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センバツ出場校はここだ!   全国各地区大会終了

森本栄浩毎日放送アナウンサー
各地区大会が終了。来春は大阪2強など強豪が数多く甲子園に出場しそうだ(筆者撮影)

 10日の東京大会を最後に、全国10地区の大会が終わった。来春のセンバツには32校が出場する。明治神宮枠と21世紀枠(3校)を除く28校は、地区大会の成績をもとに選考される。微妙な地区もあるが、有力校を探ってみたい。( )内は出場枠数で、関東と東京、中国と四国は抱き合わせ枠あり。

白樺学園が初めての春 北海道(1)

 打線好調の白樺学園が、4試合中3試合で2ケタ得点。初めての春を確実にした。北海道は全体的に大味な試合が多く、投手を含めた守りが課題のチームが目立つ。準優勝の札幌日大もよく食い下がったが、決勝では打ち負けた。夏の地区割りで、「北北海道勢」が秋の頂点に立ったのは、2007(平成19)年の駒大岩見沢以来、12年ぶりとなる。公立の帯広農が4強に残る健闘で大会を盛り上げた。白樺学園は帯広に隣接する芽室町にあり、帯広農とは至近。帯広農は21世紀枠に期待したい。

夏の勢い残る仙台育英、鶴岡東 東北(2)

 今夏の甲子園で8強入りした仙台育英(宮城)が、鶴岡東(山形)との乱打戦を11-8で制して優勝した。準決勝では、有力校のひとつだった盛岡大付(岩手)を8回コールドで寄せつけなかった。1年生で大舞台を経験した左腕の笹倉世凪と木村航大のバッテリーが健在なのは心強い。鶴岡東は、今夏、同校にとって初の一大会2勝。レギュラーだったのは二塁手の山路将太郎(2年)だけで、メンバーはほぼ一新したが、夏の勢いは衰えていない。41年ぶりのセンバツが濃厚だ。この二校に盛岡大付が続く。

群馬勢が神奈川勢を圧倒 関東(4.5)

 関東大会は、開催県特権で、唯一、3位までが出場できる。健大高崎(群馬)が、その幸運にも恵まれ、優勝候補筆頭の東海大相模(神奈川)を破る殊勲で、頂点まで駆け上がった。準優勝は山梨学院で、花咲徳栄(埼玉)、桐生第一(群馬)の予選1位校を1点差で破る勝負強さを発揮した。昨夏から4大会連続の大舞台になりそう。開催県1位はスーパーシードになるのも関東の特徴で、桐生第一は、初戦の準々決勝で桐光学園(神奈川)相手に中島優月(2年)の満塁弾などで圧倒し、当確ラインの4強入りを果たした。今泉壮介監督(40)にとっては初の大舞台になる。東海大相模は、準々決勝で難敵の習志野(千葉)に完勝したが、準決勝では健大に大敗。夏の甲子園同様、投手陣の脆さを露呈した。ただし、打線の破壊力は来春の甲子園でも大きな注目を浴びるだろう。5番手は、徳栄と、健大にサヨナラで惜敗した西武台の埼玉勢の争いか。西武台にとっては32年ぶりの甲子園チャンスだ。

帝京の10年ぶりセンバツは苦しく 東京(1.5)

 昨年に続く秋の都王者を狙った国士舘は、長身サイドハンドの中西健登(2年)がエースに成長。準決勝の城東戦での無四球2安打完封に続き、連投となった帝京戦でも2安打完封。2年連続優勝の立役者となった。この時期に強い伝統は確実に継承されている。今春は、大会前に主力が相次いで故障し、不本意な初戦敗退だった。ベテラン・永田昌弘監督(61)は、「このチームはかなり伸びしろがある」と、雪辱を誓っている。激戦ゾーンに入り、苦しい試合を僅差で勝ち抜いた帝京は、決勝でまさかの0-6と完敗を喫し、10年ぶりのセンバツは、かなり厳しい状況となった。同じ敗れるにしても、僅差であれば、準決勝までの勝ち試合を評価対象にもできるが、決勝での内容を問われると、関東勢に枠を譲る公算が大きい。

星稜が圧倒的強さで2連覇 北信越(2)

