打倒!大阪桐蔭はどこだ?  夏の甲子園前半戦回顧

12日に出場56校が出揃い、優勝候補の大阪桐蔭や横浜などが勝ち進んだ(筆者撮影)

 史上最多の56校が集う100回記念大会は、開幕から一週間たって、ようやく全校が初戦を終えた。前日からは2回戦も始まり、2回戦スタートのチームは1勝でベスト16進出ということになる。今回は、準々決勝までの再抽選がないので、3回戦までの対戦相手はある程度予想できる。ここまでの回顧と今後の展望を。

大阪桐蔭は順調なスタート

 今大会最大の焦点は、大阪桐蔭(北大阪)の、「2度目の春夏連覇なるか」だ。作新学院(栃木)との初戦は終盤まで僅差で、楽な展開ではなかったが、危ない場面もなかった。8回に突き放したあと、柿木蓮(3年)が9回に1点を失ったものの、完投勝ち。まずは順調なスタートと言っていい。昨年は打線が振るわず投手に負担をかけた結果、8強目前でまさかの逆転サヨナラを許したが、今後は打線が上向きになってくると心強い。2回戦の相手、沖学園(南福岡)とはやや力の差があるように感じるが、初出場で初戦を突破していて勢いがついているはずで、油断は禁物だ。

横浜は左腕2枚で完勝

 選手個々の能力で大阪桐蔭に迫る横浜(南神奈川)は、3本塁打と左腕2枚の完封で愛産大三河(東愛知)を寄せつけなかった。中軸を打つ万波中正(3年)に当たりが出てくればさらに得点力も増す。次戦は夏の連覇を狙う花咲徳栄(北埼玉)との関東対決。徳栄は本塁打も放ったエース野村佑希(3年)にすべてを託す。この勝者は上位進出が期待できる。特に横浜は板川佳矢(3年)、及川雅貴(2年)の両左腕が好調で、万全のチーム状態。大阪桐蔭が伝統的に左腕をやや苦手にしていることは、これまでから述べている。

創志の西が圧巻の投球

 1回戦で最注目カードだった創志学園(岡山)と創成館(長崎)は意外なワンサイドに。創志の西純矢(2年)が無四球16奪三振完封で、センバツ8強の強豪を圧倒した。西は速球だけでなく変化球も一級品で、下級生ながら今大会ナンバーワン投手とみた。前評判の高かった金足農(秋田)の吉田輝星(3年)は速球には非凡さを感じさせたが、変化球の制球に苦しみ、157球の完投(1失点)で鹿児島実を振り切った。2回戦を突破すれば、3回戦では徳栄-横浜の勝者との対戦になるが、どこまで修正できるか。

智弁和歌山は初戦で涙

 実力、実績で「打倒・大阪桐蔭」の一番手と目された智弁和歌山は、近江(滋賀)に3本塁打を浴び、4投手の継投という相手ペースを崩せず完敗。

近江(青)に初戦敗退した智弁和歌山。近江・中尾、智弁・文元、両主将が抱き合うなど近畿勢同士の熱い友情が感じられた(筆者撮影)
近江(青)に初戦敗退した智弁和歌山。近江・中尾、智弁・文元、両主将が抱き合うなど近畿勢同士の熱い友情が感じられた(筆者撮影)

主砲・林晃汰(3年)も相手の変化球攻めに苦しみ、1安打ノーアーチで最後の夏を終えた。智弁の敗退はこのあとの優勝争いを左右する。近江は秋の近畿大会でも4強入りしていて、智弁が苦戦する可能性はかなりあったが、中軸打者が近江の投手陣に翻弄され、いいところが全くなかった。初戦で力のある近畿勢と当たったことが仇になったと言えよう。近江は春よりも力をつけている。近年の近江は、2戦目が大きな壁になっていて、前橋育英(群馬)との2回戦を突破すればさらに勢いがつきそう。

センバツ活躍組が苦戦

 

