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100回目の夏 熱い夏 予選激しく!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
甲子園を目指す各地の予選はいよいよヒートアップしてきた(筆者撮影)

 節目の100回選手権は史上最多の56校が出場する。全国の予選では、センバツ上位の有力校が早々と姿を消すなど波乱も相次いでいる。一方で、2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭や、神奈川からアベック出場を狙う東海大相模、横浜。昨夏の覇者・花咲徳栄(北埼玉)、センバツ準優勝の智弁和歌山などは調子が上がってきた。各地区大会の情勢を紹介するので、参考にしていただきたい。(試合結果は19日現在)

北海道は南北とも4強決まる

 北北海道は4強が決まった。注目の大型右腕・ピダーソン和紀(3年)がいるクラーク国際は北見北斗と。もう1試合は旭川実と旭川大高の旭川勢の激突。南北海道は準々決勝で3年連続を狙った北海がセンバツ出場の駒大苫小牧に完敗。駒苫は準決勝で北海道栄と対戦し、もう1カードは北照と札幌日大が対戦する。

聖光学院12連覇なるか

 青森は19日に4強が決定。2年連続を狙う青森山田は八戸学院光星とライバル対決。もう1試合は聖愛と弘前工。岩手は準々決勝が終わり、花巻東は一関学院と。劇的な試合が続く昨年の代表・盛岡大付は盛岡市立と準決勝を戦う。秋田は3回戦が終わり、準々決勝で秋田商と金足農が対戦。第1回大会準優勝の秋田も勝ち残っている。宮城は進行が遅く、昨年の代表・仙台育英が19日、2回戦で快勝した。山形は3回戦展開中で、昨夏、センバツに続く甲子園を狙う日大山形が鶴岡東と当たる。福島は聖光学院が準々決勝で快勝。エース・衛藤慎也(3年)が完投し12年連続出場まであと2勝。準決勝の相手はいわき海星。もう1試合は福島商と湯本。

藤岡中央に注目投手

 茨城は常連の常総学院とセンバツ出場の明秀日立が別ブロックに。明秀のゾーンには霞ケ浦、昨夏出場の土浦日大がいて厳しい戦いが続きそう。栃木は8年連続が懸かる作新学院が順当に勝ち上がって準決勝で宇都宮工と。もう1試合は青藍泰斗と白鴎大足利が当たるが、センバツ2勝の国学院栃木の敗退が惜しまれる。群馬は有力校の健大高崎が快調に勝ち進んでいる。注目はセンバツ21世紀枠候補だった藤岡中央の右腕・門馬亮(3年)。甲子園経験のある東農大二から14三振を奪うなど3試合、24回で35三振の素晴らしい内容。甲子園で見たい投手だ。埼玉、千葉、神奈川は10年ぶりの2代表。北埼玉は昨夏甲子園覇者の花咲徳栄が準決勝で滑川総合と。昨年から4番を打つ野村佑希(3年)がマウンドにも上がって奮闘中だ。もう1試合は公立の名門・上尾と昌平。南埼玉は浦和学院が危なげなく4強へ。次戦は聖望学園が相手だ。もう1試合は悲願の初出場を狙う川越東と川口の対戦。埼玉は2強揃い踏みなるか。東千葉は木更津総合が3年連続出場へ8強入りを決めた。西千葉はセンバツ出場の中央学院と、夏の甲子園優勝2回の習志野が、順調に勝ち進めば準決勝で当たる。

神奈川2強にスーパー1年生

 北神奈川は19日に有力校が相次いで登場。センバツ出場の慶応義塾、桐光学園などが快勝。東海大相模は評判の1年生・西川僚祐が19日の試合で本塁打を放つなど大物ぶりを発揮している。南神奈川では、優勝候補筆頭の横浜にも注目の1年生がいる。度会隆輝で、父は元ヤクルトの博文氏(46)。レベルの高い同校で、早くもレギュラーの座をつかみそうだ。横浜のライバルは、秋に敗れた鎌倉学園だろう。東東京は混戦。帝京、二松学舎大付、関東一、日大豊山に公立の小山台、城東などが絡んでくる。

