるか。桐生第一は、母親がロシア人という蓼原慎仁(3年)がエースに成長し、ライバルの健大高崎を破って秋に続き群馬を制した。経験では明石商に劣るが、勢いに乗って強豪に挑む。

健大の好左腕に挑む帯広農

 第二試合にも群馬勢が登場し、健大高崎帯広農(北海道)と当たる。秋は、終盤の競り合いで無類の強さを発揮した健大に対し、帯広農が持ち前の粘りでどこまで食い下がれるか。健大の左腕・下慎之介(3年)は、長い腕を生かして角度のある速球と大きく曲がる変化球で三振の山を築く。打線の活躍で秋の北海道4強に食い込んだ帯広農は、少ない好機をモノにしたい。

独自大会優勝同士

 第三試合は、昨夏甲子園2勝の鶴岡東(山形)と、日本航空石川の対戦。ともに独自大会でも優勝していて、自信を持って甲子園に乗り込めるはずだ。昨夏からメンバー一新で、唯一のレギュラーだった山路将太郎(3年)が打線を引っ張る鶴岡東は、秋のチーム打率が.419で、32校中2位だった。投手陣は継投策で、質、量とも申し分ない。対する航空石川は、星稜を破って勢いに乗る。191センチの大型右腕・嘉手苅(かてかる)浩太(3年)の速球に注目。控えの田中颯希(3年)も実績十分で、3点前後の競り合いになりそう。

相模の強打と大阪桐蔭投手陣

 最終日の第一試合で、大阪桐蔭東海大相模(神奈川)のスーパーカードが実現した。両校は意外にも甲子園では対戦しておらず、ファンからすれば「夢のカード」だ。焦点は、大阪桐蔭投手陣と相模の強力打線の対決になる。U18代表の鵜沼魁斗(3年)や山村崇嘉(3年=主将)、西川僚祐(3年)らを軸に、パワーとうまさを兼ね備えた打者が揃い、破壊力は全国屈指。昨年の近江(滋賀)戦で見せた走塁技術の高さも脅威だ。受けて立つ桐蔭投手陣は、エース左腕の藤江星河(3年)が軸になる。

大阪桐蔭の主砲・西野の豪快な打撃フォーム。高校通算30本塁打のパワーを甲子園で見せられるか(筆者撮影)
大阪桐蔭の主砲・西野の豪快な打撃フォーム。高校通算30本塁打のパワーを甲子園で見せられるか(筆者撮影)

 先の独自大会では履正社に打ち込まれていて、ショックから立ち直っているか。松浦慶斗関戸康介の左右の2年生投手は有望で、球威で藤江を上回る。打線は、高校通算30本塁打の西野力矢(3年)が軸で、独自大会欠場の仲三河優太(3年)が出場できれば、厚みが増す。5点以上のもつれた展開を予想する。

東西強豪同士が初対戦

 大阪桐蔭が春夏甲子園優勝8回に対し、東海大相模も4回で、勝利数は桐蔭63に対し、相模は42。相模は準優勝も3回あるので、決勝進出回数はほとんど変わらない。高校球界を代表する強豪同士だが、甲子園初対決とは驚いた。桐蔭は神奈川勢に2勝(いずれも横浜)し、相模も大阪勢に3勝(PLに2勝、履正社に1勝)と、お互い負け知らずだ。本大会でないのは残念だが、ファンだけでなく、OBも勝敗の行方は気にかかるところだろう。

投打に充実の智弁和歌山

 第二試合は、智弁和歌山尽誠学園(香川)のカード。投打に戦力充実の智弁和歌山が優位だ。エース・小林樹斗(3年)は速球に磨きがかかり、独自大会で152キロの自己最速をマークして優勝に花を添えた。秋の不調から完全に脱し、完成度も上がっている。昨夏も投げた左腕の矢田真那斗(3年)もいて、投手陣に死角は見当たらない。打線も1年から4番を打つ徳丸天晴(2年)が成長し、主将の細川凌平(3年)が攻守両面でチームの中心となる。尽誠は、左腕の村上侑希斗(3年)が、香川独自大会決勝で高松商を完封した。甲子園でも低めを丁寧について、堅守で智弁の攻撃をかわしたい。

北海道ナンバーワン右腕と常連校

 交流試合のフィナーレは、白樺学園(北海道)と昨夏まで4年連続選手権出場の山梨学院の対戦。3点前後の競り合いが予想される。

白樺学園の片山は最速148キロの速球が武器。甲子園からプロへの道が開けるか(筆者撮影)
白樺学園の片山は最速148キロの速球が武器。甲子園からプロへの道が開けるか(筆者撮影)

 白樺の片山楽生(らいく=3年)は、北海道ナンバーワン右腕の呼び声高い。速球だけでなく、変化球も多彩で投球術もある。小吹悠人(3年)、栗田勇雅(3年)ら、甲子園経験者が残る山梨学院でも、打ち崩すのは容易ではないだろう。山梨学院は、ライバルの東海大甲府に独自大会決勝で、4-5と惜敗したばかり。中二日での試合となるため、疲労が懸念される。白樺は、片山を楽にするためにも、先制点が欲しい。

「やり切って」後輩たちに託して

 後半戦はビッグカードが多く、1試合だけで終わらせるのはもったいない気がする。しかし、本来はなかった試合であり、3年生は、後輩たちにチームの将来を甲子園で託せる、またとない機会だ。前半戦で、多くの選手、監督が、「やり切った」という言葉を残して甲子園を後にした。その思いは、必ず後輩たちに受け継がれるはずだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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