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星稜・奥川圧巻! 自己最速151キロに17三振で履正社を寄せつけず

森本栄浩毎日放送アナウンサー
注目の星稜ー履正社は、17奪三振という奥川圧巻の投球で星稜が完勝した(筆者撮影)

 「すべての変化球でストライクが取れる。球威、コントロールとも、レベルの高さを見せつけられた」。試合後、履正社(大阪)の岡田龍生監督(57)が声を絞り出した。それくらい、星稜(石川)のエース・奥川恭伸(3年)の投球は、すべてにおいて群を抜いていた。今大会注目の優勝候補同士の激突は、星稜が、3-0で強敵・履正社を退けた。点差以上の完勝と言っていい。

「スタンドの雰囲気を味方に」

 奥川は、立ち上がりから自己最速を1キロ上回る151キロを2度も計測するなど、いつも以上に気合が入っていた。3回まで1安打6奪三振の内容も力みが目立ち、球数はジャスト50と、制球のいい奥川にしてはかなり多い。「今日は初回から飛ばそうと思っていた。スタンドの雰囲気を味方につけられた」と、スコアボードのスピード表示が出るたびに沸く甲子園を楽しんでいるかのようだった。それには、昨年の2度の苦い経験があったからだ。

甲子園での負けを生かして

 センバツでは、準々決勝で三重との死闘に敗れ、夏は済美(愛媛)戦で、足がつって早々に降板。勝ち試合を逃した。「これまでの(甲子園での)負けの経験が生きた。試合の中での押すところと引くところがうまくいった」とふり返ったように、要所でメリハリのきいた投球を披露した。なかなか追加点が奪えない状況でも、林和成監督(43)から指示された「長打だけは打たれない配球」を徹底し、苦しいはずの中盤3イニングを三者凡退で退ける。味方がようやく7回に2点目を奪うと、その裏の履正社の上位打線を、この日最少の9球で抑えて、試合の流れを決定づけた。8、9回こそ履正社の反撃にあってピンチを招いたが、最後は「対戦を楽しみにしていた」という相手の4番・井上広大(3年)を併殺にしとめ、堂々の3安打完封勝利。中盤以降は球数も安定し、毎回の17奪三振にしては少ない130球という圧巻の投球内容だった。

監督、主将が100点満点

 「初戦で、相手が履正社というプレッシャーの中、これだけの投球は大したもの。堂々と逃げ切ってくれた」と林監督は賛辞を惜しまない。初回の適時打で奥川を援護した捕手の山瀬慎之助(3年=主将)も、「すごく落ち着いていたし、まっすぐも変化球も切れていた。これまでで最高」と絶賛し、そろって奥川に「100点」をつけた。速球は言うまでもないが、これまでの甲子園と大きく違っていたのは、変化球の精度とキレで、今大会屈指の履正社打線でも、まったく対応できなかった。この日の投球内容なら、甲子園の歴代エースたちと比較しても遜色ない。

日程運恵まれ、石川勢初制覇へ

 これで、最難関とみられた履正社を倒した。おそらく、林監督も含めチームの全員が同じ気持ちだっただろう。こういう試合のあとには、エアポケットに入ったような試合をすることがしばしばある。これがトーナメントの難しさであり、面白さでもある。しかし今大会の星稜は、日程運に恵まれた。次の試合まで、最短でも中4日ある。この間に、心身ともにリセットし、石川勢初の甲子園制覇へ突き進む。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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