早実・野村は夏の甲子園ならず。早大進学かプロ入りか、動向が注目される(写真は昨春センバツ時、筆者撮影)
早実・野村は夏の甲子園ならず。早大進学かプロ入りか、動向が注目される(写真は昨春センバツ時、筆者撮影)

西東京は大激戦。早くも早稲田実が八王子に敗れる波乱があった。主砲・野村大樹(3年)の2打席連続弾も及ばず、昨春以来の甲子園は夢と消えた。ここは日大三が最右翼だが、昨夏甲子園4強の東海大菅生、日大鶴ケ丘に、左腕王国の国士舘もいて息が抜けない。山梨は4強が決まり、3連覇を狙う山梨学院が準決勝で伝統の甲府工と。もう1試合は東海大甲府と帝京三の激突に決まった。

富山は好投手対決か

 新潟では県内無敵の日本文理が4回戦で進学校の新潟に敗れる波乱。打線好調の中越が有利な展開になった。富山は8強が決まり、センバツ出場の富山商と昨夏出場の高岡商が決勝まで当たらない組み合わせ。

高岡商の山田は全国屈指の左腕。今年は全国的に左腕に人材が不足気味で、甲子園に出ればU18の声も掛かるか(筆者撮影)
高岡商の山田は全国屈指の左腕。今年は全国的に左腕に人材が不足気味で、甲子園に出ればU18の声も掛かるか(筆者撮影)

富山商の右腕・沢田龍太(3年)と高岡商の左腕・山田龍聖(3年)は全国レベルの好投手で、特に183センチの山田は最速148キロを誇る。この両校の対戦は「富山の早慶戦」とも呼ばれ、県民の注目度も高い。長野は19日に波乱があった。昨夏代表で、好投手・直江大輔(3年)を擁する松商学園が岡谷南に敗れた。序盤の劣勢を最後まで挽回できず、直江をマウンドに送ったが逃げ切られた。佐久長聖と上田西を中心にした代表争いか。石川でも早々の波乱。センバツ8強の航空石川が打線沈黙で金沢市工に敗れた。ライバルの星稜は準々決勝で小松大谷と。19日には遊学館が5-4で金沢を破る熱戦もあった。福井は連続出場を狙う坂井が8強入り。伝統の福井商や古豪の敦賀なども勝ち残っている。

ハイレベル大激戦の西愛知

 静岡では、昨夏代表の藤枝明誠が延長で日大三島に敗退。春夏連続を狙う静岡が盤石の戦力を維持している。東愛知は大混戦。愛産大三河、豊川などの甲子園経験校がわずかにリードか。逆に西愛知は名古屋勢を軸に激しい優勝争い。最右翼の東邦は中部大春日丘に大苦戦を強いられたが、9回に2本の3ランで豪快に逆転サヨナラ勝ちし、底力を見せた。中京大中京、愛工大名電、享栄などが僅差で追う展開だ。三重でも大波乱があった。センバツ4強の三重が松阪商に初戦で敗退し、一気に混戦模様に。いなべ総合や好投手のいる菰野などにチャンスが出てきた。岐阜は、OBの鍛治舎巧氏(67)が就任し注目された県岐阜商が3-9で市岐阜商に完敗。中京学院大中京が秋春と県を制していて一番手だが、福知山成美(京都)元監督の田所孝二氏(58)が率いて3年目の岐阜第一に注目したい。

滋賀は近江が甲西の挑戦受ける

 近畿で一番の激戦は滋賀。センバツに近江、彦根東、膳所の3校を送り出し、そのいずれもが勝ち残っている。近江は次戦で33年前の夏の甲子園4強の甲西と。

2回戦を突破した甲西は、校歌を歌って喜びを爆発させる。次は近江と対戦だ(7月13日皇子山球場 筆者撮影)
2回戦を突破した甲西は、校歌を歌って喜びを爆発させる。次は近江と対戦だ(7月13日皇子山球場 筆者撮影)