 前世代で全国の中心的存在だった星稜(石川)が、新チームになっても盤石の強さを発揮し、昨春から5大会連続の甲子園を確実にした。甲子園を経験した荻原吟哉、寺西成騎(いずれも2年)の投手陣に、1年夏から4番を打つ内山壮真(2年=主将)が捕手に転向。奥川恭伸(ヤクルトから指名)-山瀬慎之助(巨人から指名)の強力バッテリーの後を継ぐ。絶対的エースはいないが、得点力は前チームを上回る。その星稜に、石川大会と北信越決勝で大敗した日本航空石川が2番手。実力差は歴然だが、準々決勝で、好投手・笠島尚樹(2年)の敦賀気比(福井)を7-3で破った星が光る。準決勝で星稜にコールド負けした佐久長聖(長野)が続く。

中京大中京、県岐阜商の2大名門 東海(2)

 

 大会前から有力視されていた名門2校が決勝に残った。中京大中京(愛知)は、最速148キロ右腕の高橋宏斗(2年)、同147キロ左腕の松島元希(2年)の両輪を軸に、投打のバランスがいい。決勝では追いつかれた直後の9回に3点を奪って、投手陣を援護した。県岐阜商は、OBでもある鍛治舎巧監督(68)が昨年3月からチームを率いる。準々決勝で強敵の愛工大名電(愛知)に競り勝ち、準決勝では初の甲子園出場に燃える加藤学園(静岡)に主導権を握られる苦しい展開。それでも3点差を追いつき、延長サヨナラで振り切った。鍛治舎監督の冷静な采配が光る。中京は甲子園通算133勝、県岐阜商は87勝で、特にセンバツでは両校とも戦前から活躍してきた。その2大名門が、揃ってユニフォームを変えている。中京はかつての襟付きに戻し、県岐阜商はカラフルに一新した。甲子園のファンがどんな反応をするか、興味深い。東海の3番手は難しいが、準決勝で惜敗の加藤学園を推したい。

「大阪2強」倒し、天理が栄冠 近畿(6)

 準決勝が、いずれも「奈良-大阪」となり、「大阪2強」を連破した天理(奈良)が、秋の近畿大会最多の9回目の優勝を果たした。近畿は、大阪と兵庫が3校固定で、滋賀と京都、奈良と和歌山は交互に3校が出場できる。今回は滋賀と奈良が3校で、天理は奈良の3位からの優勝だった。決勝の大阪桐蔭戦は、初回からアーチ合戦となり、6回の猛攻で主導権を握って12-4で圧勝した。準決勝の履正社戦は、敗色濃厚だったが、9回に失策の走者から好機を広げて逆転サヨナラ勝ちした。全国屈指の実力を持つ2校を公式戦で破ったことは価値がある。「大阪2強」に関してはすでに述べている通りで、近畿での再戦も期待されたが、準決勝でエースを温存した履正社が先に負けた。履正社の岡田龍生監督(58)は、「(エースの)岩崎(峻典=2年)に続く投手が出てこないと」と話していたが、控えの辰巳颯(2年)が力投し、一定の成果はあった。大阪桐蔭は、準々決勝の明石商(兵庫)戦に全力を傾注した。序盤の劣勢を、主砲・西野力矢(2年)の3ランで追いつくと、相手の暴投で得た勝ち越し点を、エース・藤江星河(2年)が守り切り、4-3で僅差勝ち(=タイトル写真)した。今大会のハイライトはこの試合だ。敗れた明石商も、実力では引けをとらない。エース・中森俊介(2年)、1年から甲子園で活躍する来田涼斗(2年=主将)の投打の軸が健在で、得点力は前チームと遜色ない。先輩の水上桂(楽天から指名)が好捕手で、これまで水上に頼って投げていた中森が、同じような気持ちで投げられれば、前チームの再来もある。

明暗分かれた智弁対決 最後の1校は?