 センバツ準優勝の智弁和歌山を始め、同8強の創成館が初戦敗退。春8強の花巻東(岩手)も、延長で3大会連続出場の下関国際(山口)に惜敗とセンバツ活躍組の苦戦が目立つ。同じく、センバツ1勝で、12年連続出場の聖光学院(福島)や昨夏準優勝の広陵(広島)も初戦で敗退し、力を発揮することなく甲子園を去った。力のあるチームでも初戦がいかに難しいか、今さらながら痛感させられる。

大阪桐蔭と横浜が対戦するなら準決勝以降

 ここからは仮定の話で恐縮だが、準々決勝は「フリー抽選」ではない。3回戦は二日間にわたって行われるため、初日の勝利校は準々決勝の第1、第2試合のいずれか。二日目の勝者は、同第3、第4試合に組み込まれる。すでに3回戦での対戦が決まっている報徳学園(東兵庫)-愛工大名電(西愛知)、二松学舎大付(東東京)-浦和学院(南埼玉)の勝者は、第1、第2になり、大阪桐蔭は勝ち進めばここに入る。特に右の速球派ばかりではあるが、浦学の投手力は前評判通りで、準々決勝あたりで大阪桐蔭と当たれば面白い。大阪桐蔭が、横浜や龍谷大平安(京都)、創志などと対戦するとすれば準決勝以降になるので、読者の皆さんも試合順にぜひ注目していただきたい。

タイブレークもあった1回戦

 さて、今春から導入された「タイブレーク」がついに甲子園でも適用された。

ついに甲子園でタイブレークが。スコアボードに注目。以前は延長15回打ち切りだったため16回以降の表示はなかったが、18回まで表示されるようになった。新たなドラマの可能性も秘める(筆者撮影)
ついに甲子園でタイブレークが。スコアボードに注目。以前は延長15回打ち切りだったため16回以降の表示はなかったが、18回まで表示されるようになった。新たなドラマの可能性も秘める(筆者撮影)

この制度については、これまで反対意見を述べてきたが、試合進行に影響の少ない「継続打順」を採用したことで、高校野球の持つ「ドラマ性」が大きく喪失されないだろうと想像している。第2日の第4試合、旭川大高(北北海道)と佐久長聖(長野)は、9回に旭大が追いつき、延長に入っても毎回、サヨナラの好機を迎えた。しかし長聖の守備が堅く、13回からタイブレークに突入。継続打順の無死1、2塁で、先攻の長聖は6番から。旭大は1番からと、ここでも旭大が有利だったが、13回は無得点。14回表に長聖が1点を取り、その裏の旭大は4番が、バント失敗のあと凡打。5番併殺で決着がついた。有利とされる後攻も、4番のバント失敗からの無得点に、旭大の端場雅治監督(49)は、「点を取らないといけないプレッシャーがあった」と話し、「戦い方に難しさがあった」と明かした。「詰めが甘く、あと1点が取り切れなかった。タイブレークに負けたとは思っていない」と最後まで潔かったのが、後味の悪さを感じさせなかった大きな要因で、旭大には拍手を送りたい。今大会は酷暑で、試合中に足がつったり、給水タイムがかけられたりして、選手の健康を考えれば「適用やむなし」はファンの間でもささやかれている。またこの試合が、暑さが比較的ましな点灯試合だったため、選手たちは伸び伸びとプレーしていた。しかし昨年までの延長最大15回を超えることも理論上はあり、「健康管理」という大義名分が崩れる可能性もある。この制度が違和感なく受け入れられるにはまだしばらくかかりそうだ。

2度目のタイブレークは史上初の劇的弾

 この原稿を執筆中、2回戦の星稜(石川)-済美(愛媛)が9-9でタイブレークに突入した。数々の名勝負を甲子園で演じてきた星稜が、9回に追いつき、12回のピンチを連続三振で切り抜ける。13回に2点をリードするが、済美は無死満塁から1番・矢野功一郎(3年)が、甲子園史上初の逆転サヨナラ満塁弾を放った。劇的な結末はタイブレークの制度が誘発したとも言え、満員の観衆は死闘に酔いしれた。