当時、3番捕手で躍進の原動力となった奥村伸一監督(50)は、「勢いを力にして胸を借りたい」と意気込む。長浜北との2回戦(13日)は終盤の追い上げをかわしての勝利で、スタンドには長男でヤクルトの内野手・展征選手(23)の姿も。オールスター休みで帰省していて「父の勝つ姿を見られてよかった」と目を細めていた。彦根東はU18候補の左腕・増居翔太(3年)が2回戦で14三振を奪ったが、今後は控え投手と打線の援護が欠かせない。順当なら近江と彦根東は準決勝で当たる。膳所も苦戦が続いているが、センバツを経験したことで選手たちが逞しくなった印象だ。3回戦では、比叡山と滋賀学園の優勝争いを左右する試合がある。

京都は平安と乙訓が対決

 京都も激戦。実力2強の龍谷大平安とセンバツ出場の乙訓が19日にいずれも快勝し、いよいよ準々決勝で当たる。このチームでの対戦はなく、互角とみる。

乙訓は春以降、川畑が大黒柱に成長。左腕・富山との二枚看板で「打倒・平安」に燃える(筆者撮影)
乙訓は春以降、川畑が大黒柱に成長。左腕・富山との二枚看板で「打倒・平安」に燃える(筆者撮影)

センバツ以降調子を落としていた乙訓の左腕・富山太樹(3年)が4回戦で完投し、平安戦は右腕・川畑大地(3年)を万全の状態で送り出せる。3回戦は昨夏代表の京都成章とあわやタイブレークかという激戦だったが、相手失策で辛勝した。打線の援護が不可欠になる。2強を追う有力校も差はない。古豪・東山は春に平安を破っている。逆ゾーンに入った立命館宇治、秋に平安を倒した京都翔英も勝ち抜く力はある。北大阪は大阪桐蔭を有力校が追いかける展開。初戦を危なげなく突破し、次戦は常翔啓光学園と。ライバル・履正社は、初戦で公立の摂津に大苦戦し、浜内太陽主将(3年)のサヨナラ打で九死に一生を得た。次戦も公立の有力校・汎愛で手ごわい。北大阪の他の有力校は、関大北陽、東海大大阪仰星などで、公立も南よりは強い。南大阪は、混戦。秋の近畿大会1勝の近大付や19日に雨天ノーゲームの再戦をコールドで制した大体大浪商、近大泉州、初芝立命館などが有望。50年前の全国優勝で復活が期待された興国は八尾に敗れ、姿を消した。

明石商、悲願の夏なるか

 兵庫の2代表争いは対照的だ。これまでから有力校がひしめく東兵庫は、19日に昨夏代表の神戸国際大付が甲陽学院を破ったのをはじめ、報徳学園、滝川二、市尼崎、神港学園なども勝ち進んだ。すでに勝っている関西学院なども含め、再抽選後の対戦相手も重要になってくる。西兵庫は夏の初出場に燃える明石商の安定感が際立つ。攻撃は手堅く、投手も多彩で死角は見当たらない。ライバルと見られた東洋大姫路が初戦で敗退し、初の甲子園出場に燃えていた三田松聖も敗れ、追うのは西脇工か。奈良は宿命のライバル対決で、近年やや分がいい智弁学園が今年も天理をリード。1年生の好選手がチームに活気をもたらしている。この両校は順当なら準決勝で当たる。公立の有力校では、ともに昨秋の近畿大会に出た法隆寺国際と高田商が早々に対戦するのがもったいない。和歌山は智弁和歌山の独壇場か。19日の3回戦でも箕島にコールド圧勝した。ライバル視される市和歌山と日高中津が3回戦で当たる注目カードもある。

