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温度差あっても、それぞれに精一杯の夏!  高校野球独自大会に思う  

森本栄浩毎日放送アナウンサー
甲子園なしの地方大会も中盤。温度差はあっても球児たちは全力で戦う(筆者撮影)

 夏の甲子園がなくなり、全国の都道府県高野連主導で「独自大会」が開かれている。23日には秋田で決勝があり、明桜が優勝を決めた。大会の推移はまちまちで、夏休み短縮の影響で、土日や休日だけしか試合を行わない地区が多い。それでも各高野連が球児たちのために、最大限、腐心したことは間違いない。

近畿でも決勝まで行わない大会が

 新チームの公式戦が早い地区では、決勝までのトーナメントを行わないところもある。したがって、この夏の優勝校は決まらない。近畿では、京都と兵庫がそれに該当する。この両府県は、敗者復活戦があり、新チームの日程が非常にタイトになっている。奈良は当初、各チーム1試合だけの予定だったが、それを撤回し、トーナメントにした。和歌山は例年通り、全ての試合がテレビとラジオで中継される。筆者は、全国で最も恵まれているのは和歌山の球児だと思っていたが、この手厚さは、さすがというほかない。唯一の違いは、優勝しても甲子園に行けないことだ。学校数が多い大阪は、平日の夕刻などを使って試合を消化している。兵庫は、カードは発表されたが、日時と球場を公表していない。感染防止のためとはいえ、この徹底ぶりもすごい。3年生のための大会と位置づけ、本来なら勝利に欠かせない有力下級生を、敢えて外している強豪校も少なくない。プロを目指す選手が木のバットを使うなど、これまでならあり得ない話だ。

運悪く土曜日に雨

 例年ならこの時期、4~5日は、高校野球取材に充てているが、今年は全く行けていない。まず、平日の試合が少ないこと。そして、折悪しく、阪神とオリックスが長く居座ったため、週末も空けられなかった。ナイター前に行く予定だった土曜日は雨で、肝心の試合が中止になっている。今週もしかりで、つくづく運がない。それでも、「バーチャル高校野球」でのチェックは欠かしていない。

岩手では感動的シーンが

 岩手の準決勝は感動的だった。延長13回のタイブレークで、1点を先行された一関学院が、逆転サヨナラで高田を破った。試合後の模様もしっかり中継され、敗れた高田の選手たちの号泣する姿に、熱い思いが伝わってきた。たとえ甲子園がなくとも、皆で共有した時間は何ものにも変えられない。ましてや、今コロナ禍で、例年よりも一緒に過ごした時間が少なかっただけに、指導者との絆や友情の大切さを痛感したのではないか。

滋賀は初戦で昨夏決勝の再現

 出身県の滋賀の大会には、毎年、必ず行くことにしている。今年の独自大会は、例年の皇子山と彦根に、湖東を加えた3会場での開催だ。その初戦(2回戦)では、近江と光泉カトリック(光泉から改称)の昨夏の決勝カード(タイトル写真)が再現された。湖東の早朝試合だったため、「バーチャル」で観戦した。昨夏の近江・林優樹(西濃運輸)による1-0の完封劇は本当に見事で、今年もそれに近い好試合になるだろう。3年生の力量なら、光泉も見劣りしない。近江の初戦敗退もありうると予想していた。両校の投手が踏ん張って6回を終わり0-0。7回のマウンドに向かう近江のエース・田中航大(3年)の足がつり、緊急事態に。中継ではアナウンサーの実況がなく、球場の音に頼るしかない。ここで背番号18がマウンドに向かった。

近江の1年生が窮地を救う

 スコアボードの表示は「山田」。中学(瀬田レイカーズ)時代から評判の山田陽翔(はると=1年)だった。これには驚くしかなかった。部員が非常に多い近江のこと、多賀章仁監督(60)は、メンバーを3年生で固めると思っていたからだ。山田を起用した瞬間、「勝ちにきたな」と直感した。案の定、山田は7回を3人で抑えると、最初に回ってきた打席で適時打を放ち、そのまま1-0で逃げ切った。3年生のための大会で、1年生が窮地を救って勝利をプレゼントしたのである。1月に監督と会った際も、夏の滋賀大会3連覇にはかなりこだわっていた。湖国の王者は、ベストの布陣でいつもと同じ夏を過ごしている。

36年目で「初めての夏」

 筆者も、甲子園での「交流試合」に向け、準備をしている。そのための番組やユーチューブ配信(トークショー)もあって、傍観者だった例年とは違う夏になった。アナ生活36年目で訪れた初めての経験については、次回、詳しく述べたい。

 

 

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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