 智弁学園(奈良)は、1年生が活気をもたらす。エース左腕の西村王雅と右腕の小畠一心、それに主砲の前川(まえがわ)右京は、すでに夏の大舞台を経験している。彼らがひと冬越えて、どれだけ成長するか楽しみだ。特に前川の打棒は鮮烈で、将来のドラフト上位候補に挙がってくるだろう。ここまでの5校が近畿の当確チームだ。最後の1枠を智弁和歌山京都翔英が争う。ともに予選は1位で、準々決勝の試合内容が比較検討の材料になる。智弁和歌山は、智弁学園との「兄弟対決」に、13-17という大乱戦の末、敗れた。この大量失点が響かないか。翔英も、履正社を相手によく食い下がったが、8回に痛恨の3ランを浴びて3-10でコールド負けした。多彩な投手陣でよくしのいだものの、安定感に欠ける。順当なら智弁和歌山が滑り込みそうだが、そうなると紀和3校に対し、京滋ゼロはバランスも悪い。筆者は五分五分とみている。

名門・倉敷商が初優勝 中国(2.5)

 序盤戦では山陰勢の活躍もあったが、やはり最終的には山陽勢が上位に食い込んだ。倉敷商(岡山)は、県2位ながら、準決勝で広島新庄に延長11回粘り勝ち。決勝では、地元優勝を狙う鳥取城北を序盤からリード。追い上げを辛くも振り切って9-7で優勝した。意外にも、秋の中国大会初優勝だ。鳥取城北は、あと一歩及ばなかったが、試合内容は互角だった。準決勝では、優勝候補の創志学園(岡山)相手に、中盤の猛攻で圧倒し、コールドで退けた。四国勢との比較になる3番手は、準決勝の試合内容から広島新庄がやや有利か。創志は、昨年に続き、準決勝で痛いコールド敗退となった。

明徳が無類の強さ発揮 四国(2.5)

 高知大会3位に甘んじ、1回戦からの登場となった明徳義塾が、そのうっ憤を晴らすかのような猛爆で圧勝した。特に圧巻だったのが、準決勝の高知中央戦。高知大会準決勝では1点差で敗れていたが、1、2回にいずれも8得点し、2回までで16得点。16-1の5回コールドで、甲子園が懸かった勝負の厳しさを見せつけた。準優勝の尽誠学園(香川)も、初の甲子園へ期待が高まる公立の岡豊(おこう=高知)に、準決勝でコールド勝ち。18年ぶりのセンバツを手繰り寄せた。甲子園未経験の高知勢はいずれも準決勝で大敗し、どちらが3番手になっても中国勢との比較では不利だ。ただし、この抱き合わせ地区は、21世紀枠とも微妙に絡み合うので、予断を許さない。

大分勢が2年連続のアベック出場へ 九州(4)

 大会前の予想通り、大分勢が強さを発揮し、2年連続のアベック出場は間違いない。県、九州とも明豊が勝ったが、大分商も好投手がいて地元は盛り上がるだろう。明豊は、今春も投げたエース左腕・若杉晟汰(2年)が、唐津商(佐賀)との初戦で序盤に大量失点するなど、調子は今一つだった。沖縄尚学にも苦戦し、終盤の激しい攻防を制して辛勝したが、神宮大会では復調した姿を見せてくれるはずだ。大分商のエース・川瀬堅斗(2年)は、ソフトバンク・川瀬晃(22)の弟で、最速147キロを誇る。23年ぶりのセンバツでも注目投手に挙げられるだろう。川瀬は、九州の決勝では登板していない。4強入りした創成館(長崎)は、宮崎日大にサヨナラ勝ちするなど、競り合ってしぶとさを発揮した。同じく4強の鹿児島城西は、元プロ選手で首位打者経験もある佐々木誠監督(54)が昨年1月からチームを率いる。W杯2回出場の大迫勇也(29)らを輩出するなど、サッカーの名門としては全国的にも有名。野球ではこれまで夏の鹿児島大会準優勝4回という悲運続きだったが、ついに甲子園出場という扉を開くことになる。九州は、準決勝進出4校で決することが大半で、内容的にも波乱の要素は極めて少ない。沖縄尚学と、準々決勝で大分商に敗れた福岡第一が続く。

21世紀枠は続々と候補が

 来月中旬の地区推薦9校が出揃ってから、本格的に検証するが、すでに有望なチームが名乗りを挙げている。磐城(福島)は、東北大会2勝で、夏の甲子園準優勝経験もある文武両道の名門だ。浜松西(静岡)も、地域を代表する進学校で、夏の甲子園で勝利したこともある。夏の開会式で女子生徒がプラカードを持って先導し、花を添える市西宮(兵庫)は、春夏の甲子園を経験している。近年はプロ選手も誕生するなど、チームに勢いが感じられる。近畿王者の天理と、近畿大会出場を争った奈良も期待の1校だ。どのチームが地区の推薦を得るか、注目していただきたい。

 

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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