岡山はハイレベル

 鳥取は8強が決まり、昨年代表の米子松蔭は第1回から皆勤の鳥取西と準々決勝で当たる。もう1校の名門・米子東は敗れた。島根は双璧と目される石見智翠館と開星がコールド発進した。岡山は激戦。好投手・引地秀一郎(3年)の倉敷商は岡山南にサヨナラで勝ち残った。昨夏から3大会連続を狙うおかやま山陽は2試合連続完封勝ち。創志学園も有力校の玉野光南を寄せつけなかった。終盤でハイレベルな試合が続きそうだ。豪雨禍で10日遅れの開幕となった広島は、19日に名門・広島商が、昨春甲子園初出場の呉との延長戦を制した。秋の県大会優勝の盈進、春の中国大会優勝の広島新庄、昨夏甲子園準優勝の広陵、如水館なども同じ日に勝ち名乗りを上げている。山口では、昨夏からの3大会連続出場を懸けて下関国際が21世紀枠候補にもなった下関西と8強を争う。

愛媛の新鋭・カタリナに注目

 徳島は19日に昨年代表の鳴門渦潮と名門・徳島商がともに勝利。前日、鳴門は14-13の熱戦で城南を振り切った。2回戦注目カードは池田と生光学園だ。香川は、昨夏甲子園8強の三本松が延長11回で観音寺一に惜敗。観音寺一は高松と準決勝で当たる。センバツ出場の英明は丸亀城西と決勝進出を懸ける。愛媛はセンバツ出場の松山聖陵が初戦で新田に惜敗する波乱。注目は聖カタリナ。女子高からの転向組で、創部3年目で春季県大会で済美を破って優勝した。次戦は伝統の今治西で、試合巧者をどう打ち破るか。高知は明徳義塾の独走をどこが止めるか。エース・市川悠太(3年)は安定感が際立つ。名門・土佐も調子を上げていて、準決勝で激突すれば面白い。逆ゾーンでは、センバツ出場の高知や追手前に期待がかかる。

波乱続いた北福岡

 今回初の2校となった福岡。北九州を中心にした北福岡は、双璧とみられた東筑と九州国際大付が早々と姿を消す意外な展開。準決勝は北九州と折尾愛真、小倉と飯塚の顔合わせ。特に古豪・小倉の動向からは目が離せない。南福岡も4強が決まった。九産大九州と香椎、沖学園と福岡大大濠の対戦だが、西日本短大付、東福岡の有力校を倒して勢いに乗る沖学園が、初の甲子園を狙う。佐賀ではセンバツ出場の伊万里が敗退。昨夏代表の早稲田佐賀を完封で破った龍谷の安定感が目を引く。鳥栖と佐賀商の名門対決も楽しみだ。長崎は創成館が春夏連続出場へ順調な戦いぶり。準決勝では佐世保工と当たる。もう1試合は長崎商と海星の強豪同士。熊本では3年連続を狙った秀岳館が熊本工に完敗。準決勝は必由館と熊本工、東海大熊本星翔と球磨工で、決勝での「くまこう」対決はあるか。

宮崎はまたも夏の連続ならず

 大分は8強が決定。昨夏に続く甲子園を狙う明豊が日田林工と。甲子園優勝2回の津久見も好調で、藤蔭と対戦する。昭和38年、39年の宮崎商以来夏の連続出場がない宮崎は、昨夏出場の聖心ウルスラが19日の準々決勝で敗退。ジンクスを破れなかった。準決勝のカードは、宮崎工-日章学園、日南学園-富島で、富島は春夏連続を狙う。鹿児島は8強を懸けた戦いを展開中。19日は鹿児島実やれいめいが勝ち上がった。神村学園はすでに敗退し、2年連続出場を逃している。沖縄は21日に準決勝。糸満と北山、興南と嘉手納のカードで、準々決勝で沖縄尚学を破った北山だけが甲子園未経験だ。この記事をお読みになった時点で、すでに情勢は変化しているものと思う。「一つ負ければ終わり」それが高校野球の厳しさであり、甲子園の尊さでもある。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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