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万策尽き果てた!  急転、史上初のセンバツ中止

森本栄浩毎日放送アナウンサー
球児の夢は、無情にも奪われた。11日、センバツ史上初の中止が決定した(筆者撮影)

 新型コロナウイルス感染拡大による各種イベントの中止が相次ぐ中、先週4日、無観客による開催をめざすとしていたセンバツ大会。主催者はこの一週間、選手たちの安全を守る手段を懸命に模索していたが、事態は一向に好転せず、ついに万策尽き果てた。

2度の震災乗り越えたセンバツだったが

 11日の会見は午後6時からの予定だったが、30分ほど前にNHKが速報を打った。筆者は仕事のために、社にとどまって会見を見守るつもりだったが、一瞬、血の気が引くような感覚に見舞われた。長い歴史の中での初めてのセンバツ中止だ。戦争による中断はあったが、予定されていた大会がなくなるのは初めて。95(平成7)年の阪神淡路大震災、奇しくも9年前のこの日に起こった東日本大震災と、二度の震災を乗り越えてきたセンバツも、全世界を巻き込む新型コロナウイルスには勝てなかった。つい一週間前は、開催に向け、明るい展望が開けていただけに、選手たちの落胆はいかばかりかと察する。

この二日で一気に暗転

 事態は直前になって、暗転した。9日に高野連の小倉好正事務局長は、開幕延期が決まったプロ野球の対策会議にオブザーバーとして出席し、「センバツは独自の判断をする」と話していた。しかし、感染症などの専門家からいい感触が得られなかったようだ。この日の会見でも、「選手だけでなく、家族やその周辺も気をつけないといけない」との進言があったという。「これでは不十分」と言われたのと同じだ。また、高野連の八田英二会長が、「ここ数日で、大阪、兵庫で感染者が増えている。選手の宿舎は大阪と兵庫にあるので」と話したが、感染状況の悪化が顕著になってきたことも、中止を決断する要因になった。そして、決定打は、前日10日の首相による、「イベント自粛要請10日間延長」だと、筆者は考える。丸山昌宏大会会長(毎日新聞社社長)は明言こそしなかったが、「頭には入っている」として、影響を否定しなかった。

終息すれば何らかの形で甲子園を

 八田会長は、「選手の健康と安全が第一」として、それが担保できない状況での開催はできないと強調した。「世の中にはこのような厳しい決断を迫られることもある。私たちもやりたいが、できない。それを選手たちには理解してほしい」と声を絞り出し、「これをメッセージとして贈りたい」と教育者としての一面をのぞかせた。主催者は、「(コロナ禍が)終息すれば、何らかの形で甲子園を経験させたい」とも話した。今は、悔しく空虚な時間を送る選手たちも少なくないと察する。しかし、賢明な彼らは、大人たちがギリギリまで開催の道を探って努力したことを、必ず悟るだろう。そして、選出されたという事実はいつまでも残る。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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